『………』
何が、希望なんて無い、だ
巨人に勝てないなんて誰が言った
私はまだ、挑んでもないのに
未来への勝利の欠片でも残してやれれば
私はそれで良いのに…
「ねぇ…帰ったら、またお姉ちゃんはお兄ちゃんと喧嘩しちゃうの?」
『うん、そうかもね。ごめん。だけど多分、もう少しで終われると思う。』
私の頬はもう乾ききっている
また兄に会ったら、もう一度しっかり話をしよう
本音を話してくれたのは今日が初めてだった
兄と私の中で何か進展があったんだ
きっと分かってくれる…筈
「ミロア!」
耳を通り過ぎる遠くからの声
ジュニーではない
すぐに分かった
アルミンだ
アルミンとは、2年程前に知り合った
その後にエレン、ミカサを紹介してもらったのだが…
今日はアルミン一人のようだ
狭い路地を翔けてこちらに寄ってくる
「良かった。最近外にいなかったから怪我でもしたのかと…あ、今日はジュニーも一緒なんだね」
『うん。アルミンは単独だなんて珍しいね』
「僕をエレンとミカサの腰巾着だなんて思わないでよ」
その場繋ぎの会話をしながら
アルミンと共にお気に入りの場所へ向かった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「この場所、本当に君たち大好きだね」
着くや否や、アルミンが口を開いた
『うん。だって綺麗でしょ』
“ここ”というのは、壁に近い空き地で
特別花が多いという訳じゃないが、蝶は沢山見られる
生い茂った草が良い匂いでお気に入りだ
近くに川も流れている
家からもそんなに遠くない
何より小さな野原みたいで、
本当に大好きなんだ
「あっお姉ちゃん!蝶見つけた!」
『本当?じゃあ行ってきていいよ!』
「やったー!」
私の手をするりと抜けジュニーは駆け出した
こうやって蝶を見つけては追いかけて
あわよくば人差し指に止まらないかなんて
そう考えながらゆっくりここで過ごすのが
私達の大切な時間だった
「…じゃあ、ミロア」
『分かってるから言わなくて良いよ。少しだけ話聞いて』
アルミンの前だと隠し事が出来ないのは随分前に学んだ
私の言いたい事が分かったらしい
ジュニーが見える位置に座って
胸の内を話そうと思った
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!