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それでも、デビューが決まって、
こんな真っ暗闇だった世界から、ようやく出ていけて、あたしでも光のあたる場所に立てるんだって、
そう思ってたのに。
あたしは、デビューへの約束ごとがひとつ決まる度に、
また悪夢の中へ引き戻される思いがした──。
──デビューにあたっての、約束ごとは、全部で5つ
1 年齢を3歳詐称して、15歳で通すこと。
2 歯列を矯正すること。
3 整形して、目を大きくすること。
4 過去は、一切隠すこと。
5 全ての契約は、事務所に帰結する。
破れば、契約は即刻解除する。
あたしには、全てにおいて従うことしか許されなかった。
こんなカタチでのデビューが、心からうれしかったわけもなくて。
もう、整形をしてる時点で、あたしじゃないし。
整形なんかしたくはないと何度も訴えたけれど、「みんなしてるから」と、「それぐらいたいしたことではないから」と、事務所スタッフはそれしか答えてくれなかった。
みんなしてるからって、あたしもしなくちゃいけないのかって、
あたしも、みんなのようにしなくちゃいけないのかって、
そう思った。
そこまでしなきゃ、デビューができないのなら、本当はしたくなんてなかったけれど。
でも、デビューが決まった時点で、あたしにはもうたくさんのお金がかかっていて、簡単にやめることなんて、できなくなっていた。