「おかーさーん!」
「どうしたの。◯◯。」
記憶に霧がかかったみたいだ。僕の名前だけが出てこない。
「あのね。あのね。僕、これをお母さんに見せようと思って…」
そう言って母に菫を見せる僕。
「まぁ綺麗なお花。菫って言うのよ。」
「菫?お母さんと同じ名前だね。」
「そうよ。」
「お母さんの方がきれいだけどなぁ。」
「ふふっ。」
「なんで笑うの?」
「お母さんの方が綺麗?」
「うん!」
満面の笑みで質問に返す僕。それを見て少し頬を下げる母。
「じゃあ…なんでその綺麗なお母さんを見殺しにしたの?」
「うぅぅぅうぅぅぅぁぁあぁあああ!!!!」
夢か…
「はぁはぁまた。」
あの夢だ。
「あの夢って事はもう近づいてきてるのか。」
さっさと此処を出よう。
僕は支度を済ませて部屋を出た。
吹雪の部屋は隣って言ってたか。
「吹雪ー?入るぞー?」
…まだ寝てるのか。
ガチャ。
僕は思いっきりドアを開けた。
「吹雪ー?」
「……」
寝過ぎだ。
「吹雪。いい加減起きろ。」
「ん?ああ。朝?」
「あれが近づいてきてる。」
「ダークマター?早いね。何処かで人殺しが起こったと見た。」
「さっさと行くぞ。」
「ちょっと待ってよ。」
「少しだけだぞ。」
遅い。こんなに時間がかからないだろう。支度に。一体何をやってるんだ。
「遅いぞ。時間が無いのわかっているか。」
「わかってるさ。仕方ないだろう。調べ物していたから片付けが終わらないんだ。」
部屋の中が散らかっていたのはそのせいか。
「少しは手伝ってくれないのかい?」
「生憎そんなことする時間を持っていない。」
僕は本を片手に答えた。
「ひどいね。」
「それは何度と人に言われてきた。」
「それは私も知っているよ。」
「なんで男なのにいつも私口調なんだ?」
「特に理由はないよ。ただ、僕や俺よりは自分の性格にあってるからかな。」
「確かにお前が俺って言うと気持ち悪いな。」
「ひどくないかい?」
「そんなことないだろう。自分思いを率直に伝えただけだ。それよりさっさと片付けろ。」
そのあと部屋の中からドタドタと慌ただしい音が聞こえた。
「開けてくれない?」
「何故?」
「荷物が多くて手が届かないんだよ。」
「わかった。」
僕はドアを開けた。吹雪にとってはすごい勢いがあっただろう。
「いきなりだね。」
「開けろと言われたから開けた。」
「そうだね。確かに僕が開けてと頼んだ。」
「その大量の本は何処から持って来たんだ?」
「昨日、此処にある本を全部借りて来た。」
全部…
「読めたのか?」
「読めたよ。生物学と心理学の本が1番面白かったかな。」
吹雪は沢山の言語がわかる。何処かに止まる時も書類関係は吹雪を頼るしかない。」
「返しに行くのは手伝ってよ。」
「どれだ。」
ありすぎてどれかを持てばいいのかわからない。
今日は此処までにします。読んでいただいた方ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。
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