テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

「いつもと違う僕らの日常。」

一覧ページ

「「いつもと違う僕らの日常。」」のメインビジュアル

「いつもと違う僕らの日常。」

1 - 第一話『いつも通りの朝に、少しだけ違う光』

♥

109

2025年08月27日

シェアするシェアする
報告する

第一話:いつも通りの朝に、少しだけ違う光

「……透、朝だぞー。起きないと遅刻する」


その声で、まぶたがじわりと持ち上がる。カーテンの隙間から差し込む朝の光は、まだ柔らかい。玄関に向かう足音、キッチンから漂う味噌汁の香り——どれも“いつも通り”の朝の風景。


「……ん、んー……おはよ、陽翔……」


「ほら、起きた。よしよし」


陽翔の手が、俺の髪を軽くぐしゃっと撫でた。


こいつはこういうのが自然にできる。俺が大学の頃から好きだった部分であり、嫌いな部分でもある。だって、他の誰にでもやってる。彼女がいたときだって、女の子に同じようにしてた。……だから、俺はそれを羨ましがる資格すらない。


「朝飯できてる。急げー」


「……うん」


ベッドから起き上がり、Tシャツの裾をぐいと引っ張る。陽翔が作った朝ごはんは、卵焼き、鮭、味噌汁に、炊きたてのご飯。……完璧すぎて、逆にイラつくくらいだ。


「今日の卵焼き、ちょっと甘め?」


「お、わかった? 透の好みに寄せた」


そうやって、当たり前みたいに笑ってくる。

おまえ、ほんと、俺の心臓に悪いって。


「……ありがと」


それだけを返して、箸を口に運ぶ。

焦がれすぎて、味なんて、もうよくわかんない。


***

俺たちは大学の同級生で、卒業してから2年目の春。社会人になってからもお互い独り暮らしの寂しさに負けて、なんとなく「一緒に住んじゃう?」という軽いノリでシェアハウスを始めた。


2LDK、家賃は折半。掃除当番も分担。

一緒に住んで一年、ケンカもせず、わりと上手くやってると思う。


でも。


最近、たまに思うんだ。

「これ、友達のままでいられるのか?」って。


***

帰宅は陽翔の方が遅かった。夜10時過ぎ、玄関の鍵が回る音。ソファでゴロゴロしてた俺は、テレビの音量を下げて振り向いた。


「ただいまー……あー、疲れた」


「おつかれ。ビール、冷蔵庫入ってる」


「神か。マジで結婚してくれ」


それ、冗談でも言わないでくれ。


「じゃあ……籍入れる?」


一瞬、俺の口から出た言葉に、自分でもびっくりした。


陽翔が目を丸くする。


「……今の、冗談か?」


「……どう思う?」


その問いには、返事はなかった。

でも笑ってごまかす陽翔の顔を見て、俺は自分の言葉を飲み込むしかなかった。


「いや、なんでもない。風呂、先入るわ」


俺は立ち上がり、足早にバスルームへ向かった。


心臓が、バカみたいにうるさい。


俺はたぶん、本気で陽翔が好きだ。


でも、それを言ったら、今の関係が壊れてしまいそうで——、、。

ずっと言えないままだ。

「いつもと違う僕らの日常。」

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

109

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚