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「ひぃ!たたたた助けてくれ!」
正の目がひん剥き丸くなった、顔面蒼白になっている
「北斗さん!北斗さん!お願い!早まらないでっっ」
アリスも慌てて北斗の腰にすがりついた、ガクガク震え、叫ぶ声は恐怖で悲鳴に近い
「二度と俺の妻に不届きな真似を出来ないようにお前の玉をたたっ斬る!お前の父親にもそう伝えろ!お前が俺を怒らせたとな!金輪際取引は終わりだ!お前の所の人間はうちの敷地には入らせない!」
「わっ・・・わかった!わかったよ!許してくれ!北斗ぉ~・・・ 」
正は怒りで尋常じゃない北斗とアリスを交互に見て、そのまま転がるように屋敷を離れると、軽トラックに乗り込み、砂利をはね飛ばして走り去って行った
北斗はくるりと振り向いて真剣を放り投げ、泣いているアリスを抱きしめた、いまだ冷めやらぬ怒りに身体が燃えている
「なにもされなかったかい?」
「北斗さん!北斗さん 」
アリスも必死で北斗の首にしがみついた
北斗がアリスを抱き上げてリビングに入り、革張りのソファーに座った。膝の上でまだアリスが泣きながら震えている
「こ・・・怖かった・・・あの人が変な目で私の事を見て・・逃げたんだけど・・ 」
「他には?何も?」
アリスは目を閉じ、北斗の香りを吸い込んでなんとか落ち着こうとした
清潔な・・・柔軟剤と太陽の匂いがする。彼に抱かれていれば怖くない、でも・・・
「お・・・お仕事の関係の人?」
「高校の同級生でね、あいつの親との付き合いで、時々馬を貸していたんだけど、昔から虫が好かなかったんだ、せいせいしたよアイツはクズだ 」
「ひ・・ひ・・人殺しはダメよ!」
ポロポロ涙を流しながらアリスは訴える、北斗は優しく微笑んで、アリスの涙を拭った
「本物じゃないからあれで人を斬れないよ、でもアイツを殺しても全然よかったけどな」
「ほ・・本物じゃ・・ない・・・」
「ああ、小さい頃あれでおやじに脅されてた、大人になって偽物だと分かったけど捨てれなくてね」
そうだったのね・・・・
あの刀が本物ではないと聞いて、アリスはホッとした、それにしてもあの時の彼は鬼気迫るものがあり、とても恐ろしかった
「・・・私もいけなかったの・・・北斗さんの知り合いだと思って・・・軽く家に入れてしまったから・・・ 」
北斗が顔をしかめる
「そんなバカなことがあるもんか、嫌がる女性に手を出すなんて、ましてや君は俺の妻だ!アイツはそれを知っている 」
アリスが口元に手を持っていく
「でも・・・私が家に入れたことで、あの人に間違ったメッセージを、伝えてしまったかもしれない・・・」
アリスは若気の至りの苦い思い出を思い出していた
上流階級では独身の若い女性は、絶対男性と二人っきりになってはいけなかった
どこで勘違いされるかわからないし、誰の目があるかもわからない、上流階級の人間にとって何より自分の評判が大事だった
なのでアリスと話がしたい独身男性は、まずお目付け役の母やその知人に申し出をし、第三者も交えて交流をする
「どうしたんだ?何か嫌な思い出でもあるのか」
「ええ・・・私が18歳の時よ・・・父の取引会社の社長家族とカクテルパーティーで、そこの御曹司を紹介されたの、私達は軽い会話をして、一緒に踊ったわ・・・ 」
「ほう・・・ 」
北斗の目が狭められ細くなった、あとでソイツが誰か聞き出して調べよう
「それで・・・テラスで風にあたらないかと言われたの、ダンスをした後だから私も熱くて、彼に連れられてバルコニーに出たわ 」
「続けて」
「そうしたらいきなりキスをしようとしてきて、私は・・彼を殴ってしまったの・・・」
しゅんとするアリスを見て北斗は目が点になった
「そして訴えられたの・・・彼の前歯は差し歯だったのよ・・・きれいにポッキリ二本折れたわ 」
北斗は堪えられず爆笑してしまった。束の間先ほどの緊張が解け、かねてから知る優しい北斗の姿を目にした
「もうっ!北斗さんったら笑い事じゃなかったのよ、もっともお祖父様はよくやったと褒めて下さったけど・・それから色々裁判とかで・・・大変だったわ、私は乱暴者の称号が付くし・・お母様には軽々しく二人っきりになった、私が悪いって・・・」
アリスがプクッとほっぺを膨らませて睨む
くっくっくっ・・・
「すまない・・・大変だった・・・そうだっただろうね辛い思いをしたね 」
「それから社交界では私は独身の男性には、近づかないようにしたし、妙な勘違いをされないように、なるべく幼くふるまうようにしたわ・・・それ以来・・・知らない男性には気をつけていたつもりなんだけど、今日はうっかり警戒心を解いてしまったみたい」
ぎゅっと北斗の首にしがみつく
「私がいけないのね・・・・私は誤解されやすいって母も言ってたわ、隙だらけで・・・ 」
北斗は低くののしってからアリスを見つめた
前回は女に殴られたぐらいで怯む様なヤツが、相手だったからよかったものの、あの正じゃ自分が来なかったらアリスはどうなっていたか
「君はひとつ忘れているぞ、男が君を見て妙な気を起こすのは、君が無意識に誘惑しているわけでも、隙だらけでもない、ただ単に君がとても美しいから男は手に入れたがるんだ」
アリスが悲しそうに首を振った
「それは・・・・嘘だわ・・・・私はブスだもの・・・いいのよ・・・そんな庇ってくれなくても 」
「まったく君の母親はどんな育て方をしたんだ!こんな美しい娘に何を求めていたんだ 」
「母は・・・・私に完璧であってほしかったの・・・母のコピーのような人間に・・・元ミス・ユニバースの母には私はちっとも似てなくて、私は父親似で・・・ 」