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「…………此処……は」
「お目覚めになられましたか、我々が姫様…… 」
「………!!、っ……!!、離してっ…!!」
「暴れないで下さい、もう直…その身体の中に眠っている本当の貴女様と完全体になられるお目覚めの刻が訪れるのですから、あの大罪人が犠牲となり、代償の捧げ物として封印から全てを解き放つのです」
「嫌っ……嫌っ…!!」
「もうこの運命からは逃れられませんよ、主様と聖騎士長様 方から儀式の開始命令が下されれば、大いなる儀式は遂行されるのですから」
「本当は順序を追って、段階的にこの偉大なる計画を進めていくつもりでしたが、姫様方が我々が想定していた以上に反抗の意思をお示しになられているので、此方としては少々心苦しいですが、強行手段という事で、こうやって強引に連れ込むしか方法がなかったのです、さて、後はあの大罪人を攫い、儀式の生命線へ、捧げ物の神器を捧げるのみ……」
拐われたリーシア、その頃ゴウセルらはリーシアを救い出すべく、行動を始めるのだが、生憎のこの状況。
「…………魔力も全身の力も、何らかの力が作動して吸収されていっている……これは一体何なんだ?」
「そんな事を悠長に考えてる時間の猶予はもうないって事の現れだよ」
「……………………」
「もう手遅れだよ、受け入れ難いけど、この先に待つ運命は終焉の訪れのみ‥そして最終的に力を全て放出した廃れた身体は朽ち果て、塵となる」
と同種族の一人はそう言った。
「そんな……、けど何もせずに見ているだけじゃ現状は何も変わらない、どうにか方法はないのか」
「此処まで儀式が本格的に仕上げに段階に差し掛かってしまった以上、儀式が完全形になるのももう時間の問題だろうね」
「ああ、その大罪人を彼奴らが拐いにまた来てしまったら、我々にとってはその先に待っているのは希望などない、ただ絶望の淵に落とされるだけだ 」
「益々時間の浪費は許されなくなっちまったって訳か」
「姫様の復活の儀式が成功したら、もう我々でも太刀打ちが出来ない、あのお方は絶大なる力を内に秘めておられる、それが全て解放された‥考えたくもない、けどもう背けられない現実である事には変わりない」
「リーシア……」
その頃リーシアは今も尚逃げられもしないまま、囚われの身なり、尚且つ彼と離れ離れになってしまった状況に陥っているからか、寂しさが溢れ出しポツリと涙を溢した。
「ゴウセル‥‥……」
「さあ、もう直ぐ‥もう直ぐで我々の切なる望みが叶う…数億万年前の眠りからお目覚めになられたと知った瞬間から、ずっとその瞬間を待ち焦がれていましたよ、けど姫様を閉ざされた封印から完全に解放するには、それ相応に伴う代償が必要だった、やっと今がその時…」
「嫌……‥嫌っ……嫌ああっ…!!!」
「儀式が全て遂行されれば、本当のご自身を取り戻せるのです、さああの古き記憶に眠り続けておられる姫様‥お目覚めの刻が刻一刻と迫っていますよ」
「さて、そろそろあの大罪人をこの場へ連れ込むとしよう、主様もリオネス王国の聖騎士長様も儀式の見物を楽しみにしておられるだろうし、ああそうだ。姫様くれぐれもこの地から逃げ出そうなんてそんな真似、もうしないで下さいね?」
「っ…………、もう彼に手出ししないで…!!」
「……残念ですが、その約束は無意味です、我々の儀式においてあの大罪人が犠牲の神器の器となるのは最初から運命で決まっていた事…」
「あの国の聖騎士長共と密かに同盟を組んでいた甲斐があった、我々の悲願を叶える為の器を捕らえるのに最適な奴らはそう居ない、感謝する……リオネス王国の聖騎士殿と、その従順なる聖騎士達よ」
「礼には及ばない、我々の宿敵とお前たちの目的が一致していた、ただそれだけの事だ」
「此方の方こそ、貴方方のお陰で更なる力を得る事が出来て、光栄です」
「ふふっ…そう‥」
そんな談話をしていると、痺れを切らしてきたのか、「そろそろ儀式を始めるとしよう、私が姫様を更に調教し直しておく、お前達はその間にあの大罪人を攫ってこい、良いか?迅速にだ、これ以上の遅延は許さない」
「御意、承知致しました」
そうしてギーラ達聖騎士軍団を彼の誘導に行かせ、愈々儀式を最終段階へ一気に持っていくようだ。本当ならば、じっくりと追い詰めていくつもりだったが、二人が予想外な程に抵抗し続けていたのが、時間を大幅に浪費し、数億万年という月日を割いて計画した大規模を巻き込む大いなる儀式が停滞していた。
その現状を垣間見て、もうどんな手段も一切厭わない。何が何でも遂行しなければこれまでの切望が全て水の泡になる。
そんな事態、彼女ら魔神族一族ら全員が許さない。リーシア、ゴウセル共に益々危機迫る刻が刻一刻と迫ってきている。まさに絶望の終末が直ぐ傍に迫ってきている。
「こんなところで、ずっと立ち止まっている訳にもいかない。彼女を救いに行こう、もう手遅れであっても、最後まで抗えるならば俺は運命に逆らう、簡単に支配下に成り下がる程ヤワな精神ではない」
「ああ、例えどんな事が前に立ちはだかろうが、絶対に諦める訳にはいかねえ、この国の運命がかかってるんだ、絶対に守ってみせる…!」
「彼女のこの先にある終焉や結末など望んでいない、最初から全て決まっていた筋書きの上で踊らされていたとしても、彼女が救いを求めて手を差し出すのなら、その手を握り返すだけだ」
ゴウセルはそうぼやいた。
自身の身体をゆっくりと蝕みゆく呪いに侵されながら…。
ゴウセルらは、リーシアの事を救い出すべく行動に移るが、あっという間に奴らに追跡されていたのにも、気付けず……、「見つけたぞ、色欲の罪ゴートシン・ゴウセル……貴様を迎えに来た。理由は我々が直々に告げずとも、もう理解している筈だ」
ジェリコ達、そして数人魔神族の者達‥…更には、「貴様の事はずっと監視していた、漸く我々魔神の血で結ばれた同盟が目指していた事が実現される‥その為には貴様にも、協力して貰わなければならない、さあ……」
と言ったのは、「以前から既に勘づいてはいたが、やはり魔神族の血族騎士団達と同盟を組んでいたのだな、ドレファス、そしてヘンドリクセン聖騎士長も」
「!!?、って事はヘルブラムも‥!!?」
「ああ、そうだ」
まさか聖騎士だけに止まらず、その上の階級に地位にある聖騎士長までも揃いも揃って、魔神族一族と同盟を結託していた模様。
「さあ、御託は不要だ。儀式が完成形となるまではお前だけには、手荒な真似をするなと命じられているが、その一方でただし抵抗をそれでも続けるようであれば。多少の傷ならきさまに与えて良いとの命令も同時になされた」
「命令通りに従えというのならば、逆らう。例えこの身体が呪いによって廃れ、朽ち果てようがもうお前達の言いなりになるつもりも、仲間にもならない、俺の役目は彼女を救い出す事…ただ一つだ」
「愚かな‥まだ抵抗を続けるというのか、随分と屈強な精神だ」
「だが、此方も切望の遂行を果たす為‥‥その為なら我々はどんな事であろうと…貴様は我々が連れ去る」
聖騎士だけに終わらず、聖騎士長までもが立ちはだかる事となった。しかも、ギーラ達同様に魔神の血を呑み、肉体強化なども強制的に行われたと推測される。
「お前達の都合の為の協力などしない、それに彼女がもし救える事の希望さえもなくなったとしても、俺はそれでも彼女を救う事を諦めない、彼女は心という概念を失った俺に、様々な感情を教えてくれた、だからこそ何があっても彼女を救うと誓った」
「その威勢と抵抗心が一体何時迄保てるか、実物だな、貴様の身体には『呪い』が転移されている、こうして我々に逆らいの意を示している間にも、貴様は呪いによって肉体と精神共に侵されている筈だ」
「俺達はそう安易に屈する程脆弱などではない」
「はあ、仕方ないこうなればもう強行手段だ力ずくでもお前をあの方々の元へ連れていく」
「……これは一筋縄ではいかなそうだな、しかし彼女を救い‥‥守り抜く為にもこんなところで諦めている訳にはいかない、例えこの身体が呪いに侵されてしまおうが、それに抗うだけだ」
ゴウセルが運命に逆らい続ける中、リーシアは魔神族のあの地で心酔者達、更には魔神族の中でも最強格の者らから、ありとあらゆる術を受け、追い詰められていた。
しかも、こんな状況の最中でも、依存症状が発症してしまいそれを利用され。更にリーシアは封印の扉を開けるのに、弄られ…強引に封印の中で閉ざされていた記憶が一気に引き戻され、それにより膨大な情報量が頭の中に入り込んでいく。
『完全体のリーシア』が眠りから復活する刻が刻一刻と、時を刻んでいる。
「っ………ゴウ……セル……あ……あ‥…ああ……あ………」
「姫様、今更抗おうとしたってもう手遅れですよ、あの大罪人を捕らえられる事が完了し、そして目の前であの大罪人を処刑し、犠牲となれば…例え貴女様であっても正気は保てなくなるでしょう、姫様にとってあの大罪人は命よりも最愛の人物、そんな人が死んだら…さぞ精神も貴女自身が壊れてしまわれるのは明白です」
「あ……あ……私は……私達は……こんな事で屈する程脆弱じゃない、どんなに残酷な運命だろうが、私は…闇に葬られたりしないわ」
「まだ抗うというのですか?どうやら、あの大罪人も……抵抗を続けているようですが運命から目を背けても、何も変わりませんよ。これから襲来する運命に嘆いていても、無情です…姫様に楯突くような口利きをするのは無礼だと承知の上で言いますが、もういっその事諦めて貰えますか?」
リーシアとゴウセルの抵抗に疲れ切ったのか、自分達の種族の最高者を前にして、呆れ果てた様子だ。
リーシアは自分達にとっては魔神族を統べる統一者であり、守護神。だから、説得も容易く事を運べるだろう踏んでいたようだが、予想以上に抵抗しているではないか。自分達が思い描いていた理想の状況とは真逆の現状に焦りを隠せない。
「私は…………絶対に堕ちない…、貴女の野望を叶える為だけに…支配され、何かを失うなんてうんざりよ、それに私は……貴女達の創造神でもある、これはそれを分かっての行為かしら?」
「残念です、姫様になら我々の願いが届くと信じていたのですが……そこまでして抵抗し、目を背けようとなされるのならば、もう少し徹底的に心身共に完膚なきまで、抵抗する余力がなくなるまで、調整致しましょう」
そうして、リーシアは再度精神や記憶を弄られ、心と精神は脆弱になり、恐ろしい術を仕掛けられて 彼女の心は擦り削っていく。
数時間後‥‥彼女は彼女の『弱点』である特定の人物を関連させた術をかけ続け、「……あ……あ‥…あ‥ああ……」
「ふふっ、あはははっ……!これで……これで、儀式完遂も見えてきた…我々の永き年月に願ってきた切望が……もう直ぐ叶う」
「姫様……もう直ぐです、もう直で大いなる儀式に必要な神器が揃う、ふふっ…これまでにない程のこの胸の高まり、ずっと願ってきた切望が叶う…そう思うと、ふふっ…」
と微笑を浮かべ、リーシアに手を伸ばす。
「私……私は……、あっ……ああ…………っ!!、あ……」
リーシアが深淵の闇へと導かれていく最中、聖騎士達と戦闘を繰り広げるゴウセル達。
「まだ抗うというのか、何処までも強固な精神だな、だが……」
「なんだ……?」
「もう直あの方々から儀式の開始命令がなされる頃合いだ」
そうして、その刻は目前に迫っていた。
「刻は熟した、今こそ終焉の幕開けだ」
「っ……!!、あ……あ……あああああああああっ!!!!」
「…………?」
「ふふっ……」
終焉の刻は目前だ。最恐の終焉が遂に目を覚ます……。