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しかし、その2年後
調査兵団である父が亡くなった
そしてその同時期
兄は訓練兵を辞めて、開拓地へ戻って来た
私が無遠慮に『どうして』『なんで』を繰り返していると
「父さん、亡くなったんだろ」
とだけ言って
その日は一日中部屋に籠もった
翌日から
兄は
人が変わったように私の夢を否定した
口を開けば
「調査兵団になるな」
「馬鹿な真似やめろ」
「どうせ俺と同じで才能がない」
と…
そのせいで毎日怒鳴り合いの大喧嘩
どちらかが泣くか逃げるまでその喧嘩は終わらない
まぁ、大体私なんだけど…
兄に何があったのか
どうしてそんなのを言うようになったのか
私は知りたかった__
「だから何回言ったら分かるんだ!俺はお前が兵士になろうが開拓地へ行こうがどうだっていいが、調査兵団はやめろ!あんなのは馬鹿の行く所だ!」
『なんでそんなこと言うの!お兄ちゃんも行こうとしたくせに!それに、お父さんだって…!』
「ぐだぐだうるせぇ!黙ってろ!!今はお前の話だ!」
兄が強く、大きく机を叩いたことを合図に
机上のコップが倒れ水が滴る
声が大きくなってしまった私も、思わずハッとした
一年前はこんなにも荒々しくなかった筈なのに
その事実に気付いたのは今日が初めてという訳では無い
だが何故か、言うのは今日であるべきだと思った
『やっぱり、おかしいよお兄ちゃん…!今に始まった事じゃないけど、なんでそんな事を言うの。何がお兄ちゃんを変えちゃったの!』
「…俺は変わってない。現実を見ただけだ。あそこには内地に行きたいだの俺だけ助かればいいだのくだらないこと言ってる奴ばかりで心底どうでも良かった」
「何より、壁上の整備で巨人を見た時一目でわかった。あいつらには勝てねぇよ」
『っ…』
訓練兵時代を思い出したのか
妙に達観した様子が気味が悪いと思った
「専用の装備すら無ければまともな抵抗さえ出来ないんだぞ?その時点で気付くべきだった。俺達は弱者なんだ。希望なんて無いんだよ」
『じゃあ何…お兄ちゃんは勝てないから、希望がないと思ったから諦めたの?』
「あぁ、そうだな。お前も分かる日が来る」
兄のその一言で涙が目に溜まった
『…あたしは違う』
「っおい!」
思わず私は逃げ出した
理由は自分でも突発的な行動で分からなかった
泣いてる姿を見られたくなかったのか、
兄に失望したからか
あるいは、その両方か
でも、どちらでもいい
あれがきっと兄の本心なんだ
扉を開け外に出ると、ジュニーが心配そうな顔で待っていた
この所毎日あんな感じなので
申し訳ない気持ちが募るばかりだ
『ご、ごめんねジュニー…また喧嘩しちゃったね。外寒かったよね』
「ううん。今日あったかいから大丈夫」
『そっか。良かった…』
落ちつくと、また兄の発言を思い出してしまう
深く受け止めるほど、喉の奥が苦く感じた
目が熱くて痛くて
おまけに鼓動が早くなるのが分かった
「お姉ちゃん、泣いてるの?」
『な、泣いてない…!』
「でも…」
『大丈夫だって!もう私のことは良いからさ、蝶々見に行こう?最近見れてなかったでしょ』
少しだけ濡れた手を無理矢理繋いだ
足を進めるが
心の底では、明日から兄にどんな顔をすればいいか悩んでいた