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「…………っ……」
囚われているリーシア、そしてゴウセルの身体に紋章が浮かび上がり、禍々しく発光していた。「…………さて、準備が整ったようだな、さあ我々と共に儀式の中心核へ……」ヘンドリクセンが手を伸ばしたその瞬間……「……………」ゴウセルは魔力が身体から吸い取られ、更には呪いの効力が働き、彼の身体を蝕み、その紋章による反動で気を失った。
「ゴウセル…!!」
「これでやっと大人しくなった、我々の使命は遂行出来た…後は欠片を掛け合わせ、歯車を廻すだけ……」
「……………………」
「ゴウセル………!!?、おい、目を覚ませ…!」
「奴の魔力エネルギーも、身体の生命力も全ての呪いの力によって吸収している…そう安易には目を覚ませない、ややっと捕まええたぞ」
「さあ、色欲の罪ゴートシン・ゴウセル。あのお方の元へ……」
「今こそ、儀式が幕開けの時を迎える、 もう直ぐでお前達は絶望に満ちる事になるだろう……」ドレファスは怪しげな発言を言い残し、気絶したゴウセルを抱え連れ去った。
ゴウセルが拐われたという事は、儀式を始動させるのに必要な準備が全て整った事を意味する。
「まずい……このままじゃ本当に儀式が幕を開ける‥‥封印されている姫様の力は……魔神族に属する…例えそれがどんなに上級階級の者であっても、姫様には、足元にも及ばない程…、もう終焉の襲来は止められない……」
「だからって弱音吐いてる時間はもうねえ、彼奴らのとこに行かねえーと…!」
「今更助けに向かったってもう手遅れも同然だ、姫様を復活させる為の神器は全部揃ってしまった、それにもう直、終焉の訪れの前兆が舞い降りる事だろう」
魔神族一族の者である二人は揃って、絶望的となったこの状況を今更覆すのは不可能と言わんばかりに諦めムードに。
「彼奴らの儀式の計画の順序を考えれば、あの大罪人の捕縛が完了した、つまり後はその大罪人を生贄の器として捧げるのみ‥……それに姫様も今頃とっくに彼奴らに堕とされている可能性が高い‥」
「もう救う猶予すらも与えられないって訳か」
「ああ、それに彼奴らが犯そうとしている儀式‥姫様の完全なる復活には前提として古から我々魔神族に伝わる伝承の中で姫様の大いなる儀式には、犠牲と代償を伴う必要があると… 」
「なるほどな、その代償と犠牲の器としてゴウセルが選ばれたって事か」
「ああ、あの儀式は我々魔神族に古から言い伝えられてきた。伝承として記憶に刻まれている大いなる儀式、その中心核の材料を担う代償と犠牲の器となり得るのは、勿論……魔神族の血族のみだ 」
こうして、メリオダス達が密談している間にも、儀式開始の歯車が廻り始めていた。
「さあ、漸儀式における全ての欠片が揃った…リオネス王国の聖騎士達よ、ここまでの協力感謝する」
「………此処‥…は……」
「ゴウ……セル…!」
「目を覚ましたようだな。色欲の大罪を背負う者よ、此処にお前を態々連れ込んだ理由はもう理解できているだろう?やっとこの時がやってきた、永年の我々の切望が遂に実る刻だ」
「‥…本当に実行するつもりか、しかし本当の彼女を取り戻したとして、それがなんだ?どのみち、彼女は膨大な蓄積量の魔力エネルギーに耐えられなくなって、彼女の生命は朽ち果てる‥それがお前達が望んでいる事だというのか?」
「え………?」
「力に囚われ、ただ自分達の身勝手な欲望が欲っしている事が結果的に自分達が慕う存在を苦しめる事になる事…想像しなかったのか?」
そうゴウセルは問いただした。
「………煩い、支配こそ、破滅というもの程我々魔神族に相応しいものなどない、この我々の大いなる儀式を行うという運命は既に何年も前から決まっていたの、魔神の囁きの言葉に従ったまでだ」
「あのお姿こそが、我々が何よりも敬愛し続けてきた偉大なる姫君であられる。姫様の完全なる復活は我々にとって悲願の望み、この願い以外の望みなどない 」
「何の為にそこまでやる必要がある、ただリーシアを目覚めさせたい、ただそれだけの為にこの国全土を巻き込んだ反乱起こすとは……本当の目的はなんだ?」
「何が言いたい……!」
「…………ああ、そうさ。これは全て我々魔神族の、人間達に対する復讐の聖戦を起こす為さ‥姫様がお目覚めになられたら、我々にこれまで盾付き、我々を愚弄してきたあの人間達にな…!!、我々こそがこの世界に存在する数多の種族の中で頂点に達するに相応しい…そして、真の支配者となる‥‥」
「それにあの醜き人間共はあろう事に姫様でさえも愚弄し、侮辱した…姫様にも多少なりとも、あの人間共に対しての恨みや憎しみを抱いておられる筈だ、これはある種の反乱戦争だ」
「やはり、その為の計画だったのか」
「それに姫様を軽蔑し、憐れんできた人間に姫様自らが裁きを下す事で、あの醜い人間共は懺悔する以外の選択肢はない」
「戯言はそれまでだ、さあ色欲の罪を背負う大罪人よ、後はお前を代償の生贄として捧げるだけだ、儀式はもう少しで完全体となる」
そうしてリーシアは儀式の中心核へ連れて行かれ、封印の鍵を強引に開けられ、記憶の再建の
為に無理矢理に引き戻された記憶が延々と流れ込み、更に二人に刻まれた紋様が共鳴するように発光した。
「っ……!!、痛いっ……!」
「リーシア……」
「さて、後はお前をこの中心核と一部とする為に捧げるだけだ」
「もう洗脳は解けた。今の俺がお前達の要求に素直に応じるとでも思ってるのか?」
「まさか、まだ抵抗するというのか。しかし残念だがとっくにお前の生命力も魔力も奪っている、つまり今のお前は我々に逆らえる力さえもない」
すると、ゴウセルは魔力を引き出そうとするも、当然それも今となっては無意味なのだが、しかし…その状況は一瞬で変わった。
「魔力が戻っている…?まさか………」
「何ふざけた事を言ってるの、そんな訳…!! 」
「いや、間違いなく彼の魔力が元に戻っているようです、しかし何故…いや、この場でそのような事をするのはリーシア様、貴女お一人しか有りえませんね」
ギーラはそう睨んだ。
「姫様が…でもあのお方であってもそんな芸当は…!」
同胞達は、信じられないようだが、その一方で魔神族の一族の中でも長と思われる人物は、「あの人の力に不可能という言葉などないに等しい…だからこそ魔神族の頂点に君臨するお方であられるのだ」
「絶対に始動なんかさせない‥‥!!、死の犠牲の過程を超えないと本当の私が目覚めないというのなら、私は…今のままで良い…力も記憶も、要らないわ…! 」
「はあ、まだ貴女様はそんな事を……しかし、 もうそんな事を言っている余裕はもうない筈ですよ、記憶の再構築への移行はもうとっくに始まっている、後は代償を支払えば……強制に封印の扉は開きます、今更足掻いたって遅いですよ」
同胞の民はそう言った。
「っ……!!、ま……た…………っ…!!」
「リーシア……?」
リーシアは次々と流れ込んでくる閉ざされていた全ての記憶に頭が割れそうな程大量な記憶の情報が注がれているから、耐え難い痛みに思わず、しゃがみ込んだ。
「さあ、これでもまだ貴方方お二人は抗うというのか、本当に面倒な事だ。せっかく此処まで辿り着いたというのに、まさかこんなところで足止めをくらう事になるとは……」
「私達は……もう…!闇なんかに、邪悪な呪いなんかに屈しない…!!例え呪われた存在でも、在り方を変えれば希望の光になる、闇に呑まれた種族であっても…! 」
「はあ、どうやら力尽く再度調教を行う必要がありそうですね」
「…………いや、その必要はない。今すぐにでも始動させよう、もう待つ猶予も惜しい…それにリーシアに眠りし魔神もずっと数億年もの間閉じ込められているんだ、窮屈で仕方ないだろう」
「っ……!!、あ……あ……ああ…………」
「姫様……もう直ぐですから、さあ…… 」
「……あ……あ‥…うあ……あ……っ…!!!」
刻まれ、広がりゆく刻印…そしてそれにより意識と思考が制御されてしまった。記憶が流れ込んでくる痛みとそれまで抑え込まれていたものが、強引に引き摺り出される事で悶え苦しむリーシアの身体を更に襲う。
巨大な魔法陣の中心から逃げられないようにと、魔術で防壁まで貼られ身体自身も強制的に硬直魔法がかけられ、身動きは完全に封じ込まれてしまった。
「さあ、これで姫様も迂闊には動けなくなった!これでやっと……悲願の願いを叶えられる……はははっ…!後は復活の為に犠牲の代償を差し出すのみ……お前が犠牲になる事でこの儀式が完全体となり、完全する……」
「いや……いや…!彼を殺めないで…ゴウセル…逃げて…!」
「はあ、姫様がまた騒がれておられる……」
「ああ、それなら問題ない…リーシアが自我を喪失するのも、もう時間の問題だ、目の前でこの大罪人を処刑すれば、儀式の神器が揃った時、目覚めの扉が開かれる」
「早く実行解放したまえ、我々の切望が叶うまで…もう目の前だ」
「了解…」
「いや……お願い……貴方を……目の前で失いたくないっ…!!、お願い…ゴウセル…!!」
そうして血族者、リオネス王国の聖騎士と聖騎士長達は一斉にゴウセルを集中的に標的を定め、奇襲を仕掛ける。
ゴウセル一人に対し、相手は多勢……圧倒的に不利な立場に立たされている。だが、だからと言ってゴウセルとしても、そう安易に殺される訳にはいかない。彼は絶望の最中だとしても、救い、守りたい存在の為に覚悟を決め、闘う。
「……俺は彼女を救うと決めた、その為なら例え傷だらけになろうが、その傷さえ厭わない…俺に感情というものを与えてくれた彼女の事を、これ以上苦しめさせる訳にはいかない」
彼は神器を自在に操り、状態異常をきたす魔力技や、神器を 巧みに使った物理攻撃型スタイルで反撃する。
「はあ………はあ……はあ……相変わらずあんたのその精神を抉る魔力技には堪える…ふふっ、けど残念…もうあんたの命もお終いだよ」
と何か企んでいるのか、怪しげな微笑を浮かべ……その者が手をまるで糸で人形を操るように動かし、ゴウセルに焦点を向け‥「…………?、なんだ……体が動かない…?」
「ふふっ、やっとう上手い事硬直状態に嵌ってくれた。さあやって仕舞いな」
「死への落淵」
「あ…………」
その一撃が彼に直撃した瞬間、彼から血飛沫が飛び散り…彼は一気に血塗れな程に溢れ出し。ゆっくりと意識が薄れ、彼は…倒れた。
彼の身体から溢れ出す止まらない出血が血溜まりを作った。そして、更に息の根を止めように剣で腹を貫かれた。
彼が死にゆく様を目の当たりにした彼女の心はひび割れ、段々と崩壊へ。
「ゴウセル……?、ねえ…ねえ……目を覚ましてよ……お願い‥だから…ゴウセル…!!」
「…………‥」
「いや……いや……そんな……こんなの……いや……いやあああああああああああっ…!」リーシアは泣き崩れ、溢れでる彼の血を掬い、ゴウセルの鮮血を魔法陣に垂らし、奴らは最終段階を遂に終えた。
「さあ、大いなる代償は全て支払った。今こそ目覚める時……そして今こそ封印されし扉よ、この世界を混沌の深淵で支配するのだ……」
「あ………あ……あ……ああああああっ…!、ああああああああああああああああっ…!!!」
閉ざされた全てが解き放たれ。遂にこの時を遂げてしまった。
破滅の足音が直ぐそこに迫っている。
「一つの魔力反応が消え、そしてもう一つは絶大なる反応を示している…」
「封印の扉が全て開放されたんだ、もう我々に姫様に敵う勝ち筋はない…これから先の運命を覆すなんて不可能だ…!」
完全体のリーシアの復活の刻が刻一刻と迫っている最中絶望の言葉を漏らす魔神族の片割れ達。
「魔力反応が消えたって事は……まさかゴウセルはもう……」
「ああ、恐らく想像してる通りだ」
「そんな……じゃあリーシアは……」
「もう時間がない、絶望の脅威が直ぐそこに迫っている」
呆然とする中、その刻を目の当たりにする瞬間が直に訪れる。
「あああああああああああっ……!!!!!」
リーシアは彼を、しかも目の前で失った悲しみの衝撃で感情が暴走し、呪いが全身を侵蝕…そして彼女の心臓部に潜む魔神までもが、完全に眠りから目覚め、彼女の…本当の姿への変貌が加速する。そして全ての覚醒が解き放たれ、目を開けると…彼女は変わり果てた姿になっていた。これが、リーシアの本当の姿…。
「やっと数億年間に及ぶ永い夢の眠りから目覚められたわ、はあ退屈だったわ」