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翌日。
セブンは一晩ほとんど寝ていない。
椅子に座ったまま、
何度も同じことを考えている。
「……」
クールキッドの言葉。
“にいにの方が好き”
頭から離れない。
——朝。
クールキッドはまだ寝ている。
静かなうちに。
セブンは外に出る。
行き先は決まっている。
——ピザ屋。
開店前。
シャッターは半分開いている。
中に入ると、エリオットがいる。
「……早いな」
軽く言う。
いつも通りの声。
セブンは立ったまま。
「……話がある」
短く言う。
エリオットは手を止める。
少しだけ様子を見る。
「重そうだな」
冗談っぽく言うが、
ちゃんと向き合う姿勢。
「……どうすればいい」
セブンが言う。
一瞬。
エリオットの表情が変わる。
驚き。
でもすぐ戻る。
「主語でかいな」
「……あいつだ」
「クールキッドか」
「ああ」
セブンは続ける。
「止めるだけじゃ、ダメだ」
言葉にするのは初めて。
自分で認めるのも。
「……で?」
エリオットは促す。
「どうすればいい」
同じ言葉。
でも、今度ははっきりしている。
“教えてほしい”って意味で。
エリオットは少し考える。
それから。
「まず」
指を一本立てる。
「“すごい”って言う」
セブンがわずかに眉を寄せる。
「……肯定するのか」
「する」
即答。
「できてることは、できてるって言う」
シンプルに。
逃げずに。
「じゃないと」
少しだけ視線を落とす。
「どっかで認めてくれる方に行く」
セブンは何も言わない。
もう、それは起きてる。
「次」
指が二本になる。
「“ここから先はダメ”を決める」
「……線引きか」
「そう」
「全部ダメじゃなくて、ここまでならいいって決める」
「……難しいな」
「難しいな」
エリオットもあっさり認める。
「でもやるしかない」
次。
三本目。
「一緒にやる」
セブンの視線が上がる。
「……一緒に?」
「そう」
「一人でやらせるな」
「見てるだけでもいい」
「関わる」
その言葉が、少し重く落ちる。
セブンは考える。
自分が隣にいる状態。
それは——
止めるより、難しい。
「……」
エリオットは少しだけ間を置く。
それから。
「でも」
声を少しだけ落とす。
「1番大事なのは」
セブンが見る。
エリオットはそのまま近づく。
距離が一気に詰まる。
一瞬だけ迷う。
でも——
そのまま。
セブンを軽く抱きしめる。
「こう」
短く言う。
セブンの体が一瞬固まる。
完全に予想外。
「……何してる」
低い声。
でも、強くはない。
エリオットはすぐに離れない。
「安心させる」
そのまま言う。
「できるとか、できないとかじゃなくて」
「ここにいていいってやつ」
セブンは何も言えない。
言葉が止まる。
「子どもってさ」
エリオットは少しだけ力を緩める。
「そこがあると、暴走しにくい」
ぽつりと。
実感みたいに言う。
「……」
セブンの手がわずかに動く。
どうしていいか分からない動き。
それでも——
振り払わない。
数秒。
静かなまま時間が流れる。
やがてエリオットが離れる。
「まあ、全部完璧にやれって話じゃない」
いつもの軽さに戻る。
「失敗しながらでいいだろ」
セブンはしばらく動かない。
それから。
小さく息を吐く。
「……すごい、か」
ぽつりと呟く。
「言ってやれ」
エリオットは笑う。
「最初はそれでいい」
セブンは目を閉じる。
ほんの一瞬。
それから。
「……分かった」
低く言う。
完全じゃない。
でも。
確かに一歩。
エリオットはそれを見て、軽く頷く。
「じゃ、まずはそれ」
いつも通りの空気に戻る。
でも。
中身は少しだけ変わっている。
——帰り道。
セブンは一人で歩く。
昨日と同じ道。
でも。
頭の中は違う。
“すごいって言う”
“ここから先はダメ”
“一緒にやる”
そして。
“こう”
ほんの一瞬。
さっきの感覚が残る。
「……」
セブンは小さく息を吐く。
「……やるしかないか」
誰にでもなく言う。
その声は、昨日より少しだけ——
迷いが減っていた。