テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ソファの後ろに隠れ、震えながら助けを待つ夢。窓の外の引っ掻く音と、玄関のドアを叩く音は止まない。むしろ、激しくなる一方だ。
雄大(本物)「夢! 警察がもうすぐ着くって! サイレン聞こえないか?」
電話越しに、確かに遠くで鳴り響くサイレンの音が聞こえた。夢は少しだけ希望を取り戻す。
夢「き、聞こえる! でも、まだ遠い……!」
雄大(本物)「大丈夫だ。あと少しの辛抱だ。境界線を跨がせないように、部屋の真ん中から動くなよ!」
(バリンッ!!)
大きな音を立てて、ベランダの窓ガラスに大きなヒビが入った。中心部からクモの巣状に広がり、一部が内側に砕け散る。
夢「きゃあっ!」
ガラス片が部屋に飛び散る。窓の外の「顔」たちが、笑いながら割れた隙間から指を伸ばしてきた。
雄大(偽物)「あはは! もう入れるよぉ、夢ちゃぁん!」
異様に白い、腐りかけの指先が、境界線を越えようと蠢く。
夢「来ないで! 来ないでよ!!」
夢は恐怖で叫んだ。その指が、部屋の中の空気に触れた瞬間、指先から黒い煙が立ち上がる。まるで、見えない壁に阻まれているようだ。
雄大(本物)「そうだ! 境界線は絶対だ! 物理的に半分以上入らなきゃ、侵入はできない!」
「顔」たちは悔しそうに唸りながら、指を引っ込めた。
しかし、玄関側も限界だった。
(ドゴォッッン!!!!)
ドアが内側に吹き飛ばされ、廊下の床に転がる。
そこには、雄大そっくりの「何か」が立っていた。雄大が着ていたはずの服は、ドロドロに汚れている。目は虚ろで、口は不自然に開いている。
雄大(偽物)「夢〜、おうちに帰ろうよ〜」
夢「ひいっ……!」
偽物の雄大は、玄関の敷居に足をかけようとする。
その瞬間、敷居からバチバチと青白い火花が散った。偽物は「ギャア!」と叫び、後ろに飛び退く。
雄大(本物)「見ろ! やっぱりそうだ! 敷居が境界線だ! 一歩も入らせるな!」
サイレンの音が近づいてくる。
雄大(偽物)「くそぉ……! 邪魔するなぁ!」
偽物の雄大は、夢ではなく、窓の外の「顔」たちに向かって怒鳴った。
雄大(偽物)「もう時間がない! 次の『間』に移動するぞ!」
「顔」たちは一斉に窓から離れ、偽物もそのまま玄関の廊下を走って逃げていった。
雄大(本物)「夢! 逃げたぞ! 大丈夫か!?」
夢はソファの後ろから、震える体でゆっくりと立ち上がった。玄関のドアは吹き飛び、窓ガラスは割れている。
夢「だ、大丈夫……みたい……」
その時、マンションのエントランスが騒がしくなり、数名の警官が階段を駆け上がってくる足音が聞こえた。
つづく
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!