テラーノベル
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朝、スタジオに入ってきたらんちゃんの姿を見つけた瞬間、僕のボルテージはマックスに達した。
「おはよう、らんちゃん。……あ、今日は『見習いスタッフ』だったね」
わざとらしくそう言って、僕は内心で小躍りしていた。一応、事務所が用意した教育係のスタッフが横にいたけれど、悪いけどその役目は僕がもらう。機材の説明も、現場の回し方も、僕が教えた方が早いし、何より彼女と話す正当な理由になるから。
撮影中、ファインダー越しにポーズを決めながらも、視界の端で一生懸命ノートを取るらんちゃんを追ってしまう。
(……可愛い。いや、真面目だな。……やっぱり可愛い)
若井と涼ちゃんが「元貴、ニヤついてるよ」「集中して」と目配せしてくるけれど、無視だ。休憩のたびに彼女の元へ行き、「今の指示の意味、わかった?」「この画角の意図はね……」とマンツーマンで指導する。教育係の人が手持ち無沙汰そうに遠くでコーヒーを飲んでいたけれど、あとで高い菓子折りでも贈っておこう。
仕事が終わり、送迎の車内。
いつものように涼ちゃん、若井の順で降りていき、最後は僕の番。
これまでは「お疲れ様」の一言で降りていたけれど、今日からは違う。後部座席に座るらんちゃんを振り返り、僕はとびきりの笑顔を作った。
「らんちゃん、お疲れ様。……また明日ね」
彼女が「はい! また明日!」と、少し照れたように、でも力強く返してくれる。その声の響きだけで、明日もまた頑張れる確信が持てた。
車を降り、自宅のマンションのエントランスに入る。
自動ドアが閉まった瞬間、僕は溢れ出しそうなニヤけ顔を隠すのをやめた。
「……っよし! 完璧だ……」
誰に見せるでもないガッツポーズ。
「また明日」という言葉が、こんなにも魔法みたいに響くなんて知らなかった。
彼女が家で僕の教えたことを必死に復習している姿を想像すると、愛おしくてたまらなくなる。
明日も、明後日も、彼女は僕のそばにいる
公私混同? 職権乱用?
なんとでも言えばいい。僕が彼女を最高のスタッフに育て上げ、そして……それ以上の存在にするためのカウントダウンは、もう始まっているんだから。
やっぱり待てない(笑)
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コメント
2件
最高です!
🌹はなみせ🍏