テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
レコーディングの機材が静かにスリープモードに入り、スタジオの照明が少しだけ落ちる。
スタッフたちが次々と退出し、最後に残ったのは僕と、そしてこの数年で驚くほど頼もしく成長したらんちゃんだけだった。
「……らんちゃん。もうすぐ、成人だね」
資料を整理していた彼女の手が、一瞬止まる。
石川から出てきたばかりの頃の、あの幼い面影はもうない。今ではどの現場に行っても、「らんちゃんがいてくれれば安心」とスタッフからもメンバーからも全幅の信頼を寄せられる、立派な一人前のスタッフだ。
実際、彼女の先読み能力と的確な動きのおかげで、僕の制作スピードは以前の倍以上に上がっている。
「そうですね。……なんだか、あっという間でした」
ふふ、と笑って「もう大人かぁ」なんて呟く彼女の横顔を見て、僕は必死に心臓の鼓動を抑えていた。
建前は、「大きくなったね」「頑張ったね」というプロデューサーとしての労い。
でも、本音は……。
(あと数ヶ月。成人したら、僕はもう『保護者』や『先輩』のフリをしなくていいんだ)
これまで、彼女を大切に思うあまり、自分の感情には厳重に鍵をかけてきた。彼女の夢を邪魔したくなかったし、何より彼女を「スタッフ」という鎖で繋ぎ止めている自分に、少しの罪悪感もあったから。
でも、成人は一つの境界線だ。
「……成人したら、やりたいこととかある?」
わざとらしく、何でもない風を装って聞いてみる。
気づいてほしい。僕がこんなにも君の「大人」になる瞬間を待ち侘びていることに。
でも、今ここで全部がバレて、彼女を困らせたくはない。
「えー、なんだろう。……もっと難しい現場も任せてもらえるようになりたいです!」
相変わらずの仕事熱心さに、僕は苦笑いするしかない。
自分の中の独占欲と、彼女への純粋な敬愛。その二つの感情が、僕の胸の中で激しく火花を散らしている。
「……そっか。楽しみだね、らんちゃんの二十歳」
言葉とは裏腹に、僕は内心で「早くその日が来てくれ」と、子供みたいに地団駄を踏んでいた。
告白という名の、本当の「独占宣言」。
その瞬間まで、あと少し。僕は僕自身との戦いに、なんとか耐え忍んでいた。
成人年齢が変わる前ということにしてください!
NEXTコメント×2以上
コメント
1件
🌹はなみせ🍏