テラーノベル
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起きたら、体が変だった。
いつもより手足が長い気がする。
パジャマの袖が短い。
「あれ? あれぇ?」
「どうしたんだい……リンネ?」
シュメリが僕を二度見した。
「何か、体が変なんだ。よくわかんないけど」
「……大きくなってるね」
「大きく?」
「成長してる」
「……え?」
僕とシュメリは顔を見合わせた。
「私の昔の服に、着られる服があって良かった」
シュメリのクローゼットで服を見繕ってもらった。
やけにシュメリが安心している。
「おぅ、おはよう。リンネ、また成長したのか?」
バルトが僕に並んで、頭の位置を確認している。
「また? 前にもこんなことがあったのかい?」
「ガキの頃だけどな。獣人の成長は俺たち人間には、ある日突然に見える」
バルトが淡々と話す。
かなり慣れた様子だ。
「僕って、そんなに急に成長していたの?」
「俺には急に感じたけどな。リンネは、気にしてなかったな」
バルトが思い出しながら話す。
「そうか。バルトは慣れているんだね」
シュメリが感心した顔をしている。
「最初は驚いたよ。昨日まで五歳児程度だったガキが起きたら十歳になってたら、驚くだろ」
「今朝がまさにそうだったよ」
シュメリが疲れた顔をしている。
「ごめんね、シュメリ。僕もよくわかってなくて」
「リンネは悪くないよ。獣人の生態だ」
シュメリが微笑んでくれた。
「十歳以降は成長も穏やかだったんだけどな。久しぶりに、急にデカくなったな」
「僕もビックリしちゃった」
自分のことなのに、よくわかっていなかった。
小さい頃は、あんまり気にしていなかったから。
「朝食の後にでも、身長を測ってみようか」
「それがいいかもな。また成長するかもしれないしな」
僕らは朝食の後、広間に移動した。
シュメリがメジャーを持ってきた。
「ここを踏んでくれるかい、リンネ」
「はい、踏んだよ」
踵でメジャーの端を踏む。
「そのまま真っ直ぐ、動かないで」
「はぁい」
「顎は引いとけ」
バルトに顎を軽く押された。
僕は顎を引いて前を見た。
「一六六くらいだね」
「おぉ、十センチ伸びたか」
バルトが感心している。
「前は一五六センチだっけ?」
「最後に測ったのがな。あれは、確か……一年くらい前かな」
僕はバルトを見上げた。
「バルトは身長、どのくらい?」
「バルトは一八七センチだよ」
何故かシュメリが教えてくれた。
「そういえば、服を仕立てた時に身長も測られたな」
バルトがうんざりした顔をした。
あの時は相当疲れていたから、バルトにとって苦い思い出らしい。
「あの時にリンネも身長を測ったね。一五六センチだったよ」
さすが、シュメリだ。
ちゃんと把握している。
「僕、そんなに大きくなったんだ。シュメリは何センチ?」
「私は一七五センチだよ」
僕は、シュメリとバルトを見比べた。
「大きくなっても二人よりは小さい」
前より顔が近くなったけど。
まだ見上げる距離感だ。
「それは仕方ないだろ。猫魔は小柄だ。猫にしても小さいほうだからな」
「そう考えると、猫魔にしては大きくなったかもしれないね」
バルトとシュメリが口々に言う。
慰められているみたいだ。
ちょっと、むくれる。
「二人みたいに大きくなりたい」
「今のままで十分だよ」
シュメリが僕の肩を抱いた。
「顔が近くなったね。キスがしやすくなった」
シュメリがニコリと笑む。
今までよりずっとシュメリの顔が近い。
(背伸びしたら届くかな)
僕はつま先で立って、シュメリの頬にキスをした。
「届いた!」
これからは僕からもキスできそう。
顔を離したら、シュメリの頬が赤く染まっていた。
「こら、リンネ。そういうことは二人きりの時にしろ」
バルトに、ポコッと頭を叩かれた。
「え? あ、そっか。そう……だよね」
途端に恥ずかしくなって、顔が熱くなった。
「私も、ちょっと驚いたよ」
目を逸らして、シュメリが顔を隠している。
(シュメリが照れてる。可愛い)
シュメリのこんな顔が見られるならキスして良かったと、ちょっとだけ思った。
「猫魔の生態を考えたら、これ以上は大きくならないんじゃないかな」
シュメリが、強引に話題を変えた。
「まぁ、そうだな。充分大人っぽくなった」
「僕、大人になった?」
「体はな。だから、行動も大人になれよ」
バルトに、ポンポンと頭を撫でられた。
「うん! ちゃんと大人になる」
嬉しくて、素直に頷いた。
「服を仕立て直す必要があるね。仕立て屋を呼ぼうか」
「え……前みたいなこと、するの?」
「これだけ身長が変わるとね。手足の長さから総て、測り直しだよ」
さっと血の気が下がった。
「僕、シュメリのお下がりが良いな」
「ダメだよ。リンネのモノはリンネに合わせて作らなければ」
シュメリが楽しそうに笑む。
これは逃がしてもらえそうにない。
「観念して仕立ててもらえ。大人なんだから」
「今、大人って使うの、狡い」
「狡くないだろ。行動も大人になるための、第一歩だ」
バルトがニヤリとした。
僕は、ぷくっと頬を膨らませた。
「明日にも、仕立て屋を呼ぼうね。大人ならできるね、リンネ」
シュメリまで、大人っていう。
「うー……わかった」
僕は観念して、頷くしかなかった。
コメント
1件
おお、リンネがまた急成長! 猫魔の生態ってほんとに人間とは違うんですね。前回の服の採寸地獄(笑)のトラウマが蘇って「仕立て屋だけは嫌だ」って顔をするリンネに思わず笑っちゃいました。でも、背伸びしてシュメリにキスが届いたシーンは本当に温かくて、成長=恋愛面での距離が縮まるっていう素敵な描写だなあと。バルトの「行動も大人になれ」という言葉が、この家族の優しい距離感をよく表してると思います。
お股ポテト
29
はるにし
72