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俺とテオは引き続き、宿泊している宿屋の1室にて、フルーユ湖攻略のための対策を話し合っている。
「……にしてもさ、やっぱ【光魔術】と【剣術】のスキルLVが上がったのはでかいよなっ!」
スキル【鑑定】にて俺の現ステータスを眺めつつ、テオは嬉しそうに言った。
エイバスからトヴェッテへ向かう道中でも、俺は魔物との戦闘を重ねていた。
街道には人通りがあまり無かったこともあって、勇者の証である【光魔術】を見られない様に練習するなら今のうちと、なるべく戦闘魔術のライトジャベリンやライトアロー等を使うようにしたり、夜はテントの中で回復魔術の光癒《ライトヒール》の練習をしたり。
また「小鬼の洞穴で学んだ元ベテラン冒険者のダガルガやウォード達の戦い方を、早く自分のものにしたい」という強い気持ちから、剣での立ち回りも出来る限り実戦に取り入れるようにしていた。
現在の俺のステータス――偽装なしのもの――はこちら。
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名前 タクト・テルハラ
種族 人間
称号 勇者、世界を渡りし者、神の加護を受けし者
状態 健康
■基本能力■
LV 11→14
HP/最大HP 162/62→81+81
MP/最大MP 98/37→49+49
物理攻撃 36→43+53
物理防御 12→15+37
魔術攻撃 29→38+38
魔術防御 11→14+29
■スキル■
<称号『勇者』にて解放>
光魔術LV1→2:光属性魔術での攻撃力が8倍になる
剣術LV1→2:剣技での攻撃力が8倍になる
<称号『世界を渡りし者』にて解放>
能力値倍化LV5★:常時全ての能力値が2倍
<称号『神の加護を受けし者』にて解放>
アイテムボックスLV1→2:生き物・魔物を除く所有物を8m³収納できる
スキル習得心得LV1:スキルを習得しやすくなる
鑑定LV1:対象のステータスを解析できる
神の助言LV1:神の一言メモを見られる
<アイテムにて解放>
言語自動翻訳LV1:人が扱う言語の意味を理解し、書いたり話したりできる
攻略サイトLV1:Brave Rebirth攻略サイトを閲覧できる
<自ら習得したもの>
防御LV1→2: 回避・武器や盾での受け流し&ガードが成功しやすくなる
気配察知LV1:半径50m以内に生き物や魔物がいるかどうか何となく分かる
偽装LV1→2:自身のステータス項目と、所有物の鑑定結果を任意の内容に見せかけられる
■装備■
手作りの片手剣:物理攻撃力+10、製作者の愛がたっぷりこもっている、とても丈夫で軽く初心者に最適な剣
ミスリルバックラー:物理&魔術防御力+15、軽くて丈夫なミスリル製
革の軽装鎧:物理防御力+7、軽くて動きやすい革製の鎧
布の服:一般的な布製の服
レイクリザードのレザーブーツ:水を弾き通気性がよい丈夫なブーツ、【防水加工LV3】
ある旅人のマント:ある旅人が、自分好みにこだわり製作したマント、【耐久加工LV3】【防汚加工LV3】【防水加工LV3】
■神の一言メモ■
順調順調! 真面目にがんばっておるようじゃのう!
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LVが11から14へとアップしたことにより各能力値が微増。
合わせて【能力値倍化LV5★】の恩恵による能力増加値も上昇している。
【光魔術】【剣術】のスキルLVが上がったことで、光属性魔術や剣で攻撃した際の攻撃力が8倍に。
実際にフルーユ湖のボスのステータスを見るまで断言はできないものの、おそらくこれだけ攻撃力があれば、そこまで苦戦せずにフルーユ湖を攻略できるんじゃないかと俺達は考えている。
地味に【防御】のスキルLVも上がった。
スキルLVが上がると回避やガードの成功率が少し上昇することが、プレイヤーの達の検証により判明している。
【アイテムボックス】のスキルLVが上昇したことにより、所有物の収納可能容積も1m³から8m³へと大幅に増えた。
収納量が増えれば、そのぶん予備アイテムを多く持てるし、ドロップ品も溜めておけることから、冒険の自由度も上がることだろう。
そして**【偽装】はスキルLVアップ**により、自身のステータス項目だけでなく、所有物の鑑定結果を任意の内容に見せかけることができるようになった。だからといって現状、鑑定結果を【偽装】したいアイテムがあるわけではないことから、追加効果の出番は今のところ無さそうだが。
色々と話したところで、何気なく部屋の時計を見た俺が気付く。
「あ、もう昼の12時過ぎてるのか」
「ホントだっ」
前日に立てた予定では、本日は俺の装備を新調すべく、朝から武器屋と防具屋を巡るつもりだった。
しかし寝坊のせいやら何やらで、想像以上に宿に長居してしまったのだ。
「どうする?」
「ん~……じゃあまずは冒険者ギルドでの用事、全部片付けちゃわない? どっちみち先に魔物のドロップ品は売りに行くわけだし、今が一番空いてる時間だろうしさ」
一瞬考えてから提案するテオ。
俺も「それもそうだな」と同意した。
ややあって、宿を後にした俺とテオは冒険者ギルドへ到着した。
王都中心近くの大通り沿いにあるトヴェッテ冒険者ギルドは、周りに立ち並ぶ他のどの建物よりも専有面積がかなり広い。
建物正面の壁には、一目見ただけで手が込んでいると分かる巨大な彫刻製の看板。
上半分はいわゆるレリーフで、凛々しい冒険者の姿が浮き彫りにされている。
下半分には共通言語文字のラグロイドで『トヴェッテ冒険者ギルド本部』と書かれている。美しく完成されたデザインは、看板というよりむしろ芸術作品だ。
だがその建物も横に大きい以外は周りと同じく、くすんだ水色屋根に白壁の5階建てで、目印となる看板も主張しすぎず色味をおさえているため、存在感の割には街並みに自然に溶け込んでいるようだ。
俺とテオが中に入ったところ、広々としたホールには冒険者らしき者はほとんどおらず、7つある窓口も埋まっているのは3つだけ。
むしろギルド腕章を付けた職員のほうが多いように見えた。
俺達は入口からもっとも近い窓口の職員に声をかけ、順番に用事を片付けていく。
まずは、ドロップ品の売却。
エイバスからトヴェッテまでの3週間の道中、魔物を討伐して貯め込んだ素材をほぼ全て売り払うと、およそ4000R(リドカ)になった。
そのほとんどはやはり、トヴェッテ周辺で討伐したスライム関連素材の代金。
特に戦闘中、粘り強く『スライムの欠片』を多めに採取しておいたのが功を奏したようだ。
続いては、拠点ギルド登録の変更申請。
各地を旅することが多い冒険者には、家を持たぬ者が多い。
よって封書や荷物を、通常の郵便制度で受け取るのが難しくなってしまう。
そんな冒険者達のために考え出された制度が『ギルド便』。ギルド便は冒険者ギルド間を結ぶ定期便で、各地の冒険者ギルドで集荷した書簡や荷物を定期的にまとめて運ぶことで、比較的安く相手へ届けられる仕組みとなっている。
荷物送付や受け取りのために必要になってくるのが、拠点ギルド登録および、拠点を変えた場合の変更申請。これを行わない限り、ギルド便を利用できないのだ。
なお登録や変更の申請には多少登録料が必要なこともあり、俺は拠点登録をしておらず、テオのみが拠点登録を済ませている状態だ。
変更申請が無事に済んだところで、テオは1通の封書を送る。
エイバス冒険者ギルドのギルドマスター・ダガルガ宛のその手紙は、テオによれば「2人とも無事にトヴェッテに着いたよーっ」という簡単な報告らしい。
「……他に、ご用件はございますか?」
淡々と機械的に作業をこなす若い男性職員が、うつむいたまま何やらメモをとりつつ聞いてきた。
テオはギルドの中を見回してから、最後の用件を告げる。
「ギルドマスターに挨拶したいんだけど……今大丈夫かな? たぶん『テオドーロ・コーディー』って名前を出したら分かってもらえると思うぜ!」
男性職員は顔を上げ、テオの顔をいぶかしげに眺めてから、「……少々お待ちください」とカウンターを離れた。
それから数分後。
ホール内の職員専用扉の隣で待つ俺とテオの前に、トヴェッテ冒険者ギルドのギルドマスターが現れた。
サイドに流した明るめな茶色の巻き髪。
厚くぽってりした唇には、上品に塗られた赤い口紅。
着ているのは落ち着いた色合いの服にも関わらず、パッと人目を引く華やか美人の彼女は、扉を開けるなり嬉しそうにテオに喋りかける。
「テオ、ひさしぶりねぇ! 元気そうで何よりだわ!」
「ネレディも元気そうでよかったよっ!」
「ありがとう! ところで……」
ネレディは、1歩引いて待っている俺へと軽く視線を送った。
思わずペコッとお辞儀する。
笑顔でそれを受けてから、ネレディは小声でテオへとたずねる。
同じく小声で答えるテオ。
ネレディが俺の方に向き直り、にこやかに話しかけた。
「はじめまして。トヴェッテ冒険者ギルドのギルドマスター、ネレディエンヌ・ロワ・フォートリエ・トヴェッタリアよ。名前が長いから、みんなはだいたいネレディって呼ぶわ」
「俺はタクト・テルハラです。よろしくお願いします、ネレディさん」
「こちらこそよろしくね」
ひととおり挨拶を終えたところで、ネレディが話を切り出す。
「さて。ダガルガからもらったギルド便で、何となく状況は聞いてるわ。でもやっぱり直接聞いておきたいことも結構あるのよねぇ……ちなみに、お昼は食べたの?」
「まだです」
「朝食べるのがちょっと遅かったから、お昼はちょっと軽めにしようと思ってる」
「そう……ちょうど今から昼休憩に入るつもりだったんだけど、良かったら一緒にお昼でもどうかしら? ここじゃ話しづらいでしょうし、ゆっくり話せるよう、適当な個室をおさえるわよ?」
俺とテオが同時に顔を見合わせ、そしてうなずく。
代表して俺が「お願いします」と返事した。
「分かったわ。それじゃあちょっと用意してくるわね――」
ネレディが裏に戻ろうとしたところ、ギルドの入口扉が開き、小さな女の子が駆けこんできた。
女の子はネレディの元へ一直線に駆け寄り、その足元へと抱き着いた。
「……お母さま、来ちゃった!」
「あらあら。ナディったら……しょうがないわねぇ」
ネレディに優しく頭をなでられ、ナディは「えへへっ」と鈴が鳴るような可愛らしい声で笑うのだった。