テラーノベル
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私がここにきて二週間。ニーナやルシフが色々教えてくれたりして、ここの暮らしもだいぶ慣れてきた。
たまにペンさんは、仕事と言ってフラフラと何処かへ行って、クタクタになって帰ってくる。
水でも被ったのか全身びしょびしょになって帰ってきた時は驚いた。
「シロ、あれを持ってきてくれ」
「はーい」
薬をつくる釜に向かっている時のペンさんは真剣そのものだ。
そこまでして、動物になりたいのかなぁ?
「シロ、味見」
「お断りします」
「む……」
そして、失敗の繰り返し。
「また、行ってくる」
「いってらっしゃい」
ペンさんは、また何処かへ出掛けてしまった。
「今日は、帰れないかもしれない。ノックがあっても開けるな」
そう言い残して。
この家には普段使う出入り口が三つある。
一つは庭に出るためのもの。
もう一つは、ニーナ達の村に繋がっているもの。
そして、もう一つは、ペンさんが仕事の時に通る。
「ニーニャ達でも?」
「誰でもだ。庭はでてもいい」
こくりと私は頷いた。
「じゃあ、行ってくる」
出ようとした時、くるりとターンして戻ってきた。どうしたんだろう?
「これを――」
そういって、何かを首にかけられた。これは、鈴?
かけ終わると、ペンさんは仕事用の扉をあけて出掛けていった。
首輪をつけられた猫……になってしまった。
私はあくまでペットか使い魔って見られてるのかなぁ?
後片付けや掃除をしていると、何処かで聞いた声がした。
「ねぇ、いつまでそこでそうやってるの?」
「え……?」
「はやくしないと、あっちの世界に戻れなくなるよ?」
「え?!」
期限があるの? そんなこと聞いてない。
「期限は1ヶ月だよ。あぁ、まあ戻るって言っても新しい命として生まれ変わるんだけどね」
…………。とても酷い宣告を受けた。
もう私は、もとの世界にもどっても莉愛ではない。つまり、あちらの世界の私はもういない、ということ?
「そうだね」
そっか……。そっか……。
涙が止めどなく流れる。戻ったところで、私はもう私ではなくなる。それなら――。
ドンドンドン
ニーナ達の村に繋がっている扉が大きな音をたてて叩かれている。
「ペンドラゴン! ここを開けろ!」
ドンドンドンドンドンドンドンドン
何度も何度も叩かれる。怖い。どうしたらいいの……。
ドンドンドンドンドンドンドンドン
音は響き続ける。何度か叩く音が響いた後、突然止まり、静かになった。
「ペンパパ……」
かすれるようなルシフの声が聞こえた。
「いたいよぉ……助けて…………」
扉の向こうで、何が起こっているの?
「シロお姉ちゃん……」
ペンさんは開けちゃダメって……、でも!!
ルシフが、助けてって。呼んでる!
私はニーナ達の村に行く扉に手を伸ばした。
私は、ノブに手を掛けて扉を開ける。少しだけ動かした途端、グイッと強い力で扉を開かれた。
「誰?!」
知らない顔の男の人が沢山いる。
「そりゃ、こっちのセリフだぜ。アイツ、メスの獣人なんて飼ってやがったのか。うちの娘をコケにしやがったのは、こいつのせいか?」
何のこと?
「シロちゃん……」
「ニーニャさん! ルシフ君!」
二人が縄で縛られていて、顔や、手が腫れているように見える。何が起こっているの?
「ペンドラゴンは留守か、ならこいつも捕まえておくか。人質は多い方がいいだろう」
私は、本能的にヤバい気がして、扉を足で蹴り閉めた。
「コイツ! せっかくヤツの根城に繋がった扉を!」
「風の精霊よ!」
私は風の精霊を呼び、ルシフ達のところに跳んだ。
「させるか!」
男達がスラリと剣を抜いていく。
どうしよう、私は何も持っていない。でも!
男達の剣をくぐり抜け走り続ける。頬や足に剣先を引っかけながら。
赤い傷が何本も私の身体に線を引く。
「ニーニャ――」
手が届くかどうかというところで、私は髪を掴まれ、剣の柄でみぞおちを殴られた。
「か……はっ……」
「シロちゃん!」「お姉ちゃん!」
二人の叫び声が聞こえる。
ごめんなさい、助けてあげられなくて、ごめんなさい。
意識が遠くなる。
ちゃんと、言うこと聞かなくてごめんなさい。ペンさん。
ぼやりと視界が薄れていく時、ここにいないはずの彼の姿が見えた気がした。
ーーー
ゆらゆらと、ゆりかごにのって揺られているみたい。ふわりと私は何処かにおろされた。
何だろう。とっても暖かい。
ずきずきしていた頬や足、みぞおちの痛みが引いていく。
「シロ、大丈夫か」
いつもの声がする。あれ、帰ってきたのかな?
「お帰りにゃさい、ペンさん」
「あ、あぁ、ただいま」
「ごめんにゃさい、扉、開けちゃった」
「……」
「そうだ、ニーニャさん、ルシフ君!」
私ははっきりと覚醒し、先程のことを思い出した。
「大丈夫だ。二人は別室にいる」
「あの人たちは……」
ぎゅっと、ペンさんが私を抱き締めた。
「もう、大丈夫だから気にするな。……すまない、俺の薬のせいで。動物だったらこんな怖い思いをせずに済んだのにな」
「ペンさん、あの……?」
「動物に戻す薬を急いで作らないと――」
「ペンさん!」
私はベリッとペンさんから離れる。
「私は別に動物に戻りたいなんておもってにゃい」
ペンさんは、とても驚いた顔をしていた。
「しかし、人間は残酷だぞ? 今日のようなことは日常茶飯事だ。つまらない生き物だ」
「ペンさんが動物ににゃりたいのはそのせい?」
ピクリとペンさんは反応する。
もしかして、ビンゴだったり?
「人間に嫌気がしてるの?」
「……」
「ニーニャ達みたいな人だっているよ!」
「シロ、お前は本当に、猫なのか?」
ペンさんの手が、私の頬にのびてきた。
いつの間にか、涙を流していたようだ。グイッと目元を拭われる。
「私は、人間だよ! 私は――」
でも、もう人間の莉愛はいない。何処にもいないのだ。ここにいる私は、ただの莉愛の残骸。
元の世界に帰っても、別の何かに変わってしまう。そう、莉愛はもう……。
ポロポロポロポロと、涙が止まらない。
私は、人間?
ポスンと、抱き寄せられ、頭がペンさんの胸に当たる。
「怖い目にあって混乱しているんだろう」
ポンポンと頭を撫でられた。
「何か、あるみたいだが落ち着いてから話せ。今は泣くだけ泣いていいから」
わぁぁぁぁん
と、ペンさんの服に私は大量の涙と鼻水を擦り付けた。
コメント
1件
うわあああん😭💦💦 今回めっちゃ重かったね…!シロちゃんがぶん殴られるところとか心臓止まるかと思ったよ…。でもペンさんが帰ってきて「ただいま」って言ったところ、涙腺崩壊した😢 ペンさんが「人間嫌い」な理由もチラ見えして胸がギュッてなった…。ニーニャとルシフの無事も確認できてホッとしたけど、まだまだ謎がたくさんだね!続きすごく気になるよ🔥
成瀬りん
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瀬尾早水
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しめさば
8,598
花月夜れん
361
#偽装恋人