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電話はスクールの事務局からだった。

私はこのスクール所属でどの大会にもエントリーしている。


‘代表の辞退を正式にしないと、別の人が世界大会エントリー出来ないんです。大変な時にこんな連絡で申し訳ないのですが…本当に申し訳ないんだけど…’

「っ…はい…早い方が…いいことは分かるので…世界大会………辞退します。手続き…よろしく……お願いします…」


声が震えたけれど、よく知った事務局さんが先に泣いているので涙は出ないね。


「才花さん、つらいですよね。あんなに…人生の全てを世界大会に捧げてたのに…私もすっごく悔しいっ」

「香の気持ちは分かるけど、一番悔しいのは才花ちゃんだからね」


やっぱりどうでもいい。


自分で考えて、選んで、努力して歩んできたはずの道の先には世界大会優勝を見ていたのに、今は……やたらと人の感情ばかりが見えて目を逸らしたくなる。


私は体をずらして横になると、頭まですっぽりと布団を被った。


「タク、退院」

「オーケー、羅依。才花ちゃん、すぐに手続きしような。帰りの服ある?」


どうでもいい。


タクが出て行く気配を感じながら、喉が渇いたと思う。

でもいいや…もう私には……水さえ必要ない気がする。

生きていても意味がないんだから。


「木村さん、今のお二人の言葉も才花を追い詰めるだけです。才花の気持ちをどこに向けてやりたいんですか?考えなしに接するのは、才花へナイフを向けているのと同じことです」


羅依の冷たい声には彼の感情が見えない。

だから今の私は、羅依の言葉に納得したり反応できるのだと思う。


「でも藤堂さん。父も私も才花さんを家族のように大切に思っているんです」

「それが?」

「えっ……?」

「そんなもの、口に出してアピールしなきゃいけない時点でまがい物だ」


その羅依の言葉に‘それだ’と気づきがあり、少しすっきりとする自分がいて、性格悪いな…と我ながら思う。


香さんから‘家族’というワードが飛び出すたびに、違和感を感じるんだ。

これまで特に嫌われているとも感じていないけれど、家族という雰囲気を感じたこともない。

だからしーちゃんと約束の食事には行くけれど、この2年間で1泊もせずに自分のアパートに帰っている。


「羅依、俺のスマホ充電切れた。すぐ岡久さんに電話して。才花ちゃんの診察を受けてもらえるように話をつけてしまえば、ここのMRI画像データを使えるようにして退院」


戻ったタクの声にそっと布団から顔を出すと


「退院しような、才花ちゃん」


とタクが笑う。

私はベッド近くにあるローチェストを指差し、上にあるマルチ充電器を教えた。


「あ、使お。車に充電器はあるんだけどね」

「もしもし岡久先生、藤堂です。お忙しいところ申し訳ないのですが、一人、先生に診て頂きたい…前十字靱帯損傷…断裂でなく損傷ですが手術と言われている…膝崩れ?…ああ、待って。今ここにいるので…他にケガもあって入院してるけど、あとは靱帯だけだから退院した方がいいと思って…はい」


羅依は私を見ると


「膝崩れがあるか?と、スポーツ診療科の先生が聞いてる」

「膝崩れって…抜けたような?外れる感覚?」

「先生、聞こえた?…才花、それがあるか?」

「ある」

「ある…分かりました。総合病院でMRI画像データがもらえるんで…はい。お願いします」


先生と話しながら、私を睨み付け始めた。

何……?


「才花」

「…怖いんだけど?…なに……?」

「お前、喉渇いてるだろ?」

Kingの寵愛 ~一夜のお仕事だったのに…捕獲されたの?~

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コメント

1

ユーザー

辛い電話内容で、よく言ったと思うよ😭相手に先に泣かれるの…才花ちゃんは泣いた?泣けてないよね?ちょっと心配😥 なのに、香さんってやっぱり❌だわ〜⤵︎⤵︎才花ちゃん、どうでもいいね。ってどうでもいいとしちゃいけない人かも💦優しい子ぶってどうにか羅依達とお近づきになりたいの!が見え見えだし。 退院しよ!羅依達と!でも羅依、才花ちゃんなんにも口にしてなくて喉も渇いてることよくわかったね?

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