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城プル
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「FORSAKEN」の空に、冷徹にして退廃的な鐘の音が響き渡る。
それは終わりなきデスゲームの開会を告げる合図であり、同時に、この呪われた箱庭が今日も何ひとつ変わらない――いや、かつてとは似ても似つかない狂った日常へと変貌を遂げたことを告げるファンファーレでもあった。
血と錆にまみれた廃線のホーム。
黒猫の獣人キラー・Gatitoは、背中に刻まれた魚の骨柄パーカーのフードを荒々しく引っ張り上げ、ダイヤモンド並みの硬度を誇る緑の大きな爪を「シャキーンッ!」と鋭く鳴らした。
その表情はいつものオラオラ系全開の怒りに満ちているが、耳の付け根や首元には、昨夜の残滓である甘やかな熱の赤みが微かに残っている。
「待てコラ、ドブネズミぃッ!! 今日こそそのふざけた白衣を引き裂いて、丸ごとミンチにしてやるから覚悟しやがれッ!」
トゲ付きの首輪と腕輪をジャラジャラと盛大に鳴らしながら、Gatitoは猛然と地を蹴って疾走する。
その逃げる先で、白い毛並みの人型ネズミ・Ratは、青いジーンズのポケットに両手を突っ込んだまま、軽やかな足取りで振り返りもせずにひらりとかわしていた。
破れた白衣の裾を舞わせ、長いピンクのしっぽを愉快そうにゆらゆらと揺らしている。
「やあやあ、おはようGatito! 今日の追跡速度は先週の平均値を5%も上回っているね。怒りの感情がアドレナリンの分泌を促進している証拠だ。……素晴らしいデータだよ!」
「データじゃねぇよバカッ! 捕まえて今すぐその余裕しゃくしゃくの面をグリグリに揉みほぐしてやるんだよ!」
「おや、それは頼もしい。それじゃあ今日の実験のメニューは決定だね。『緊縛状態における心拍変動と、過敏な首筋への愛撫による精神崩壊の相関関係』……ふふ、君がどんな可愛い声を上げるか、今から楽しみで仕方ないよ」
「ーー~~~ッッ!? 誰が可愛い声なんか上げるかぁぁぁッ!!」
殺し合いのデスゲームであるはずの空間が、いつの間にかふたりの痴話喧嘩のステージと化している。
物陰からひょっこりと顔を出した他のサバイバーたちは、その異常すぎる光景に呆れ果て、そっと身を隠すのが定番のルーティンとなっていた。
そして、そのカオスな一幕を、はるか上空の特等席から見下ろす者たちがいた。
崩れかけた尖塔の最高部。
瓦礫の上に優雅に腰掛け、赤いシルクハットの鍔を指先で軽く持ち上げながら、スペクターは愉悦に満ちた瞳を細めている。
その傍らでは、黒いハチワレ模様のMowlが、茶色のマントを風にたなびかせながら深々と溜息をついていた。
「まったく……相変わらず品のないことですね。サバイバーとキラーの分際で、あんな公衆の面前でイチャイチャと鬼ごっこに興じるなど、紳士の風上にも置けません。スペクター様、あのような規律を乱す不届き者たちは、そろそろ私がお仕置きして差し上げるべきでしょうか?」
Mowlは左目のモノクルを鋭く光らせ、不満げに毛を逆立てる。
しかし、主であるスペクターはそんなMowlの小言を面白がるように薄く笑うと、細い指先を伸ばし、Mowlの顎の下を優しく、しかし逃がさない強さでキュッとすくい上げた。
「おや、そんなに苛立つことはないだろう、Mowl」
「ひゃっ……!? スペクター様、急に何をするんですか、私は真面目に……」
スペクターの指先が、猫科獣人特有の敏感な顎下から首筋へと滑り込む。
絶妙な圧迫感と、神の絶対的な体温。
その甘い手つきに触れられた瞬間、Mowlの気高い紳士としての態度は一瞬で崩壊した。
「――っく、んぁ……っ!?」
Mowlの喉の奥から、意図に反して低く重厚な音が漏れ出す。
『ゴロゴロ……ゴロゴロ……ッ』
気位高く、常に紳士を気取っていたはずのMowlの身体が、本能的な快感の前に屈服し、自らスペクターの指にすり寄るように首を傾げてしまったのだ。
おまけに、彼の意志とは無関係に、先の白い黒尻尾がスルスルと伸びて、スペクターの足首に甘えるように絡みついていく。
「ふふ……。猫という生き物はね、気高く、素直じゃない。だからこそ、追い詰められて甘える姿が愛らしいものなんだよ。君のようにね、Mowl」
スペクターの低く艶やかな囁きに、Mowlは顔を真っ赤に染め上げ、耳をペタリと寝かせた。
「くっ……離して……ください……私は、あなたの忠実な執事で……ぁ、そこは……っ!」
「ほらね。君も、あの黒猫と本質的には何も変わらない可愛い生き物だよ」
神が君臨する冷酷で絶望的な死の箱庭。
その底辺では、ネズミと猫が互いを求め合って激しくもつれ合い、その頂点では、支配者が気まぐれな愛玩動物を愛おしそうに飼い慣らし、甘い吐息を漏らさせる。
終わりのないゲームの輪廻の中で、二対の「捕食者と恋人たち」の歪で情熱的なイチャイチャは、誰に邪魔されることもなく、この世界が続く限り永久に――狂おしいほどの熱量を伴って、いつまでも続いていくのだった。
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