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お昼休み。
12時回るとすぐに樹に少しでも会える時間が欲しくて、すぐに屋上へ向かう。
だけど、広い屋上に樹の姿は見当たらなくて、しばらく辺りを見回す。
そっか、まだか。
ちょっと仕事長引いてるのかな。
まだ来ない樹を待ちながら、フェンス越しに屋上からの景色を眺める。
気持ちいいなーこの場所。
ちょっと悩んだ時とか確かにこの空の下この景色見れると気分晴れるかも。
なんか不思議だよなぁ。
ずっといたこの会社なのに、場所が変わるとまた違う見方が出来るんだなぁ。
にしてもREIジュエリーの看板もホントよく見える。
こんな広い景色の中で、あの看板はやっぱ目に飛び込んできて、ふとずっと見つめてしまう。
そっか。
なんか樹もそんな感じだな・・。
ずっといた会社の中で、意識するといつだって樹しか目に入らなくなる。
こんなに広い世界の中、こんなにたくさんの人がいるのに。
それまでは同じ世界の中で、会社でも、美咲の店でも、きっとどこかしらですれ違っていたはずなのに。
その頃の私は気付くことが出来なくて。
なのに。樹はホントよくこんなたくさんの中で私を見つけてくれたなぁ。
あのREIジュエリーの看板も、ずっと創業当時から変わらずあの場所にあるって言ってたっけ。
随分年月が経ってるのに、今でもデザインもオシャレで全然色褪せないな。
やっぱ目を引く素敵な看板。
この景色もきっと新しい建物が建ったり、看板が変わったり、きっと随分変わっていってるはずなのに。
あの看板だけはあのままずっとあそこに存在し続けるのって素敵だな。
社長とREI社長の関係にやっぱりふと重ねてしまう。
こんなにずっと何年も存在し続けて、そしてそれを見続けて、きっと唯一この場所とあの場所でその関係性だけはずっと変わらず生き続いている。
それってなかなか出来ることで出来ないことだよな。
どちらの会社も二人の熱い思いと力があるからこそ、どちらもそこに存在し続けられること。
私と樹もいつかそんな関係になれるだろうか。
何があっても、周りの環境はどんなに変わっても、流されることなく変わることなく、同じ気持ちのままで二人で存在し続けられるだろうか。
お互い何があっても想い続けていられるだろうか。
私は何があっても樹のそんな存在としてい続けられるだろうか。
「お待たせ」
すると背中越しにフワッと樹のつけた香水の香りがして、後ろから抱き締められる。
振り向くと、やっぱり樹だ。
「透子。何考えてたの?」
「ん?こんな広い世界の中でよく樹が私を見つけてくれたなぁって考えてた」
「は?何それ(笑)」
「この景色見てたらそう思うよ樹も」
「オレはそうは思わない」
「え?」
「だってオレはどんな場所でどんなにたくさんの人がいても、きっと透子を見つけだしたから」
「そっか」
「きっとオレたちはどんなことがあってもお互い引き寄せられるから」
「うん。そだね」
うん。これからもそうであると信じよう。
どんなことがあってもまた引き寄せられる二人でいられるように。
「何?どしたの?透子。急に。朝はなんともなかったのに」
「ん?なんともないよ。たまたまそんな風に思っただけ」
「そっ・・?ならいいけど」
「さっ、お昼食べよっか?ちゃんとお弁当持って来た?」
「もちろん。めちゃ周りのヤツに自慢しながら持って来た」
「やだ~そんなことしなくていいよ~」
「愛妻弁当だって見せつけてきた」
「・・・まだ妻じゃないよ・・」
「あーそっか。まぁもうすぐそうなるワケだし。同じでしょ」
そっか。そういう気持ちではまだいてくれてるんだ。
その言葉を樹から聞いてちょっとホッとする。