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デビュー決定からは、早かったような気がする。
周りがどんどん動き出していく中で、あたしはその波にただ呑まれて、流されていった。
気がつけば、あたしはステージに立って、マイクを握っていた。
そう…きっとね、運がよかったんだろうね。
「七瀬リオ」という芸名──「七瀬」っていう、人気のアニメキャラがいて、その検索にあたしが引っかかったんだもの。
七瀬というキャラクターとの絡みで、あたしのデビュー曲のPVとか見てくれる人が増えて、いつの間にか人気が高まっていった。
だけど、今考えると、
「七瀬」っていう名前も既に、事務所が売り出すための戦略だったのかもしれないけどね。
七瀬リオというアイドルは、デビューからひとり歩きを始めて、あっという間に芸能界の階段を駆け上がっていった。
あたしじゃない、あたしが演じる、「七瀬リオ」という、アイドルが──。
イジメられてたあたしでも、リスカをしてたあたしでも、家を捨ててきたあたしでも、そのどれでもない、あたし。
あたしであって、あたしではない、アイドルの七瀬リオが、きらびやかなスポットライトを浴びて、ステージの上にはいた──。
人気は、知らないうちにネットで画像や動画が拡散され、勝手に火がついていった。
15歳のアイドルという、ただそれだけの肩書きに、ファンはいくらでも群がった。
15歳だから、いいのかもしれなかった。
本当は18歳で、もうすぐ20代にもなろうとしてるあたしでは、実際は見向きもされなかったのかもしれない。
若ければ、若いほどいいみたいな……。
たった3歳なのに、そんなに違うんだろうかと。
高まる人気に、バカみたいって、どこかで冷めてるあたしがいた。