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タルタリヤ、親子喧嘩に巻き込まれた被害者(笑)なのえぐいw 更新待ってます😌👍
岩神娘の逃走劇エピローグ
別に誰が悪いとかでもなかった。うちは母がいないけど父様といるだけでも楽しかったし、幸せだった。
幼少時、父様がよく髪を解かしてくれた。いつもは忙しそうにしている父様もこの時ばかりは2人でゆっくりできた。この時間が大好きだった。
物心がつくと、幼い頃は寂しかった留守番も、家で書物を読んだり、夜叉の歴史を読み漁ったりするようになり寂しさを紛らわす方法がいくらでもあることに気づき、次第に父様が髪を解かしてくれる事は無くなった。
父様はよく、ぼんやりと何かを見ているように窓を見ることがある。私が声をかけるといつものように
「どうしたんだ」
と、顔をこちらに向けてくれる。だけど、私は知っている。父様にいくら顔を向けられようと父様が見ているのは私ではない。
その瞳に映っているのは、今は亡き母であろう。私はこの顔が嫌いだ。母が嫌いだ。
誰が悪いわけでもない。ただ私1人が、理不尽に嫉妬しているだけだ。このドス黒い感情を吐き出すつもりはない。こんな思いは蓋をしておいた方が、今の生活も続けられる。見てみぬふりをしておいた方が、今の関係を続けられる。
「どうした、ボーッとして。大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫ですよ。父様」
大好きです。
ずっと
――――――――――――――――――
パチ
「はぁ…」
ため息を一つ吐く少女が寝床から起き上がる。
まだ眠気が残る目を擦り、ペタペタと洗面所へ向かう。
バシャバシャと顔を洗うと、台所へ向かい手際よく2人分の朝食を作ってゆく。
(なんだか懐かしい夢を見た気がする)
黒いロングを束ねながら少女は今朝の夢を振り返る。
机へ向かい、食事をしていると、カタリと音を立てて少女に向かって声がした。
「おはよう、真鍾」
「おはようございます、父様」
「あぁ、今日は早いな」
「今日は何故か早く目が覚めてしまいまして」
「そうか、なんにせよ早起きは良いことだ」
「そうですね」
真鍾と呼ばれる少女は時計をチラリと見た後、サッサと出かける準備を終わらせる。
「何処か出かけるのか?」
「えぇ、少し夜叉の歴史を辿って来ようかと」
「勉強熱心なのは良いが、気をつけるように」
「えぇ、ありがとうございます。」
「いってらっしゃい」
「…行ってきます。父様」
ガチャン
夢を見た気がする。
幼少の頃の記憶。まだ何も考えず、ただ父と話せたから嬉しかった。今はめっきり話すことをやめてしまった。
父が母と私を重ねていることに気づいた時には、もう何かを諦めた気がする。だって、いくら私を見せようとしても、母という大きすぎる壁は越えられないから。
「はぁ…」
今日はため息がよく出る。
「こんなんじゃ幸せも逃げちゃうよ…はは」
そんなことをぼやきながらついたのは【望杼旅館】
ここなら、ゆっくりとお茶を飲みながら資料をまとめられる。
お昼になったら遺跡を巡ろう。
ここまで歩くのに時間がかかり、少し体が火照ってしまったので外へ出る。
「落ちたらひとたまりもないな…」
そんなことを思いながら風浴びる。あぁ、このまま明日なんて来なければ良いのに
「私の事は放っておいても良いのに」
そんな時だった。
背中に強い衝撃が走った。
「あ」
そう思った時にはもう遅く、私の体は宙に放り出されていた。
(やばい落ちる……)
でも、父と会わずに済むなら、それでもいいか。
ゆっくりと目を閉じて衝撃を待っているといつまで経ってもあるはずの痛みと衝撃がこない。
恐る恐る目を開けるとそこには小柄な青年?がいた。
「おい、なにをしている」
「え、私、えと、あの」
「お前ではない。そこのお前だ。昼間から酒を飲むのは良いが周囲をよく見ろ。」
「我が間に合ったから良いものの、落ちるところだったぞ」
「す、すみません!すみません!」
どうやら、先程感じた衝撃は酔っ払いによるものらしい。
はっ、それよりもお礼!
「あ、あの先程はありがとうございました!」
「いや、大したことではない。」
「な、何か奢らせてください!」
せめてものお礼に!!!
「我はもう行く。お礼がしたいのなら、これからは背後に気をつけることだな」
そう言って彼は風のように去って行った。凡人には到底できない技だ。
(ん?)
「仙人様に会っちゃった!!」
あ、つい大声を出してしまった。
(今日は遺跡巡るよりも家に帰って本を読むか…)
今さっき落ちかけたからね。厄日だ。
――――――――――――――――
家に帰ると、知らない人と父が談笑していた。
青い瞳によく目立つオレンジ色の髪をしていた。
父も美形だが、彼も引けを取らないほどの美形で、一つの絵のようだった。
「ただいま帰りました。父様」
「あぁ、おかえり」
「そちらの方は?」
「こちらは最近知り合った友人でな、タルタリヤ殿だ」
「君が先生の娘さん?よろしくね」
「…宜しくお願いします」
「今日は早かったが何かあったのか?」
「いえ、少し予定が早く終わったので早めに帰ってきたのです。」
「そうか、すまない公…タルタリヤ殿少し席をはずす。」
「どうしたんですか?」
「あぁ、お前に渡すものがあってな」
「私に?」
「そうだ、お前の母の形見でな。」
そう言って差し出されたのは一つの髪留め。
パッと見、金一色に見えるがよく見ると細かい装飾がされてある。
「これを私に?」
「あぁ、帰ってきたら渡そうと思っていたが、いつの間にか壊しそうでな。今渡せてよかった」
「そう…ですか」
「お前は母によく似ているからな。きっと似合うだろう」
「やっぱり」
「?」
母に似ている。何故かその言葉を言われた瞬間、プツリと何が切れた。
今まで出してこなかった感情がふつふつと湧き上がってくる。
「父様」
「どうしたん「父様が見ているのは、私ではないのですね」
「……どうしてそう思うんだ。」
「言われなくとも分かります。」
墓場まで持っていくつもりだった。
「父様が見ているのは、私じゃなくて、母の 面影だけだ」
止まれ。止まれ。
けれども、口は閉じてくれない。
「父様、私、苦手なんです。母様のこと、父様の事。」
「……」
「だって、貴方が見ているのは私じゃないから」
いっその事、母様を忘れて仕舞えばいいのに
そんな事を幾度思ったか。
「ねぇ、父様」
「どうして、見てくれないの?」
「真鐘!!」
言い終わった瞬間、私は家を飛び出していた。
嗚呼、言ってしまった。
客人の人には悪い事をした。
こんなの独りよがりだ。
母も父も悪くないのに。
璃月港の外に出てすぐ、雨に降られて濡れるのは、そう遅くはなかった。
「…………」
息を整えて、近くの木陰にしゃがみ込む。
「…………これから、どうしようか」
父はきっとこんな娘に幻滅した。
こんな娘なんて、探しにくるはずがない。
それに、ここが何処かももうわからないほど走った。
服が重い。足が動かない。
ガサリ
「ぇ」
気づいたら目の前にはスライムがいた。
「ぁっ…」
抵抗するすべは、全て家に置いてきた。
ここはもう、逃げるしかない。そう思って、なけなしの体力を使って雨の中走り続ける。
ガラッ
岩が崩れるような音がして、気づくと頭から血が出ていた。おそらく崖崩れに巻き込まれたであろう。
起きあがろうとするけども、腹に激痛が走った。
「……?」
疑問に思い腹を見ると、崩れた時に飛んできたであろう枝が、グッサリと腹を貫いていた。
(あぁ、通りで痛いわけだ)
こんな時に考えるのは、少し余裕があるのか、行動を諦めたのか。どちらにせよ、私の頭は冷静だった。
(折角、仙人様にあえたのに。)
しかいがぼやけてきた。
脳裏に浮かぶのは、家で父に言った事。
(とうさま)
(ごめんなさい、あんなこといっちゃって)
「だいすきでした」
目の前にいない父に向かって、言葉を紡ぐ。そうして私の視界は暗転した。
――――――――――――――――――
今朝、娘とした会話を思い返す。
いつも通り、なんの他愛もない話をして、娘を見送る。
そんな生活が続くと思っていた。
「はぁ、はぁッ」
息を切らして、見慣れた道を進んでゆく。
ポツポツと雨が降っている。
まさか、娘があんな事を思っているとは思ってもみなかった。
「どこだ!真鐘!」
走りながら愛しの娘の名を呼ぶ。ふと、崩れた道を見つけた。
(まさか…)
嫌な予感がして、急いで崩れた道の下に出る。
「ッ…」
そこには、血だらけの娘が倒れていた。
――――――――――――――――――
はい、お疲れ様でしたーー
作者です。一応エピローグですけど、バカ重い内容ですね。
ジャンル的にはギャグなんです。
安心して!後からちゃんと出すから。
鍾離先生に娘さんとかいたら面白そうだな、と思い書いてみました。駄文失礼。
人物紹介
真鍾(しんしょう)
・鍾離先生の娘。16歳。母親は自分のことを産んだ際に亡くなる。そこから鍾離先生と二人暮らし。顔はどことなく鍾離先生に似てる。璃月の歴史を調べるのが好き。
鍾離先生
・6000歳のおじいち…ゲフンゲフン真鍾のお父さん。娘が大切で大事にしたいけど愛情が空回りしちゃうタイプ。母と重ねてみていたのは完全に無意識。
タルタリヤ
・全然喋れてない。ごめんね。親子喧嘩に巻き込まれた被害者(笑)