side Y
今日はやけに機嫌が悪い。それも全て君のせい。自分の嫉妬深さに毎日驚かされるよ。君の笑顔を見られるのは俺の特権だと勘違いしていた。当たり前じゃないか、他の奴と関わる機会なんて山ほどあるというのに。ほらまた、小川と仲良さげに話してる。俺には見せない笑顔。俺に魅せるその笑顔。その笑顔には何が隠されているのだろう。ふと、笑みを浮かべてしまった口元に手を持っていく。我ながらに恥ずかしい。前までこんな事一度もなかったのに、ってこんなこと考えていないで練習に集中。
「…藍、一緒に対人しない?」
「え、祐希さんから誘うなんて珍しいっすね?もちろんいいっすよ!!」
「いや、まぁ、俺だって誘う時くらいあるさ。今日はそういう気分だっただけ。」
「なんや〜〜、祐希さん照れ隠しですか??可愛いところありますね〜!!なんて!」
「もう、ほら、早くしよう。練習時間削れちゃう。」
何故か口走っていた。小川は、とふと目を向けると。気遣ってくれたのだろうか、智さんのところへ行っていた。うわぁ、俺。子供っぽいことしてるんだろうな。そんな自分に嫌気がさす。そんなことぐだぐだと考えていると君が笑みを浮かべて“ぼーっとして!どうしたんすか!!”と首を傾げながら言う。そうだね、今だけでも。嫌なとこくらい忘れていよう。
side R
テンパった。あなたがあまりにも急に誘うから。それに、少しだけ怖い雰囲気。それは気のせいなんかな。気のせいじゃなかったら、あなたは何について悩んでいるのだろうか。この後、相談にでも乗ろうか。なんて考えてたらあなたはそっぽ向いて考え事をしている。ついムッとしてしまった。今は二人なのに。他の事考えてるなんて、って笑顔笑顔。
「祐希さ〜ん、この後飲みに行きません?あ、それとも僕んち来ます??」
「いいけど、なんで?てゆーか、昨日も飲んだのに?」
「んや、確かにそうなんやけど、祐希さんぼーっとしてたし、なんか悩んでるんかな〜〜、みたいな?!」
「はは、心配してくれたの?ありがとう。優しいんだね。でも、大丈夫だよ。」
「ほんまですか〜〜???!なんでも聞きますからね。」
「ありがとう。藍も溜め込みすぎないよーに。」
そう言うと、僕の頭をポンっと撫でて“また明日。”なんて。ずるいやん。つい笑みを浮かべてしまう。あなたの背中を見ながら誰もいないか周りを確かめて。飛び跳ねる。そしてふと我に返って顔が赤く染まる。何子供みたいなことしてるんだ!と。まぁ、ちょっとくらいいいじゃんかね。さっさと掃除して帰り支度でもしよう。
掃除も終わるとみんな帰って、体育館がしん、と静まり返る。外へ出ようと扉を開けるとそこに居たのは祐希さんだった。
「え、あれ〜〜??祐希さん?どうしてここに、あ、誰か待ってるとか?」
「うん、待ってた。藍のこと。」
「は、えぇ、?祐希さんがなんで僕のこと待ってるんすか?」
「…悩み事、聞いてくれるんでしょ?」
「え!はい!もちろん!!」
「はは、いい返事。」
なんだなんだ、とは思ったが祐希さんと誰にも邪魔されずに二人きりになれるならなんでもいいや。そして二人で歩き出す。街灯が僕らが歩く道を明るく照らしてくれる。長い沈黙。早く家についてくれ!と心の中で願っている。なんて、ちょっとくらい話してくれても良くない?寂しいな、とか。別に思ってへんし!まだこの空間にいたい。
コメント
1件