⚠学パロ
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もう、遊べる月は今月だけ。
2、3月は駄目だ。
精一杯やってやる。
「遊びに行こう。」
俺は勇気を出してレトさんに言った。
そうすると、レトさんは間抜けな顔をして
「いいよ。いつ?」
と、一言だけ言ってあっさりと了承してくれた。
「んじゃ、来週の日曜日。ど?」
「多分行けるわ。」
「おけ。」
いつもの会話なはずなのに、気分がかなり上がってしまう。
なるほど。恋する乙女よ、完璧にお前らの気持ちが分かったぞ。
そうして俺はそこから来週の日曜日までぼけーっと右から左へと授業の内容を流しながら過ごす日々が続いた。
だって、これが高校で最後の大好きな人とのお出かけかもしれないじゃん。
俺はその日を楽しみたいだけだ。
ーーー
当日の朝。目覚ましを珍しくかけていたがその必要もなく、目覚ましが鳴る前に俺は目覚めていた。
なんだよ俺。前の夏祭りの時よりも楽しみにしてんじゃん。
「ふはっ」と一人静かな部屋に息を吐くような乾いた笑いを零して支度を始める。
適当にクローゼットを漁っていたら出てきた服。ジーパン。そしてお気に入りの白いキャップ。そこに軽めのリュックを背負う。
まだ早い気もするがまぁ、いいだろう。
母親に何時もよりも早い時間で驚かれたが俺は「行って来ます。」と言って家を出た。
ーーー
9:50
ヤバイ。気持っち悪いほどに早く着いてしまった。後10分もある…
待ち合わせ場所に思いのほか早く着いてしまい待ち時間をどう使おうかと悩む。
だが、その考え事も全てパーだ。
レトさんが来た。間違いない。
「えぇ……また、早いのぉ………?」
ジトーッとにらみをきかせてこちらを見てくる。
「ふふんっ。改心したんですよ。」
そう言ってドヤ顔を思いっきり見せつける。
「……そういうことにしといてやるよ。」
何時もよりも少しだけ俺に甘いデレているレトさん。顔は不服そうな顔をしているんだけどね。
会っただけでも気付いてしまうことが沢山ある。あぁ、飽きないなぁ。
「ほら、行くぞ。」
「うん。」
ーーー
「……久々に来たかも…」
レトさんが目を大きく見開いてそう告げる。
遊園地なんてなかなか行く機会がないからだろう。
「全制覇してやろうぜ!」
「キヨ君。無茶言うな。」
「これ行きたい!」
「え、これ?」
レトさんが指をさして言ったのはお化け屋敷の様だった。
「うん。面白そう。」
あまりにも楽しそうに言う物なので最初はお化け屋敷に行くことにした。
「ぅわっ!スッゴ!」
「こっちも凄いよ!」
二人で完成度の感想を述べあい、驚かしてくる物には笑って。まるで、お化け屋敷にいないようだった。
「あぁー、面白かった。」
「ね?言ったでしょ?面白そうだって。」
「うん。まぁ、ぐうの音も出ないわ。」
手をひらひらさせてそう答えながら、次の所へ向かった。
「これに、乗りましょう。」
「……え?」
俺が言ったのはジェットコースター。ザ・定番。これに乗らないと始まんない。
「嫌…なんですけど。」
「一回だけ!一回だけ!」
「…えー……一回だけね…」
心底嫌そうな顔をして渋々のってくれることになった。
「いえーーーーーーーーい!!」
「あああああああああああああああ!?!?」
泣きそうな声で叫び、隣の男は目をつぶっている。しかも、足をバタバタさせて。
絶叫系に乗っているはずなのにほんのりと可愛いと思ってしまう自分がいる。
えぇい!消えてしまえ!今はこれに集中するのみだ!
「………………………もう、無理です。」
撃沈した重々しい雰囲気を身にまとってぐたーっとのびてしまっている。
「まだ始まったばっかですよ?」
「…………かえ………」
「ん?」
「帰りに、お土産、俺の分……お前の金で買え……」
「はいはい。だから行こっか。」
「…………………」
ーーー
そこからというもの俺たちはいろいろの場所を回った。ほとんど乗ったんじゃね?
最後のお土産売り場。
お菓子はもちろん、ぬいぐるみやキーホルダー。なかにはペンライトなんて物も売ってあった。
「で?レトさんどれ欲しいの?」
「…うーん。あんなこと言ったけどなぁ…」
「じゃあ俺は買わないって事で……」
「そんなのは言ってない。」
それから黙りこくってしまったレトさんは「あ」と目の前の物を見て目をキラキラさせた。
「これがいい。」
「……?」
手に持っていたのはここの遊園地のイメージカラーが差し色として入っている銀色を基調とした指輪だった。
「なんで?」
「なんとなくかなぁ。お洒落に目覚めたのよ。お、しゃ、れ、にね。」
自慢げにそう答えるが、疑問が湧き出て止まらなかった。
てっきり蟹のとか選ぶと思っていたのに俺のおかげで目覚めたお洒落の方向に走っていった。
嬉しい気持ちが半分。本当にそれでいいのかと思う気持ち半分でその指輪を受け取り、レジの方へと向かった。
ーーー
夕暮れ時になり、これが夏だったらと思ってしまう。
だって、夏なら夕暮れも遅いじゃないか。
今日が終わってしまう。多分最後になるであろう。高校三年での二人で遊ぶ日は。
話せる話題も今日に限って何もなくただただ家へと向かっているだけだった。
「ね、キヨ君。」
不意に呼ばれた。
隣に目をやると俺よりも10cmほど小さい彼がこちらを向いていた。
「はい。これあげるよ。」
俺の手にぽとりと落ちたそれはさっき買ってあげた指輪だった。
「…これ、俺が買ったんだけど?」
「俺が選んだから。れっきとしたプレゼント。交換かもしれないけどね。」
そう言って軽く笑う彼が夕焼けと重なった。
俺にはもったいないくらい、息を呑むくらい綺麗だった。
レトさんは俺へ渡すために手をこちらへとやって、そのとき
ふわりとブレスレットと指輪が照らされた。
ーーー
次回最終回かもです。
コメント
6件
めっちゃ楽しみにしてます!
最終回!?Σ(゜ω゜)楽しみにしてます!