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──ねえ、私のお父さんって、その、女の子同士の恋愛が好きなの?
お母さんにこんな相談をしたところ、家族会議が始まった。
「リビングに数週間前から置いてあるあの漫画、あれ親父のだったのか」
「そんなわけないだろう。あれは絵名か彰人のじゃないのか?」
「違うわよ! 私がああいう趣味持ってたとして、あそこに置いとくわけないでしょ、年頃の女の子よ!?」
「オレも違うけど。……一応聞いとくが、あの漫画読んだやつ正直に手を挙げようぜ。話が進みやすい」
「はあ!?」
「絵名は読んでるとして、読んでなかったら説明から始めなきゃだろ」
彰人がそう言うと頷く両親。確かに私は内容を知ってると言ってしまったようなものだ。
「じゃ、せーの」
挙がる四つの手。
「全員読んだんだ……。この中で一番白い目で見られるの私だよね。でも一番怪しくないのも私じゃない?」
「は、なんでだよ」
「だって、特に私なんて同性が好きです、なんて言ってるようなものじゃない。そんな認められるか分かんないもの置けないわよ。否定されたらどうすんのよ」
「逆に家族に認められたくて置いておいたんだろ。違うのか?」
「違うわよ! 私があれ置いた前提で話さないでよ!」
「オレは弟っていうこともあって否定しないけど」
彰人は両親に目を向ける。
「お母さん、別に否定しないわ」
「ああ。しないぞ」
「よかったな、絵名」
「は?」
凄い優しい顔をして、こちらを向いてくる彰人。犯人、分かったかも。
「……彰人でしょ。これ置いたの。よくも犯人に仕立て上げようとしたわね」
「ちげーよ。なんでそう思ったんだ?」
「なんか言ってたじゃない。ほら、朝ごはんできたって報告しに来たとき、朝比奈さんなら否定しないぞって」
「まあ言ったけどよ」
「絵名、朝比奈さんなら否定しないわよ」
「ああ。」
「は!? まふゆはそんなんじゃないから!」
ていうか、誰も否定しないのおかしくない?
もう全員でやってない?
「じゃあやっぱり、あいつじゃん」
「親父か?」
「俺は違う」
「ねえあなた。私はね、そもそも絵名にお父さんがあれ置いたのって聞かれて家族を集めたから。そうなら正直に言いなさい」
「違う。彰人じゃないのか」
「俺はちげーっての」
「彰人は、一度も本を読んでなかったな」
「は?」
え、なんでそんなこと知ってるの?
「……あの漫画が置かれてから、俺はリビングに居座った」
「私そのせいでリビング中々行けなかったんだけど、どうしてくれるの!?」
「それは知らねーよ。ていうか、恥ずかしいし親父がいない時に読んだんだよ」
「カメラを置いた。彰人がいつ読むか確認するために。二人は読んでいるところは見た」
「は?」
「こわっ盗撮……?」
シンプルに怖い。無理。いや無理すぎる。
「彰人、お前なんだろ」
「カメラ置いてる親父が怪しすぎるだろうが」
「……男二人で話したかったんだ。あの漫画をな」
「親父……?」
「何これ」
ついて行けない。家なのに帰りたい。
「そうか……親父は百合厨かよ……!」
「…………ふっ」
「もうやだこの家族……お母さん!」
「今日はハンバーグよ〜」
「……そうだ、俺が犯人だ。最初はそのつもりじゃなかったんだ。ただ、そういう世界がいいってことを家族に伝えたかったんだ」
「お母さーん、私も手伝う〜」
「でも、そっか。親父の血を引いてたから、なんだな」
「そういうことだ。今度ゆっくり二人で話し合おう」
「あ、ちょっと人参入れないでよ!」