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第74話
僕が目覚めると、ベッドの上にいた。その回りにはロザンナやホルム王やソフィーたちが言いにくそうにして僕を見つめていた。
『大丈夫?』とロザンナが最初に口を開いた。
「うん」
『アニカが、昨日助けてくれたんだよ。お兄ちゃんって、本当心配させ過ぎ。これから、こんな事にならないようにね』
皆は暗かった。いつもの凛々しい姿や、明るい声も無い。
鈍感な僕でも、何かを感じで力んでしまった。
『ホルムの天と地を治める勇者。ホルム一の剣士。ホルムの光の子。ロルフ。娘を頼むぞ』
え? 何でそんな別れみたいな事を……
『お姉ちゃんの事も頼んだよ。それとお母様とお父様の事も。よろしくね』
『フリオの事も忘れるなよ。挨拶はしてる。気づいてもらえなかったがな』
『ビタリもレーナも、まだまだなんだ。託していいか? 俺にはもうできない』
『お兄ちゃん。ティモの事も、アドルフの事もよろしくね』
「な、何で……また、会えるよね……?」
僕が涙目で言うと皆は下を向いて首を横に振った。
『幽霊でも、いれる時間が決まってるんだ。すまない。泣かないでくれ』
『ごめんね。だから、皆の事をよろしく』
『もう、ここにいれる時間がないんだ。二人の事を頼んだ』
『娘を明るい道へと導いてくれ。任せるぞ』
『お兄ちゃん。苦しい時も、支えてくれて……今までありがとう』
そう言うと皆は見えなくなった。
言いたい事を一方的にいって……ずるいよ……
僕は泣かないように必死に耐えた。
✡
次の日。
「アニカ。昨日は助けてくれたの?」
その声で私は目を覚ました。
ロルフはいつもより、暗くて見た事ない表情だった。何か追い詰めているように見えたけど、七色の無表情の彼の時はいつもあまり分からない。
でも、その前に安心したのが顔に出てしまった。
「……私はここまで連れてきただけ。自分の無力さを感じたよ……良かった。生きてる」
「うん。生きてる」
彼は少し寂しそうな顔をしている。押し殺しているはずなのに、表に出てるって事は今までより強いんだろう。
……そういえば、いつもいた幽霊の姿の皆がいない。
もしかして、これ?
「気づいた? ロザンナとマルコさんとシルビオさんとホルム王とソフィーがね……五人はここにいれるような時間がもう無いといっていってしまったし……」
嘘……やめてよ……
「嘘だよね……?」
私が確かめるとロルフは無言で首を横に振った。
妖精たちはロルフの元で慰めているように見える。
……秘密だったけど、話し声は光の子しか解らないみたい。私にはさっぱり。
「そっか……私が早く目覚めてたら、皆の未来も変わっていたのかな……?」
私が思わず本音を零すと、ロルフは無言で首を横に振った。
「少し遅れると、連絡を入れよう。休まないと心も体も保たなさそう」
ロルフはそれを聞くと小さく頷いた。
……それで、今日はこの村で休む事になったけど、ロルフの元気が無い。というか、朝の一言から声を聞いていない。
「ロルフ。少し散歩にいかない? このままだったら、何も変わらないから気分から変えたいけど……」
そこまで聞くとロルフは微笑みながら頷いた。
私も微笑めた。
近くの森を散歩していた。
木漏れ日が気持ち良くて……でも、あの事が頭からこびりついて離れない。
皆ともう、会えない……
「もうそろそろ、休憩にしない? サンドウィッチ作ってみたんだけど……」
でも、ロルフは硬直して何も動かなかった。金色の髪が風になびいて、ロルフの青い瞳が滲んで、頰に涙の川が流れている。
「ロルフ……? ここに、何があるの?」
私の言葉が聞こえないのだろう。過呼吸のように口を手で抑えて、息も荒くなって、瞬きも多い。
私は無言で彼の背中をさすった。
怖いの? 何かトラウマ……
「大丈夫。大丈夫だから」
私、何言ってるんだろう? 大丈夫じゃ無いけど……でも、そういってあげたいだけなんだ。分かってる。
でも、ここに何が……? いくら思い出そうとしても、分からない。
ロルフ。ごめんなさい。私が無理を言った所為で……
遂には、顔色を悪くして過呼吸のまま倒れた。
しばらくはうなされていたけれど少しすると、呼吸も落ち着いてきて、血色も戻ってきた。
「……ん……アニカ?」
「良かった。ゴメンね。こんな運命を背負わせて……疲れてるのに、無理を言って、また貴方を傷つけた」
「いいや。これは、昔の僕の問題なんだよ」
「……もう少し休んでて。無理は言わないから」
ロルフは私の横で頷いた。
コメント
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第75話、読み終えました……。幽霊の皆さんとのお別れが本当に切なくて、ロルフの「また会えるよね?」に胸がぎゅっとなりました。アニカが自分のせいだと責める場面も、ロルフの過呼吸のシーンも、お互いを思いやる気持ちが痛いほど伝わってきて、涙が止まりませんでした。二人の散歩が少しでも癒しになりますように。次が気になります。
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