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彼の手の平で私は文字を書いた。
“まってて”
「….まってて?」
不安気な声で確かめを問う。
私はもう一度同じ言葉を手の平でゆっくりと書いた。
「今度は俺が待つよ」
その声は先程と比べて晴れやかだった。
その様子に私は胸をなでおろした。
声が出ないというわけではなくて、声が出にくいって言えばいいのだろうか。
リハビリや通院をすれば次第に声が出せれるようにはなるって医者には言われたけど、私は声を出せれなくなった事実に酷く取り乱して、リハビリをする事ができなかった。それからずるずる引きづって今に至る。
現実逃避はそろそろ終わるか。待っててって言っちゃったし。
今まで声は出さなくていいって思ってた。だって必要とは思わなかったし、空とも連絡がこのままつかないって少しは諦めていたから。だからいいやって。
でも。今日彼をみて思った。今の私では何も支えることは出来ないけど、でも支えたいとおもった。そのために私は声を出さないといけない。たとえそれが何年かかっても。
“まってて”
空が待ってくれるなら私は頑張れる。そう思った。
そのあと空の話を聞いて、しばらくすると空の友人が迎えに来た。
友人は私を見ると「良かった」ってホッとしたような表情で言った。友人は空のことをかなり知ってるみたいで何かと気にかけてくれたみたいだ。彼は一人じゃなかった事にほっとした。そして 少しだけ話を交わして今日はそれで終わった。
夕焼けを見ながら足を進めていく。それは重くなく軽々しく歩いていた。
いつ会えるかはまだわからないけど、きっと必ず再会できると確信した。もう離れ離れの状況じゃないのだ。前はいつ会えるか分からない状況にかなり不安で泣いた事もあったけど今はそういう感情はなくて安心できていた。
きっと空もそうだろう。
「____」
声を出してみたけど、やはり声は出なかった。
それでもその表情は明るく見えていた。