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「ヒロくん、大丈夫だからね。るなちゃんがずっとそばにいるから」
るなちゃんは、熱を出したヒロくんを優しく抱きしめ、額に冷えピタを貼ってあげた。幼いヒロくんは不安げにるなちゃんの服をぎゅっと握りしめている。
「体温、もう一回測ってみようか」 なお兄が冷静に体温計を手渡すと、るなちゃんはヒロくんの脇にそっと差し込んだ。その間にも、じゃっぴは慌てて熱冷ましになりそうなものを探しにキッチンへ向かっていた。
「水とか、飲めるかな?」 じゃっぴがコップに入れた水を差し出すと、ヒロくんは小さな口でちびちびと飲み始めた。
そんな緊迫した空気が流れる中、もう一つの異変が起こった。
「あの…えとさ…、あ、なお兄…」
どぬがもじもじしながら、なお兄の袖を引いた。なお兄がヒロくんから視線を外し、どぬの方を見ると、どぬは顔を真っ赤にして、今にも泣き出しそうな顔で足を組み合わせていた。
「トイレ…行きたい…」
その声に、なお兄は思わず頭を抱えたくなった。ヒロくんの体調不良で手いっぱいの状況での、まさかの再度のトイレハプニングだ。しかも、昨日のゆあんくんの件があるだけに、何としてでも間に合わせなければという焦りが募る。
「今すぐ行くぞ!どぬ!」 なお兄はどぬの手を強く握り、トイレへと急いだ。じゃっぴも、どぬの様子に気づき、「おいおいマジかよ!?」と焦りの声を上げながらも、ヒロくんの隣にいるるなちゃんに「るなちゃん、ヒロくんのこと頼んだぞ!」と声をかける。
るなちゃんは、ヒロくんを抱きかかえたまま、緊迫した状況をじっと見守っていた。幼いヒロくんも、どぬの異変に気づいたのか、不安げな表情で二人を見送っている。
「間に合うか…!?」
なお兄はどぬを連れて、廊下を走る。一刻も早くトイレにたどり着くことだけを考えていた。どぬも必死でついてこようとするが、小さな足ではなかなか追いつかない。
そして、トイレのドアが見えた、その瞬間だった。
「うぅ…!」
どぬから、小さな呻き声が漏れた。なお兄が慌ててどぬのズボンを見ると、じんわりと小さな染みが広がっている。
「どぬっ!」 なお兄はすぐにどぬを抱き上げ、個室に駆け込んだ。ぎりぎり間に合った部分もあったものの、結局、どぬも少しだけ失敗してしまったのだった。
「ごめんなさい…」 どぬはシュンとした顔で、なお兄に謝る。
「大丈夫だよ、どぬ。よく頑張ったな」 なお兄は、幼いどぬの頭を優しく撫で、着替えを探しに行く。今日は学校が休みで、偶然にも着替えの当番がいなかったのが幸いだった。どぬを連れてリビングに戻ると、じゃっぴがるなちゃんからヒロくんの体温計を受け取っていた。
「ヒロくんの熱、少し下がってるみたいだ」 じゃっぴの声に、その場の誰もが安堵の息を漏らした。ヒロくんはまだ少しぐったりしているものの、顔色は先ほどよりは良いように見える。
一難去ってまた一難。予測不能な事態が次々と起こるシェアハウスでの生活は、彼らにとって大きな試練となっていた。果たして、この慌ただしい日々はいつまで続くのだろうか。そして、彼らは無事にこの困難を乗り越えることができるのだろうか。