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玄関のドアがバタンと閉まる音が、リビングに重たく響いた。
静寂――
だが、それはわずか数秒のこと。
その場に残っただぁ、夢魔、すかーの3人から、一斉に深いため息が漏れる。
すかーは壁に手をつき、顔を伏せたまま低く唸るように声を漏らした。
「……あいつら……マジで……どこまでやったら気が済むんだ……」
その肩はわずかに震えていた。
単なる怒りだけではない、呆れと、そして――何とも言えない疲労が滲んでいる。
夢魔も同じように肩を落とし、ズボンを直しながら眉間に皺を寄せた。
「……なぁ、だぁ。
俺、正直もう無理なんだけど。何回同じことやってんだよ、あいつ。」
その声は決して大きくなかったが、内側から煮えたぎるような怒りがひしひしと伝わってくる。
だぁはというと、未だに膝をついたまま、腰を押さえていた。
その顔は微かに引き攣り、しかし目だけはしっかりと開いて、ゆっくりと立ち上がる。
「……ネグ。」
その名を呼んだ声は、驚くほど冷たかった。
いつもの優しいだぁの声ではなく、静かで、底の見えない深さを持つ声。
「僕が、どんな気持ちでネグを甘やかしてきたと思ってるんだろうね……」
だぁはふ、と笑った。
だがその笑みには、ほんの僅かも優しさはなく、完全な怒りだけが滲んでいた。
すかーがだぁの横で、小さく吐き捨てるように言った。
「なぁ、だぁ。
本気で一回……ぶん殴ってもいいんじゃねぇか?
正直、あいつもう、調子乗りすぎだろ。」
夢魔もそれに頷く。
「ああ……今度やったら、俺も止めない。いや、もう止めれねぇかもな。」
だぁは2人を見て、静かに首を振った。
「……気持ちはわかるけど……」
そこで一度言葉を切り、少しだけ目を伏せる。
「僕が一番怒ってるから。」
その静かな宣言に、すかーと夢魔の2人は少し目を見開いた。
だぁがここまで言うのは、本当に珍しいことだった。
すかーはその場で拳を握りしめ、低く唸るように吐き捨てた。
「……ああ、わかった。
でも……ほんまに次はねぇからな。俺、ガチで本気出すわ。」
夢魔も拳を握りしめたまま、深く息を吸ってから小さく笑った。
「つーか……この状況で笑えるのおかしいけどさ。
ネグもマモンも……ほんと、どこまでやってくれるんだよな。」
だぁは2人のその言葉を聞きながらも、静かに目を閉じる。
――ネグの顔が脳裏を過った。
今まで優しくしてきた分、自分が甘やかしすぎたのかもしれない。
でも、それでもやっぱり――限界はある。
そう、だぁは静かに心の中で呟いた。
「ネグ……」
最後にもう一度、その名を呼び――だぁは目を開いた。
その目は冷たく澄み切っていて、優しさは影すら残っていなかった。
夢魔がそれを見て、小さく笑いながら言う。
「……だぁがここまで本気って、珍しいな。」
すかーも苦笑しつつ、力なくうなずいた。
「……珍しい、じゃねぇよ。これは……終わったな、ネグ。」
その言葉を残し、3人は再びゆっくりとリビングに腰を下ろした。
だが、全員の顔には静かに燃え続ける怒りの色だけが残っていた。
――次にネグとマモンが戻ってきたとき、果たしてどうなるのか。
その時のことを想像するだけで、3人の拳は再びゆっくりと固く握られるのだった。