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微妙にhbr愛され
ご本人様とは関係ありません。
僕らは親友だ。
だから、どんな痛みも悲しみも共有してきた。
4人で、ライバー活動をしようとオーディションに応募する。
結果は見事合格。
晴れてライバーとなった。
彼の歌がうまいことはすぐに知れ渡った。
それを褒める人もいれば妬む人もいた。
それでも彼は前向きに捉えていた。
年月を重ねるにつれ、大きなステージで歌ったり。
彼に対する歌のプレッシャーはどんどん強くなっていった。
アンチもいる。
期待が大きすぎるやつもいる。
彼は僕にそのことを相談しては泣いた。
僕はそんな彼に当たり障りのないことしか言えなかった。
大丈夫だとか、見返してやろうとか。
だから、それがいけなかったのか。
僕らは親友だった。
今、目の前の状況を理解するためにそれを悟った。
―――――
「なに、しようとしてるの?雲雀…。」
彼は屋上の縁に立っていた。
そこに落下防止の柵はなく、風が吹けば落ちてしまいそうだ。
そして、落ちてしまえば死んでしまう高さがあった。
僕の姿をみて、彼は悲しそうに笑った。
僕は、扉から一歩進んだところから動けなかった。
「何って…何もせんよ?」
あいもかわらず下手くそな嘘。
ねぇ、なんで。
その言葉は声にならない。
でも彼には伝わったのか、彼はまた笑った。
「俺は歌うことが好きだ。
アンチがいようが、声が出なくなろうがそれは変わらない。
けど、あまりに期待が大きすぎる。
それはきっとありがたいことで嬉しいけれど、俺には毒だ。
それも、死ぬまで気が付かない甘ぁい毒。
もう、疲れたんだ。
俺は潰されたくない。
だから、この手で。」
強く風が吹いた。
彼の体がぐらりと傾く。僕はその姿に見惚れて動けなかった。
後ろで扉が勢いよく開く。
落ちていく彼を掴んだのはアキラだった。
「っ!!たらい!!!!」
「あぇ、アキラ…?なん、で、死なせてよ…。」
「死なせるわけないでしょう!!この馬鹿!」
「そう、だよ。俺は馬鹿だ。」
「わかってるなら生きなさい!!」
「でももう、疲れたんだ。期待も、嫉妬も、妬みも。だから。
「あなたが!!!!」
彼の言葉を遮ってアキラが叫んだ。
「あなたが歌えなかろうが上手かろうが。馬鹿だろうが天才だろうが。そんなことはどうでもいい!!わたしは、渡会雲雀だから!!だから、いっしょにいたいと!未来を歩みたいと!そう思えた。」
「でも俺は…」
「あなたが何を持っていようが関係ないんです。その、人間性を好きになったのですから。」
「…っ、」
彼の顔が小さく歪む。
落ちかけている彼の体を下の階から誰かが抱きしめた。
「ターゲット確保、なんてね。」
「セラ!」
「ねぇ、雲雀。ナギちゃんもいってたけど俺達は雲雀が何であろうが関係ないんだよ。」
セラフは諭すように、慰めるようにそういう。
「雲雀にこれをいったら嫌がるかもしれないけど、俺は雲雀に出会えて本当に良かったんだ。オレに感状を与えてくれた。優しさをくれた。雲雀が疲れちゃったのなら俺が全部受け止めるよ。辛いことも、苦しいことも。それが今の俺にできる雲雀への恩返しだから。」
まるで告白みたいだとぼんやり思った。
こんな状況なのに僕の体はまるで石のように動かない。
「ボサッとしてないでなにか言ったらどうなんです?」
「そうだよ、雲雀が聞きたいのは他でもないあんたの言葉だよ?」
「だからはやく」
「動けよ」
「「リーダー!!」」
二人の声に押されるようにして足が動き始める。
一歩一歩ゆっくりと、でもたしかに進んでいく。
「雲雀。」
彼の体がビクリと揺れたように見えた。
「僕は、お前がそんなに追い詰められているなんて知らなかった。いや、気付いていたけど気付かないふりをしていたんだ。巻き込まれたくなかったから善人でありたかったから。僕は最低だ。ちがう、後悔したいんじゃない。俺は」
その言葉を言うため、息を大きく吸う。
「俺は、お前と、雲雀と一緒に、未来へ歩んでいきたい」
彼の手を掴み、上へ引き上げようとする。
一人から二人。
二人から三人に。
力が足らなくってすぐに上には上がってこない。
セラフが下から持ち上げて。
アキラと僕が上から引っ張って。
引き摺られるようにして彼の体が屋上へ上がった。
「ハァッ、ハァ…。」
息が切れていた。
ただ疲れているだけだはない。
恐怖、後悔、怒り、悲しみ、そして安堵が一気に襲ってきたのだ。
「雲雀!!」
セラフも屋上に登ってきて、三人から四人になる。
「俺、は」
彼が小さな声で言った。
「歌えないと価値がないんじゃないの?誰かを楽しませなくちゃ、笑顔にさせなきゃいけないんじゃないの…?」
「そんなのがなくても俺は、僕は雲雀と一緒にいたい。」
彼の目からハラハラと涙がこぼれ落ちる。
そんな彼をセラフが抱きしめ、アキラが手を握った。
「俺、お前らとならうまくやれそうな気がするよ。期待も、嫉妬も怖いけどさ。でもなんか今、死ななくてよかったって安心してるんだ。」
僕らは親友になった。
これからどんな物語になるのかはまだわからない。
けれど、一つ確かなのは。
僕らが親友であることはこれからも変わらないだろう。