俺は、腕の中で泣き疲れて眠っている愛しい存在の額に口づけを落とした。
頬にくっきりと残っている涙の跡が痛々しい。
俺はその跡にも口づける。
本当に彼女は、困った恋人だ。
彼女は俺に嫌われたと思ったのだろう。
そんなことある訳ないのに。あんなことごときで嫌う訳がない。それ以上に、俺の想いはもっとずっと大きいのだから。
何でもかんでも自分ひとりで背負い込んで、人にも相談せずに……。でも、そんなところも愛おしくて。
……もしかして彼女は、自殺するつもりだったのかもしれない。彼女の手首や首に、何かで切ったような傷がいくつもあった。それを見た途端、俺の想いがあふれ出した。もちろんしばらく会えていなかったこともあったが、あの傷は自分で切ったのだと理解した途端、俺の胸が締め付けられた。悲しさで胸がいっぱいになった。彼女の全てを俺で埋め尽くしたくて、つい衝動的に口づけてしまった。
彼女の赤くなった顔にもそそられるものだから、長いものを二回もしてしまった。
だが俺は反省も後悔もしていない。あれで彼女が死ぬことを諦めてくれたならそれでいい。それに、久しぶりに彼女を堪能できたし。
……でも、まだ足りない。もっと彼女に口づけたい。もっと彼女を抱きしめていたい。そんな欲望が俺を満たす。
俺は彼女の淡い亜麻色の髪を指に絡めた。
ふわふわとわたのようにやわらかな髪。
俺はそれに口づける。
彼女は、すうすうと健やかな寝息をたてて眠っていた。あどけない寝顔だ。本当に彼女は……、弱くて脆くて、目を離したらすぐどこかに行ってしまいそうで……、でもかわいくて。俺の、無二の愛しいひと。
……もういっそ、閉じこめてしまおうか。彼女が出れないように、危ない目に遭わないように部屋に閉じ込めて……って、俺は何を考えているんだ。そんなことをしても、彼女を怖がらせるだけなのに。
「…ん……」
彼女が声を漏らす。
すると、彼女の頬をつぅっと一雫の涙が流れた。
俺はそれを拭う。
「いか……ないで……」
彼女がまた声を漏らした。
……彼女は、どんな夢を見ているのだろう。
彼女の切なげな寝顔に、きゅ、と胸が締め付けられる。
俺は彼女をかき抱いた。
「……どこにもいかない」
だから安心しろ、と俺は続ける。
すると、彼女の表情が緩んだ。
俺はそのことに安堵しながら、彼女を抱きしめ直す。
「リリアーナ」
俺は、愛しい存在の名前を呟いた。
それだけで、胸が温かくなるようだった。
彼女の透き通るように白い頬を撫でる。
「愛してる」
俺はそれを呟き、彼女に口づけた。
彼女を離さない。絶対に。
だって彼女はもう、俺だけのものなのだから。
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おーおーやっちゃったなルウィルクよ←書いたの自分