テラーノベル
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紗知メイン
戦闘パロ
ある日の休日、日光に当たりただただ何も考えずにボーッとしていると突然、部屋にノック音が響いた
入っていいよー、と緩く声をかけてはドアノブが回る
こんな休日に申し訳ないです、と軽く謝って入ってきたのは紗知だった
驚いた顔をしている自分に紗知は次の言葉を発する
「この紙、あなたが書いたやつですか?
」
そう言って見せられたのは書いた覚えのない一枚の手紙だった
そこには住所のみ書かれており、手紙かも怪しいところだった
「いや…そんなの書いた記憶ないし…何か怪しいし行かない方がいい気がするよ?」
そう少し不安気に言うも紗知は一度決めた考えはもう二度と変えない人だ
そうですか…と一呼吸置いては軽く手袋を引っ張り口を開く
「私、行ってきます、最近身体も動かせてないので」
そう言うと止める隙も与えずに紗知はどこかへ行ってしまった
紗知の事だ、すぐに誰かいるなら倒して帰ってきてくれる事だろう
軽く溜息をついては伸びをし、机の上に散らかった資料を片付け始めた
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ここがあの住所の場所ですか」
何とも薄気味悪い、人の出入りは考えられない生い茂った草木に薄暗い景色に濃い霧
薄気味悪いのは個人の感想だ、一番厄介なのは酸素がとにかく薄い、出来る事ならあまり動きたくはない
そんなことを考えながらも生い茂った草木をかき分け奥へと進む
風一つない、静寂がただただ広がる
そんな静寂を打ち破るかのように一人の人物が現れた
白い髪に大きなとんがった耳が生えている他人類
そんな他人類がこちら目掛けて走ってくる
明らかにこちらに殺意を持って
でも遅い、信じられないぐらいに遅い
力加減をしては咄嗟に反応し相手のみぞおちを手刀のように殴る
「手応えがない…弱い、弱すぎる、何かがおかしい…」
そう、手応えがなかった
殴った時の触感が、飛んでいった時のこちらへの反動が
そして嫌な気配は一切消えなかった
コイツが本体じゃない…?何体かいる…?
そう考えるよりも先に息切れが起きていた
一回動いただけでこの息切れ、やはりこの山は酸素が有り得ないぐらい薄い
「はぁ…さっさと終わらせますか」
独り言のようのそう呟いては何体も敵が存在することを警戒しては 先に進むことを優先する
しばらく歩いていると開けた場所へと出た
辺りにはたくさんの花が咲いており、全てが珍しい種類の花や薬草だ
一輪ぐらい持って帰って調べたい、そう思ってはその場にしゃがみこみ桃色の綺麗な色をした花を貰おうと手に取る
その瞬間に自身の背後から僅かに音が聞こえた
咄嗟に後ろを振り向き辺りを見渡す
視界に入ったのは二体の他人類だった
しかし先程のとはまた違う種類の他人類だ
一体ここには何人の他人類がいるのか…そう考える隙も与えずに相手はこちらへと飛び込んできた
「久しぶりの女だ!こりゃあ殺しがいがあるなァ”!」
そう威勢がいいがコイツも弱い
すぐに相手より低くしゃがみこみ首元へと手刀を入れる
少ない酸素の中で必死に乱れた息を整える
最近はずっと自室に引きこもっていたから身体が随分と鈍っているようだ
すると突然後ろから手を叩く音が聞こえてきた
咄嗟にに後ろを振り返ると嬉しそうな顔をし、拍手をしている他人類がいた
明らかに他に倒してきた他人類とは違う雰囲気だ、コイツがボス?
そんな事を考えていると、恐らくこの場にいた他人類全てだろう
全ての他人類がこの目の前の奴に吸われていったのだ
力を分散させていたのか、全てが目の前の奴に集まった途端に嫌な気配が増大する
「いやァ、アンタ強いな?武器は?武器は何使ってるんだ? 」
そう興味津々で聞いてくるコイツに少し恐怖を覚えるまであった
自分自身話す事はあまり好きではない、出来る事なら話しかけないで欲しい
「なぜ無視する?そうか、俺が名乗ればいいんだな?俺の名朝鮮朝顔だ、アンタの名前を問おうではないか」
ダチュラ…どこかで聞いた事がある
確か毒の花だった気がする
確か…幻覚、呼吸困難、色々な危険症状を起こす花だったような
この山は異常に酸素が薄い、危うくさっきも呼吸困難になりかけた
まさか、この山全てがコイツのテリトリーなのか?
「ん…?アンタの目、特殊だな、どうせ片方の目がほとんど見えてないんだろう?可哀想に、すぐに幻覚の中で幸せな気持ちで殺してやるからなァ 」
そう言うと先程の他人類達とは違う、圧倒的なスピードで手から蔦や花を出してくる
それに反応できなかった
激しく太い木に押し付けられては蔦で腕や足を締め付けられる
それと同時に蔦の鋭い針が身体の至る所にじんわりと刺さってくる
「あ~ぁ…武器持たねェからそうなるんだ…その棘、俺の毒が入ってるからすぐに幸せ~な幻覚が見れるだろうなァ?」
手足が痺れる感覚を覚えるがこれだけではへばってられない
「…私は喋るのが嫌いなんです、なのであまり喋りかけないでもらっても?」
そのセリフを言い終わる前に自身の馬鹿力で蔦を引きちぎる
手足が麻痺してあまり上手く動けない
それでもなんとか相手の背後をとり、思いっきり素手で殴りを入れようとする
完璧に相手に攻撃が入った、そんな甘い考えをした自分を恨みそうになった
相手は有り得ない反応速度を見せ、腕の側面で攻撃を止められる
「おぉ!アンタは素手で戦うんだな!その馬鹿力…普通俺の蔦はちぎれないぐらい強度上げてるんだけどな?でもそろそろ手足も使い物にならなくなるんじゃないか?」
相手の言う通り自分自身毒は効かないと思っていても身体は拒否反応を起こしている
口の中に少し血が溜まる感覚を覚え、地面には綺麗に紅い花が咲くように紅く広がりその場にしゃがみこむ
手足が痺れ、立とうとしても立ち上がれない
息が苦しく、思うように呼吸が出来ない
まさにダチュラの毒そのものだ
綺麗な白の袴はすぐに紅色へと変わる
(あぁ”…くっそ、こんな事になるなら来なければ良かった…)
そんな事を心の中で思いながらもふらふらとゆっくり立ち上がり荒い息を何とか整えようにも全身に毒が回り、酸素が薄いこともあり徐々に視界が霞んで行くのを実感した
「おぉ!まだ立ち上がる余力があるのか!人間じゃないだけあって流石だなァ!!」
(駄目だ、コイツには今こちらが出せる最大火力を叩き込まないと倒せない)
そう考えてはできる限り相手から距離を取り助走の準備をする
(思いっきり殴れ、そうじゃないと死ぬと思え…!)
自身の体内の毒なんて気にもせずに全力で走り、有り得ない速度で距離を詰める
腕を振り上げ、自身の拳が相手の目の前まで迫る
その瞬間だった
(は…?)
自身の目の前に亡くなったはずの母が立っていた
すぐさま軌道を変え、当たらないように避ける
幻覚だ、幻覚症状だ、もう体はとっくの昔に毒で使い物にならなくなっていたんだ
「ははっ!どうしたァ?幻覚でも見え始めたか?あのまま殴れてたら勝ててたかもなァ?」
アイツが何か言っている、だがもう耳も聞こえなくなっていっている
さっきので力をだしきった、あれでやり切るつもりだったのに
立ち上がろうとするも、もう力は一切入らなくなっていた
向かってくるアイツに対して反撃を出そうとするもその前にもう既に意識の限界が来ていた
(あぁ”くっそ、視界…が…)
そこで意識を手放した
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ここは…一体?」
目を覚ますとそこには懐かしい景色が広がっていた
一瞬、あの世かとでも思ったがそうでも無いみたいだ
目の前には物凄く大きな豪邸が堂々と建っており、これもどこか懐かしい気がした
辺りをキョロキョロと見渡しているとどこからか声が聞こえた
「お!いたいた、紗知!今から昼食の時間だぞ!」
とても懐かしく安心する声、この声はお兄様…?
こちらににこにこと笑いながら近づいてくる人物は間違いなく実の兄だった
信じられない光景だった、何故なら紗知以外の家族は過去に皆全て他人類によって殺されているからだ
でも、今目の前にいるのは間違いなく兄だ
そんな事実は変わらず、思わず走って兄の方へと向かう
「お兄様…!!」
そこ勢いのまま兄へと抱きつき、幼い子供のように泣いてしまった
「おぉ…どうした紗知、どっか怪我でもしたか?」
そんな事を兄が行っているうちに両親がこちらへと向かってきた
綺麗なドレスにスーツ、正真正銘の両親だ
何十年ぶりに会えたのが嬉しくていつまで泣いていたのか分からない
幼い子供のようにわんわんと泣いてはとびきりの笑顔で笑う
家族はなんの事やらという顔をしていたがそれでも昔と変わらない笑顔で料理を食べたり、遊んだり、色々出来た
体感、半日ほど経った時、あることに気づいた
それは服装や身体、全てが幼い頃と同じになっている
だが、そう思った時には違和感を抱いていた
今の自分が思い出せない、幼い頃って何だ?
自分は普通の子供で、幸せに生きている子供のはず…?
そんな風に思ってからしばらくの月日が流れた
楽しくて幸せで、でも何か大切な事を忘れている気がする…?
確か、自分は…いや、頭が痛い、考えるのをやめよう
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「こんな事だろうと思ったよ」
珍しく紗知が夕方までに帰ってこない
何か怪しく思っては黒美に場所を聞き、行ってみたはいいが異様な光景だった
大きな蔦や綺麗な花に紗知が縛られており、その周りを色んな奴らがうろちょろしていた
助けなければ行けないのは分かっていたがどうも儚く綺麗だった
だがすぐに我に返り、目的を思い出す
酸素が薄いのに加えて微かに毒のあの独特な音がする
気泡が出ては割れる、そんな音がする
幸い、隠れているため見つかってはいないがそれも時間の問題だ
どこからか回って奇襲をしかけた
い━━
「み~つけたァ”!」
そんな大声と共に瞬時に大量の蔦や花で縛り付けられる
「?!…バレてたのかよ…」
反応が出来なかった、早すぎるだろ…
そんな事を思いながらもここからどうするかと頭を巡らせる
「今日は次から次へと獲物が来るなァ、アンタ、その耳はホルスの他人類か?だったら火とか使って来そうだなァ」
「まァ、それもこれも毒が回ってきたら意味がないんだけどな」
そうべらべらと下手な考察を並べるが生憎、ホルスの力は使えない
だが好都合な事に相手の毒は一切効かない
体内で毒を分解し、その毒を自身の血液と調合しては、更に強力な毒を生み出す
それが俺の能力だ
相手が喋っているのを遮り、自身の血液を蔦に纏わせては蔦を捻りちぎる
「俺の話を遮んなよォ、ていうかアンタ、ヴァンパイアとホルスの混血児とか言う奴か、そりャァ珍しい奴だ」
話なんてはなから聞く気ないが口さえ開けさせないようにとつかさず攻撃を入れる
「いい威勢だなァ、まぁそれもこれもそろそろ毒で効かなくなってくるだろうけどなァ」
相手は蔦や花で攻撃をしてくるため、不用意に近づけない
その瞬間、一瞬だけ隙が出来た
(今だ…!)
自身の血液を分散させ、相手の伸ばしてきた蔦や花に血液が付着する
「アンタァ、なんで毒が効かねぇんだよ!」
「悪いが俺は生まれつき毒が効きにくい体質なんだよ、まぁ毒野郎には毒でお返しだな」
そう強がって言ったものの、案外毒の回りが早くだいぶと強い
体内では正直分解が間に合ってはいないが多少なりとも大丈夫だ
しかし、この毒を紗知が受けたとなるとだいぶと危険だ
近距離でしか攻撃が出来ない紗知には今回ばかりは符が悪かった
どうせコイツはもうそろ毒で死ぬ
そう思っては紗知の元へと駆け寄る
だが何かがおかしい、蔦や花で縛られていた紗知だがコイツが死ねばこの蔦も消えるはず…
まさか…
そんな事があるか?
そう思っては後ろを振り返ろうとするがその瞬間に蔦で思い切り引き寄せられた
「アンタも道連れだナァ?」
耳元でそう囁かれては鳥肌が立った
不味い、殺られる
そう思っては目をつぶるが先に悲鳴を上げたのは相手の方だった
「アンタァ”!やっぱりホルスの力を持ってるんじャねぇかァ”!」
火だるまのように燃え上がり、蔦が綺麗に燃えていく
「は?何が起こったんだ…?」
自身の手のひらは火が燃え上がっているが不思議と熱くは無い
そんな火の玉を手の中に押さえ込んでは再度、紗知の元へと駆け寄る
相手が焼け死んだ事によりそれと連動して紗知の周りにまとわりついていた蔦も焼け切れる
まずは解毒からだ、だが生憎解毒剤は一切持っていない
このままだと不味い、紗知の部屋には解毒剤はあるだろうがここから部屋まで運んでいたら時間がない
焦りが勝つ中で思考をなんとか巡らせようやく出てきた考えは自身の血液を紗知に飲ませるというものだった
自身の血液は特殊だ、毒に強いのなら解毒だって出来るはず
そんな考えで自身の腕を少し深く切っては出てくる血を無理矢理飲ませる
後はただ祈る事だけに力を注いだ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
幸せな生活はとても楽しかった
誰からも奪われない永遠の幸せな愛だった
でもそれもこれも壊される日がいつかは来てしまう
今日はそんな日だった
いつも通り母に呼ばれ、兄や父と共に食事をし遊び過ごす
だがそんな時にどこからか声が聞こえてくる
どこか聞き覚えのある声
そんな声のする方向へとただの好奇心で近づく
「紗知!早く目ェ覚めろ!そうしないと死ぬぞ…!」
どこか悲しそうに、必死に呼びかける声に全てを思い出す
「アズ…?」
もう家族は死んでいる、会えるはずがないのに
その瞬間に今まで夢を見ていたのではないかと思うほど全てを思い出しては頭が割れるように痛くなる
気づけば姿も元通りになっており、力もあの常人離れした力に戻っていた
後ろから慌てて駆けつけてきた兄は驚いたような顔をしてはその後すぐに悲しそうな顔を浮かべた
「もう会えるのは最期みたいだな、目が覚めてもお前には良い仲間がいるんだからな」
そう言い切ると笑顔で笑ったかと思うとばっと紗知を後ろへと押し倒す
後ろは川だ、このまま落とされたら━━
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「っは、はぁ、っ…」
勢い良く飛び起きたかと思うと目の前には綺麗な花が広がっていた
辺りを見渡すと心配そうにこちらを覗き込むアズの顔が見えた
「はぁ…マジで心配したんだからな?」
少し苦笑いを浮かべながらこちらにそう言うアズに申し訳なくなった
幸せな夢を見ていたのには変わりは無いがそれと同じくらいの幸せは多分すぐ目の前にあるんだろう
そんな事を思っては覚束無い足で立ち上がる
ふらふらと歩く紗知にアズはすぐに手を差し出してくれるがそれを「そんな気を遣わなくても自分で歩けます」とその手を払う
「それより、アズも顔色が悪いですよ、毒が完全に分解しきれてないみたいですしさっさと帰りましょ、解毒剤渡しますから」
そう口では言うものの心の中ではこれでもかと言うほど感謝をした
そして2人は綺麗で静かな森の出口を目指しては歩き始めた
「目が覚めて本当に良かった」
震える声で誰にもバレない声量でそんな事を口にしながら
オワリ
コメント
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おぉーーーっ!!!めちゃくちゃ良き!! 拘束系大好きだし、夢を見せて幸せな空間に閉じ込める系の大好きだからニヤニヤしながら見てた!(癖ぃぃぃ) アズ大活躍!!!この2人のペア大好きだわ…… アズの前では絶対に素直にならずにツンツンしてる紗知ちゃん可愛すぎてもう最高です!! 戦闘の描写もうますぎて禿げました☆