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すると、かなりのお酒が回ってしまったのか、そのまままた寝てしまったみたいで、今はフワフワした気持ちのまま、ほんの少し目を覚ます。
テーブルに酔いつぶれた私の頭を、隣に座っている誰かがすぐそばで優しく撫でているような気がする。
なんかすごく気持ちいい幸せな気分。
そっか・・これ夢の中だ。
なんか久々だな・・夢の中でもこんな気持ちになるの。
そうだ、樹との時間以来だ。
樹と一緒にいる時は、いつもこんな優しくて幸せな気持ちになれてた。
こんな風に私に触れてくれるその手からも、樹の気持ちが伝わって来て、それだけでホントに幸せだった。
一緒にいられるだけで、その優しさだけで、ただ幸せで満たされていた。
あぁ・・ダメだ。
夢の中だから、上手く理想通りの空想になってしまう。
そう、こうやって隣で優しく幸せそうに笑ってくれてた。
「樹・・・」
ダメだ。完全に樹との幸せな時間想い出して、涙が溢れて止まらない。
これは完全にお酒のせいで、そして夢の中だからだ。
でも夢の中なら樹も許してくれるよね。
「透子・・。ごめんな。もうすぐ透子迎えに行くから」
樹・・・?
やっぱり樹が夢の中に現れてくれてたんだね。
ホラ。夢の中の樹は優しい。
夢の中の樹は私を今でも好きでいてくれてるのかな。
私が今好きだと言っても受け入れてくれるのかな。
「樹・・・好き・・」
せめて現実では伝えられないその想いを、夢の中の優しい樹になら伝えても許してくれるよね。
「透子・・・オレも・・透子が好き」
ホラ。夢の中の樹は私が望む言葉をくれる。
今ではもう聞けないその言葉を。
夢の中の樹はこんなに優しく微笑んでくれて、好きだと言ってくれる。
それだけで幸せだ。
最後に樹を諦める前に、忘れる前に、夢の中でも樹に出会えてよかった。
最後に好きだと伝えられてよかった・・・。
「透子。起きて~もうお店閉めたからそろそろ帰るよ~」
ん? 身体を揺さぶられて美咲から声をかられて、目を覚ます。
「あ~。ごめん。寝ちゃってた」
「それは構わないけどさ。透子気分は?大丈夫?」
「うん。それは大丈夫。ってか、逆にちょっと幸せな夢見たから気分よく寝ちゃってた」
「夢?そんな幸せな夢だったの?」
「うん。久々に樹の夢見た」
「樹・・くん?」
「うん。私酔いつぶれて眠ってたらさ、隣で樹が優しく頭撫でてくれてさ」
「へ・・へ~。そうなんだ」
「久々に幸せな時想い出しちゃってさ、思わず夢の中の樹があまりにも優しかったから好きって言っちゃった」
普通ならあんな自然に好きだなんて言えないけど。
現に今は絶対また再会したとしても、樹を困らせるから口が裂けてもそんなこと言わないけど。
「そ、そしたら・・なんて?樹くん?」
「好きだって言ってくれた・・・。ふふっ。何私子供みたいに乙女チックなこと言ってんだろ。ヤバッ。お酒飲みすぎた」
「・・・ならよかったじゃん。今でも好きでいてくれたなら」
「夢の中でだよ。実際に樹には絶対言えないもん。あんな素直に」
「別に素直に言えばいいんじゃない?ホントに好きなら」
「ホントに好きだから、もう今は言えないんだよ。樹をこれ以上困らせたくないもん」
「透子・・・」
「でも夢の中でちゃんと言えたからスッキリした!もう大丈夫。これで綺麗サッパリ樹のことは忘れる!以上!」
「無理しなくていいよ?透子」
「大丈夫だよ美咲~。ホントなんかもうスッキリしたっていうか。今日でようやく気持ちハッキリしたというか。ちゃんと自分の中でケジメつけられた」
美咲はそんな風に言い切る私を少し切なそうに心配そうに見つめる。
「ありがとね、美咲。いつもどうしようもない親友見守ってくれて」
「今更始まったことじゃないでしょ。大事な親友見守るのは私の役目」
「サンキュー」
うん。私には樹がいなくてもこうやっていつも見守ってくれる美咲もいる。
やり甲斐ある仕事も出来てるし、これからも一人で大丈夫。
うん。樹のこともこれで忘れて、前向きに将来を考えよう。
だけど、樹と出会えたことも、樹と恋愛出来たことも、後悔はしていない。
樹には幸せな時間をもらえて、新たな自分に気付かせてもらえることが出来て感謝しかない。
うん。いつか何年後かにまた再会出来る時があれば、その時はちゃんと伝えよう。
”ありがとう” って。