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「美咲~。いつものちょうだーい」
パーティーが終わって、今日はまだ一人になりたくなくて美咲の店へ。
「お披露目パーティーどうだった?」
「うん。よかったよ~。仕事終わらせてから行ったからちょっと疲れたけど」
「えっ、何?あんたそんな格好で行ったの!?」
「まぁね~。急遽対応しなきゃいけない案件だったから仕方なく。向こうもビックリしてたけど(笑)」
「だろうね~。でも別に正装でいつもより綺麗にしてんだから向こうも嫌な気はしないでしょ」
「ならいいんだけど。でも多分疲れたのはそれじゃないかもな、多分」
「何?まだ違う理由あんの?」
「パーティーで樹、見かけた」
「あっ・・なるほどね。だからか。で、話したの?」
「うーうん。なんか声かけること出来なかった」
「あんた・・あんなに会いたがってたのに」
「うん。そうなんだけどさ、一年だよ一年。別れてからそんなに会ってないのにさ。一回もそこから樹から会いに来る事も連絡もして来なかったのに、なんか今更声かけられなかった」
「まぁ確かに一年まるっとは長いけどさ~」
「なんかさ~もう知らない樹だったんだよね。多分私の知らないところで頑張ってるんだよ」
「でも声かけるくらい大丈夫じゃない? あんたたち別に憎み合って別れたワケじゃないし、前向きに別れたんだしさ」
「まぁ、そうなんだけど。私がまだ引きずってるのかな~!なんか今の樹の前に平気な顔して現れるなんて出来なかったんだよね~!」
美咲に伝えながら自分の不甲斐なさと勇気の無さを改めて思い返す。
「もう今更始めても仕方ないでしょ。もうお互い新しい道歩んでるワケだし」
「あんたは変わらず同じ道歩いてるけどね」
「美咲・・・そこあえて言わなかったのに~」
「ごめんごめん。ハイ、いつもの」
美咲が軽く謝りながらいつもの飲み物を出してくれる。
「ここにも全然来てないの?」
「うん。来てないね~。修ちゃんは連絡たまに取ってるみたいだけど」
「そっか・・修ちゃんにはちゃんと連絡してるんだ・・」
男同士の仲ってそういうのは関係ないから羨ましい。
私はやっぱり連絡取りにくいのかホントに一度も連絡ない。
「もう私には何の興味もないってことか~! そうだよね~!あ~あ、結婚して幸せそうにしてる姿とか見たら、さすがに私もちょっと羨ましくなってきた」
「あら。珍しい。今までそんなこと言わなかったのに」
「年齢かね~。ってかもう遅すぎだけどさ~! もう誰でもいいからそういう人探そうかな~」
「あれ?透子ちゃん。とうとう誰かパートナー欲しくなった感?」
「あっ、修ちゃん」
少しお酒入って珍しく嘆いてる私に修ちゃんが声をかけてきた。
「そうだね~。結婚したいというワケじゃなくて、仕事は相変わらずやり甲斐あるし辞めたくはないんだけど、やっぱふと心の拠り所っていうのが欲しくなるのかも」
「それ、透子、樹くんと出会った時と同じようなこと言ってるね」
「あっ、そういえばそんなこと言ってたっけ」
そっか。確かあの時もここで二次会みたいなパーティーしてて、そこで初めて樹に声かけられて樹の存在知ったんだっけ。
あの時は特定の相手も面倒だったけど、何もない平凡な日常に何か刺激が欲しくて、樹との関係がいつの間にか始まってたんだよな。
最初に樹に会った時は不思議な雰囲気を持った子だなぁ~って思ってたけど、話しててなんかやっぱり惹かれる存在だったんだよね。
「そっから、まさかこんなに今大きな存在になるなんて思いもしなかったけどね」
「まぁ・・私と修はずっと見て来たから、正直嬉しかったけどさ」
「あぁ・・そっか。でも、ごめんね~。結局うまくいかなかったや~」
「やっぱまだ透子、樹くんのこと好きなんだね」
「さぁ~。どうだろ~。もうよくわかんないや。大丈夫!もうホント忘れるから!今日決心ついた!うん!」
今日感じた想いを覚えてれば大丈夫。
もう樹とは別々の道を歩いてるんだ。
うん、きっともう忘れられる。
決心を確かめるようにグラスに残っていたお酒をそのまま飲み干す。
「美咲!おかわり!」
「大丈夫?結構飲んできたんじゃないの?」
「大丈夫!明日仕事休みだから!」
「いや、そういう問題じゃなくてさ。まぁいいや、今日は飲まなきゃやってられんわな」
「そういうこと!」
「美咲、今日は許せ。久々に樹のこと想い出しちゃって正気でいられん。この勢いで飲んで忘れるから安心して」
「了解。なら今日はとことん飲め飲め」
「おぅ!」
多分きっかけが欲しかった。
樹を忘れるきっかけ。諦めるきっかけ。
一年ズルズルと樹との保証のない約束を信じてここまで待ってたけど。
そろそろ限界かな。
きっとあれは樹なりの私を傷つけないための優しい嘘だったんだろうから。
別れる時に私を傷つけないために、お互い前向きな別れになるように。
それをバカみたいに信じる私もどうかと思うけど。
いい加減いい歳だし、そんな少女漫画みたいな夢信じるのやめないと。
一年経って何もなかったんだもん、もうこれが諦めるタイミングだ。
ごめんね樹。
しつこく今もまだ好きで。
まだ諦められてなくてごめんね。
もう忘れるから。
もう好きでいるのやめるから・・・。