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おまる
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瞬くんの実家の門をくぐる時、私の緊張はピークに達していた。
「……そんなに強張らなくていいって言ったでしょう?」
瞬くんが可笑しそうに私の手を握るけれど、あんなに独占欲の強い弟を育てたお姉様方だ。
「そうは言っても……」
きっと一筋縄ではいかない。
……最悪、手厳しいチェックが入ることも覚悟していた。
けれど、居間の扉が開いた瞬間、私の予想は木端微塵に砕け散った。
「来た! ちょっと、瞬、遅いじゃない! ……あなたが凛さんね? 可愛いー!!」
「本当! 写真で見るよりずっと素敵! 瞬にはもったいなさすぎるわ!」
部屋にいた二人の女性───
瞬くんの姉たちが、弾けるような笑顔で立ち上がり、私を囲んだ。
「あ、初めまして。佐藤凛です。本日は……」
「いいのよ、そんな堅苦しい挨拶!私は長女の結衣、こっちが次女の真央ね!さ、座って座って!」
圧倒的な歓迎ムード。
お姉様方は、私が持参した手土産を喜んで受け取ると、すぐに瞬くんを端に追いやって私を隣に座らせた。
「ねえ凛さん、瞬に泣かされてない?この子、昔から一度決めたら執念深いっていうか、ちょっと重いでしょ?」
「えっ?全然!でも、そう…ですね…すごく慕ってくれていますので…」
「もし泣かされたり、嫌なことされたりしたら、すぐ私らに言いなさい。私らがこの子を叩き直してあげるから!」
「ちょっと、ねえちゃん……俺、まだ何もしてないだろ」
瞬くんが苦々しく口を挟むけれど、お姉様方は意に介さない。
「何言ってんの。あんたのその、凛さんを片時も離したくないって顔、見てれば分かるわよ」
「……凛さん、本当に我慢しちゃダメだからね? こいつの扱いに困ったら、いつでも連絡して」
「ふふっ…はい、ありがとうございます」
姉たちの愛ある容赦ない言葉に、私は思わず吹き出してしまった。
瞬くんをタジタジにさせる最強の味方。
彼が私を溺愛するように、彼もまた
この明るく賑やかな家族に愛されて育ってきたのだと分かって、胸の奥がじんわりと温かくなる。
「…でも、瞬くんには……いつも支えてもらっているので」
私が少し照れながら答えると、お姉様方は「きゃー!」「瞬、聞いた!?」と大盛り上がり。
隣で顔を赤くしてそっぽを向く瞬くんの手を、私はテーブルの下でそっと握り返した。
厳しい試練を覚悟していた日は、笑い声と「瞬の黒歴史」の暴露大会へと変わっていった。