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目覚めと第二の人生ーーキキィイイィ
ドンッ
最後に覚えている車の音。鮮明に覚えている、私から流れる赤黒い血液。体が冷えていく感覚。
(死ぬのって本当突然なんだな)
…………。
(眠たい)
ざわざわした通行人の声を聞きながら私は意識を手放した。
ぼんやりと見える、誰かの記憶。
幸せそうに笑っている親子。母親は見当たらない。
突然誰かの視点になる。
目の前に見覚えのある顔が出てくる。
何か言っているようだ。誰が?
私?
理解した瞬間、とても良いとは言えない感情が流れ込んでくる。
見て。見てよ、私を。父様ごめんなさい。なんで見てくれないの? 大好きです。 母様なんて忘れてよ。
父様…。 見てよ。 お願い。 …………。
見てよ…。
雨の中を走るような場面になり、視界は暗転した。
――とうさま、ごめんなさい――
消えてしまいそうな声が暗転する前に聞こえた気がする。
―――――――――――――――――――――
パチリ
見慣れない天井をぼんやりと見つめる。
(ここは…)
ズキリと頭が痛む。
今、誰かの記憶を見た。一体誰の記憶なのだろう。
考え事を暫くしていると、段々と頭が冴えてくる。
事故に遭って…視界がぼやけて…記憶がなんか流れ込んできて…
「はっ!」
原神!!!!そうだ、原神する為に帰ってたら赤信号なの気づかなくて事故ったんだった!死因が嫌すぎる。
取り敢えずここは何処なのか調べる必要があるな。
恐らくここは病院…なのかな。薬の匂いがする。
そして、私は怪我をしている。あの雨の場面と何か関係があるのかな。深く考えていくと、結構鮮明に記憶が見えてくる。
ふと、窓から景色を見る。
「ん?」
いつもゲーム内で見ている景色に似ている。
いや、本物じゃね??
もしやここ…
「璃月?!」
なんとなく予想はしてたけどさぁ…
じゃああの話していた人は…駄目だ。人物の顔はモヤがかかって思い出しにくい。どうしてだ。
――――ガシャン
考え込んでいると、後ろの方からガラスが割れたような音がした。
「…真鍾?」
おっとぉ、これはまさか…
そろりと後ろを振り向けば、綺麗な黒髪に黄色の毛先の鍾離先生が立っていた。シールドでお世話になってます。
「ッ目が覚めたんだな。容体は?大丈夫なのか。」
少し焦ったように質問する先生を見てどう答えようか考えていると
「全く、そんなに怪我人を揺さぶると危ないよ先生。」
またもや聞き覚えのある声が聞こえて、顔を上げるといつも週ボスで迷うとボコボコにしている財布もといタルタリヤがいた。
「公子殿…確かにそうだな。すまない、真鍾」
しゅんと言う効果音が聞こえてきそうな程落ち込んでる先生を見ると少し加虐心が目覚めそうな気もするが流石に隕石落とされるからやめといた。
取り敢えず
「…すいません。貴方とはどんな関係だったんですか。」
関係性についてだ。
あれ、そんな目を丸くする?あー…泣きそうな顔しないでー…?
「覚えて…ないのか?」
「いや、覚えてるけど、覚えてないって言うかなんと言うか…」
「いや、いいんだ。俺は鍾離。お前の父だ。」
「……父?」
「あぁ。」
「オトウサン?」
「…あぁ」
「oh…」
思わず頭を抱えてしまう。
鍾離先生が父?あの人が?
あ、頭がクラクラする!!
「お前は、突然家を飛び出して、崖崩れに巻き込まれたんだ。」
「そ、そうなんですね…」
そりゃここにいる訳だよ。
――コンコン
「失礼しますね。あれ、起きてたんですね。」
「びゃ…」
白朮さん!!
「体の調子はいかがですか?」
「特には…」
「それはよかったです。」
とても良い声!!服がいいね!
「あ、すみません。一つ問題がありまして。」
「はい、なんでしょう?」
「その…記憶が曖昧な部分がありまして…」
「ふむ…恐らく崖から落ちた時の衝撃でしょうね」
記憶が戻るのを気長に待ちましょう、とニコリと白朮さんは笑った。おっとなぁ!!
「白朮殿。どれぐらいで家へ帰れるだろうか」
「そうですねぇ…奇跡的に傷はお腹と頭の出血で済みましたので、早くて…一ヶ月ですかね。」
「そうか。」
「えぇ、まぁ本人の回復力次第ですがね。」
「承知した。真鍾、また明日面会に来るからな」
「はい。」
そう言ってガチャリと音を立てて扉が閉まって、室内には静寂が訪れた。
「一ヶ月…ね」
そう言えば、もう旅人は来ているのだろうか。
岩王帝君暗殺事件はもう起こっているのか?
まぁ、後から考えよう。今はただただ眠たい。
そうして、突然の第二の人生は幕を開けた。
――――――
ヒクッヒクッ
誰かの泣く声が聞こえる。
真っ暗な空間に私と、そのしゃくりあげている声だけが聞こえる。
「父様ぁ…うぅっ」
後ろから声がしてぱっと振り向けば一人の少女がしゃがみ込んでいる。
「父様、ごめんなさい…ヒクッ」
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
泣いているのを見るのが居た堪れなくなって、私は少女に声をかけた。だけども
「ごめんなさい父様…母様…」
その声が聞こえてないかのように少女は泣き続ける。
「う…グズッ」
突然、視界にノイズが走る。
鍾離先生が誰かと話している。恐らくあの少女だろう。
突然、女の子が何かをポツポツと話し始める。
だけども、よく聞き取れない。
ザザザッ
またノイズが走る。
雨の中、少女が走っている。
ガラガラと大きな音を立てて、少女が崖崩れに巻き込まれる。走って手を伸ばすが、その手は空を切るばかりだ。
「とぉ…さ、ま…ごめ、んな…さ…い」
あの時と一緒の消えそうな声で、少女はポツリと口にしたその言葉は雨音にかき消された。
――――――――――――――――――
パチリ
「……」
なるほどね。
あの子だれ???
しかも、めちゃ暗い内容だったし
――コンコン
昨日と同じようにノックが聞こえる。
「はい。」
「失礼しますね。体の様子はどうですか?」
入ってきたのは、女の人だった。恐らく、この一ヶ月担当してくれる人だろう。
「今のとこは特に何もないですね」
「それは良かったです。」
「包帯、変えさせていただきますね。」
「はい。お願いします。」
「失礼します。」
手際よく包帯が解かれていく。流石ですね。
「あら?」
「ん?どうしたんですか?」
「昨日の傷は深かった筈なんですけど、結構塞がってますね。」
「え?」
「まぁ、まだ治ってないので、安静にしておいてください。」
「はい」
「お腹の包帯行きますよー」
「はい。」
私「はい」しか言ってないなぁ…
にしても、結構塞がってるって…回復力がすごいね私。
そうこうしているうちに包帯を変え終わったようだ。
「ありがとうございます。」
「いえ、仕事ですので!」
朝食持ってきますね。とにこやかな笑顔で担当の人はて部屋を出て行った。
さて、今日は何をすれば良いだろうか。
――ガチャリ
扉が開く音がした。目線をやると、来客したのは先生だった。
「おはよう、真鍾」
「おはようございます。早いですね。」
「朝食はもう取ったのか?」
「いえ、今からです。」
そうか、と持っていた荷物を置きながら先生は椅子に座った。座っただけでも絵になりますね。
「それにしても一ヶ月とは、結構短いな。よかった」
「そうですね。担当の方が言っていたんですが、結構塞がってるらしいです」
「うん。いいことだな。」
「そう言えば、なにか大きな話題は最近ありますか?」
「大きな話題?」
「ほら、例えばモンドとか」
「そうだな…近々璃月で祭りが開かれることだな。」
「祭?」
「あぁ、七星迎仙儀式と言ってな。璃月港で年に一度行われる催しで、岩王帝君が人々の前に現れ璃月の経営方針についての神託を下す行事だ。」
「え」
「?どうかしたのか?」
「い、いえ何も」
え、魔神任務????俺が払うよ聞けるの?
「父様。」
「なんだ?」
「外に出たいです」
「却下だ」
光の速度で否定されたことはあるかい?ってか
「何故」
「今、お前はどんな状態だ?」
「……怪我してます」
「退院できるのはいつだった?」
「…一ヶ月後です」
「安静にしてなさい」
「うぅう…泣」
「その点においては問題ありませんよ」
「?!」
後ろから声がしたと思うと、後ろには白朮先生がニコニコして立っていた。
「先程、真鍾さんの担当の方が不思議なことに傷がほとんど塞がっていたと」
少し間をおいて此方を見る白朮先生。
「……見せていただいても?」
「え、あ、はい」
少し小っ恥ずかしいが、元は他人の体だどうとでもなれ!
白朮先生は慣れた手つきで包帯をしゅるしゅると解いて傷を見る。
「なるほど…これは…」
「え、何か問題があるんですか?!」
「いえ、確かにだいぶ塞がってますね」
「じゃあ…!」
「えぇ、外出しても構いませんよ。」
「で、す、が」
「え?」
「激しい動きをしないように。傷口が開いてしまいますから。」
「……はい」
「よかったな。真鍾」
「はい!」
嬉しさのあまり飛び跳ねそうになったが、先生と白朮さんがいる前では迂闊に動けなかった。
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お疲れ様でしたーー!!
はい、ちょくちょくネタが入れられましたね。ちょっと展開が早い気もする。
怪我の治りが早いのは、君の想像力次第だ!!(全然ご都合でもいいよ。)