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おまる
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「……はぁ。やっと、俺だけの凛さんに戻った」
実家からの帰り道、夜風に吹かれながら瞬くんが深いため息をついた。
車内は、先ほどまでの姉たちの喧騒が嘘のように静まり返っている。
「ふふ、楽しかったわね。お姉様たち、本当に優しくて……」
「いやいや鬼でしたよ。俺の黒歴史をあんなに暴露して、凛さんまで味方につけて……正直、俺の立場がなさすぎて、気が気じゃなかったんですから」
彼はハンドルを握る手に力を込め、少し拗ねたような横顔を見せた。
その姿が年相応の青年に見えて、私は微笑ましく思いながら彼の腕に触れた。
「そんなに怒らないで。……あなたが皆に愛されているのが分かって、私、すごく安心したのよ」
「……愛されてるのはいいですけど、凛さんの意識が俺以外に向くのは、たとえ家族相手でも面白くないんです」
マンションの駐車場につき、エンジンを切った瞬間。
静寂が車内を支配し、彼の瞳がいつもの「独占欲に満ちた男」のものへと一変した。
部屋に入るなり、瞬くんは荷物を置く間もなく私を玄関のドアに押し当てた。
「瞬、くん……?」
「……ねえちゃんたちに『泣かされたら言いなよ』なんて言われましたけど。…今夜は、本当に泣きたくなるくらい、たっぷり可愛がってあげますから」
「ふふ…私のこと泣かせるなんて、酷い男ね」
「もう、冗談でもそんなこと言わないでくださいよ。たくさん可愛がりますから…ね?」
「ふっ…約束よ」
彼は私のブラウスの襟元に顔を埋め、深く、自分の香りを上書きするように吸い込んだ。
実家の柔軟剤の匂いを消し去り、彼のシトラスの香りで私を塗り潰していく。
「もちろん。凛さんを甘やかすのは、俺だけの特権ですから…ねえちゃんたちにも、誰にも譲りません」
「……ええ…私を甘やかしていいのは、世界中で瞬くんだけよ」
私の答えを聞くと、彼は満足げに口角を上げ、奪うような熱いキスを落とした。
賑やかな家族との時間も幸せだったけれど
やっぱり私は、この少し強引で
底なしの愛を注いでくれる彼の腕の中が、一番落ち着く場所なのだ。
二人きりの夜。
外の世界をすべて遮断した密室で
私たちは夜が明けるまで、お互いの存在を深く熱く刻み合った。