画材屋さんでの買い物が終わって外へ出る
「僕の用はこれで済んだけど、どこか寄りたいところある?」
瀬南くんにそう言われて、時計を確認するとまだ16:00前だった
「ここの駅で降りたことないから、何か美味しいものあったら食べて帰りたいな」
「食べ物ね」
「あ、飲み物でも大丈夫!」
瀬南くんが端末を取り出して探してくれる。指が長くて動くたびに目で追ってしまう
「1番近くだと飲み物をテイクアウト出来るとこあるよ」
「じゃあそこ行こう!」
「ん、こっち。行くよ」
スマホで地図を確認して道を覚えたのか、ポケットにしまって進む方向を指差してから進む
‘周り見ながら歩く時はここ掴んでて’
瀬南くんの後ろ姿を見て先程言われたことを思い出す。手を伸ばして彼のバッグの紐を軽く掴むとそれに気づいたのか、ふとこちらを振り返って少し驚いた顔をしたけど、すぐに柔らかい表情になった
「お利口じゃん」
「っ!」
い、今の優しい顔はちょっとドキッとしたかも…
歩いて数分で着いたお店はフルーツジュースのお店だった。
「りんごジュースにする!」
「僕はぶどうにしよ。」
りんごジュースとぶどうジュースを受け取ると、とても可愛らしいカップにカットフルーツとジュースがなみなみに入っていた。ジュース毎にカップが違うみたいだ。
「わぁ!写真撮ってもいいかな?」
「好きにして」
瀬南くんの持ってるぶどうジュースのカップにりんごジュースのカップを近づけて写真を撮る。
「カップ可愛い!」
「もういい?」
「うん、ありがとう」
私の言葉を聞くと瀬南くんがぶどうジュースにストローをストロー穴に通して口をつける。
「ん、美味しい」
「私も飲むっ」
スマホをしまおうとするもポケット口がなかなか探り当てれなくて、目で確認して入れようとポケットへと目線を落とす
「っ、ちょっと!」
突然りんごジュースを持っている手をカップ毎包み込むようにギュッと握られる
「え?!」
急に手を掴まれて顔を上げると、瀬南くんの目線は私の顔ではなく私の服へと向けられていて、目線を辿ると地面と私のシャツワンピにジュースが零れてしまっていた。
幸い瀬南くんが止めてくれたおかげで零したのは少量で済んだけど、私の服にはしっかりとジュースのシミが出来ていた。
「僕がこれ持っててあげるから早く拭きなよ」
「ありがとう」
鞄の中からタオルを取り出して、先に瀬南くんの指とカップを拭く
「何してんの、服シミになるよ?」
「でも、瀬南くんの指が濡れちゃってるから」
「指は後からでもいいでしょ自分の服拭きなよ」
「私のせいだから服はいいの。瀬南くんが濡れてる方が良くないよ」
「馬鹿じゃないの」
ちょっと怒られちゃったけど、拭き終わった後に服へと手を伸ばしトントンと叩くようにして拭き取る
「こんなもんかな」
「ほんと抜けてるというかドジというか」
「瀬南くんのおかげで最小の被害で済んだよ、ありがとう」
私の服をジッと見つめていた瀬南くんが軽く息をついてから自分が着ていた薄手のコートを私の肩にかけてくれた。
「え!これ…」
「淡い色だから跡が目立つでしょ。それ羽織っときなよ」
「でも、瀬南くんのなのに」
「あっちに公園あるみたいだから座って飲むよ、また零されても困るし」
両方の飲み物を持ってくれたまま瀬南くんがゆっくり歩き出す
「あ、待って」
置いていかれないように私も瀬南くんのあとをついていく
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