足元のアスファルトは冷たく、震える膝に突き刺さるようだった。わたしの中で「消える」という言葉が何度も反響する。
スマホを握りしめた手は汗で濡れている。
通知がまた鳴った。
――「明日の夜、屋上で。彼を試すの。」
屋上。
なぜそんな場所を指定するのか考えるよりも先に、心臓が高鳴った。
“屋上で待っていれば、彼が来てくれる”
そのイメージだけが甘く頭を支配していく。
ベッドに腰を下ろし、わたしは何度も彼の名前を呟いた。
「来てくれるよね……来てくれるよね……」
夜は長く、眠れなかった。
スマホの画面を見つめていると、時刻だけが無情に進んでいく。
そして翌日。
指定された時間、屋上のドアを押し開ける。
冷たい風が頬を打ち、街のネオンが遥か下で瞬いていた。
スマホが震える。
画面には、ただひとつの短いメッセージ。
――「もう、準備はできた?」
指がかすかに震える。
返事を打とうとしたとき、背後でドアが開く音がした。
振り返った。
でもそこにいたのはーーー
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