某ファストフード店にて。
「なんで僕たちが2人で会うことになってるんですか。」
「声掛けた張本人が何故か現れないからだね。」
テーブル席で向かい合わせに座っている2人。孤爪と月島は黒尾に呼び出された。
しかし、黒尾不在の為この2人の組み合わせになったのだった。
「わざわざ宮城から?クロと一緒にこれば良かったかも」
「いえ、この三連休 従兄弟の家に来てたので。それに黒尾さんに会いたくて来たわけじゃありませんから。」
「そうなんだ。てっきり月島はクロが好きなのかと思ってた。」
「何言ってるんですか?というか孤爪さんこそ黒尾さんと仲良いですよね?付き合ってるんじゃないんですか?」
お互いにこの人嫌いかも…と思い始めた頃に黒尾からのメールが届いた。
『すまん、寝坊した。先に例の件話しといて!』
タイミングよく届いた黒尾からの文を読み月島が口を開いた。
「例の件ってなんですか?…まぁ何となく予想はついてますけど」
「なんだ月島も聞いてたの?おれだけだと思ってたのに…クロだけじゃなくて月島までとか…」
「それで僕の赤葦さんの件なんですけど〜」
「ちょっとまって。その前にハッキリしときたいことがある。」
「同感です。」
2人の赤葦自慢による牽制は長くなるので割愛させていただくが、最終的に
「彼氏のくせに変化に気づけない木兎には任せられない」
「赤葦の為に集まったのに寝坊する黒尾にも任せられない」
ということで2人の争いは幕を閉じた。
「本題に移りましょう。ちなみに僕は2週間前の水曜日に電話で相談されたんですけど、孤爪さんはどうなんですか?」
「おれは1週間前の月曜日。駅でたまたま会った時。」
否、2人の争いは続いているようだ。
「ストーカってどんな人だと思いますか?」
「京治ファンの女の子…とかだったらまだマシだけど。京治だからね…」
「赤葦さんを狙ってるストーカー野郎って可能性も高いってことですね。赤葦さんに手出される前に何とかしないと…」
孤爪は月島の心配しているようなことはあまり気にしていなかった。
そんなことより相手がもし京治のいう条件に当てはまってしまったら…
ストーカーくらい京治なら愛だとか言って許容しかねない。
これ以上ライバルは増やしたくないし、どんなやつか分からないのを京治の傍には置きたくない。
と孤爪は1人焦っていた。
「でも私物が無くなるってことは内部犯ですよね。梟谷の生徒なんて面識ないし他校の僕らより木兎さんのが早くないですか?一応今は彼氏だし…今はですけどね!」
「おれも思ったけど京治が木兎さんにバレたら相手に何するかわかんないから黙っててって。」
「そういう事ですか…」
「京治の心当たりとか聞かないとわかんないよ。会えるかな…聞きに行く?」
「その必要はねーよ。」
そこで黒尾がやってきた。
「悪い悪い。昨日遅くまで赤葦と話してたから寝坊したわ。んでストーカーの件聞いといた。」
「は?」
「クロ、抜け駆けとか良くない。」
黒尾の寝坊した言い訳に月島も孤爪も苛立ちを隠さず黒尾を責め立てた。
「ちょっと待てお前ら、俺この中で最年長なんだけど?」
「関係ない。おれらも京治のこと好きなの知ってて抜け駆けするなんて…赤葦京治大好き同盟でご法度なの知らないの?」
「なにそれ組んだ記憶ないぞ、そんな同盟!」
「へ〜、じゃあ赤葦さんのこと好きじゃないんですね。ではさっさと身を引いてください。」
「好きですけど〜?てか、研磨のは聞いてたけどツッキーもなの?」
黒尾が少し驚いたように尋ねた。
「はい。赤葦さんは僕の天使です。」
「とか言って月島は略奪が好きなだけじゃないの?」
「何の話ですか〜?…..ていうか聞いてたんですか。」
「合宿の時、木兎さんと話してるとこをちょっと」
完全に話についていけない黒尾を不憫に思ったのかもうお互いこの話題に興味が無くなったのかは分からないがすぐに元の話題へと戻った。
「じゃあ早く赤葦さんから聞いた事全部教えてください、全部。」
「はいはい。わかってるって、まず…」
視線を感じる、まれにシャッター音がする。(主に学校で)
私物がよく紛失する。(主に部室のロッカーに入れてたもの)
帰り道、誰かにつけられてるような気がする。(主に部活の後)
この間靴箱に手紙とチョコレート(手作り)が入っていた。
チョコレートで思い出したが木兎がバレンタインは手作りのが食べたいと言っていたので材料を買いに行かなくてはとおもっている。
「…以上が俺が赤葦から聞いた情報。」
「これ、梟谷の生徒っていうか…ほぼ確実に、バレー部員ですよね…ストーカー」
「手紙とチョコって…まさかだけど京治、食べてないよね?」
「大丈夫だって、赤葦だぞ?電話した時に写真送ってもらったし。ほらコレ」
赤葦に対する認識が黒尾と孤爪では明らかに違い、孤爪はストーカーからの”愛の結晶”を赤葦がどう思ったのか不安になっていた。
写真のチョコレートは一見普通のチョコレートだ。形は少々歪だが、本当に普通。
しかしチョコレートなんて調理過程で何を入れられているかわかったものじゃない。
孤爪はすぐさま赤葦に「絶対食べちゃダメ」と言うメッセージとお高いチョコレートの電子ギフトを送った。
「とりあえずバレー部員が犯人だと仮定して、誰が怪しいと思う?」
「僕は合宿であっただけだし…わかんないですね。赤葦さんと木兎さんくらいしか関わりなかったので…ていうかこれ木兎さんも容疑者では?」
「いや、まぁ確かにあいつもやりかねないけど。俺は1人心当たりがある…」
黒尾の心当たりとは梟谷3年生で元幽霊部員のセッターだった。
1年生の頃はほとんど部活に参加していなかったのだが2年の途中、赤葦が入部したあとからちょくちょく顔を出すようになった。
同じセッターだからボジションを争うわけだしわざわざあのタイミングで来るようになったのはもしかして…というのが黒尾の考えだった。
「でもそれだけじゃ弱いよね。たまたまかもしれないし、京治のプレーをみて自分もまたやりたくなった…とかかもだし。」
「そうだよなぁ…でも怪しいんだよな…」
「と言うと?」
「いや、ただの勘だよ。こいつも赤葦のこと好きなんかなみたいな」
「クロの勘はアテになんないよ。月島のことも見抜けてなかったし。」
「黒尾さん不甲斐なーい」
京治も木兎さんに奪われちゃってるじゃん…という孤爪のつぶやきは月島にしか聞こえなかったようだ。
「でもこうなったら現行犯逮捕しかないよね…木兎さんの電話番号とかわかる?」
「え、知ってるけど、赤葦に言うなって言われてんじゃん。」
「知ってるよ。木兎さんにかけるわけじゃない。」
孤爪は木兎の電話番号を聞き出すと自分のスマホで何やら操作したあと「できた」と呟いた。
「はい、京治の位置情報。」
「なんですかこれ…ハッキング?」
「木兎さんが赤葦のスマホにGPSつけてるから。」
「これ犯罪じゃないの?研磨くん?大丈..「合法だから。」
孤爪の勢いに負けてこの情報についてそれ以上2人は聞かなかった。
「京治、チョコの材料買いに行くって言ってたんでしょ?ほら、多分今買い物中。」
*****
「あの…これって、まるで僕たちがストーカーしてるみたいじゃ…」
「言うなッそれは俺も思ったけど、多分認めたらダメなやつだ。」
「クロ、うるさい。京治に気づかれる。」
3人はファストフード店を出て赤葦のいるショッピングモールに来ていた。
休みの日にまでストーカーがいるかは分からないが赤葦の安全確認!ということらしい。
赤葦はというとバレンタインの特設コーナーで手作りチョコに必要な材料を眺めていた。
どれを買っていいのか分からないようで赤葦が店員に声をかけると男子高校生の客が珍しいからか数人の若い女性店員が寄ってきた。
「赤葦ってやっぱモテるよな、絶対。」
「なんであんなに店員いるんですか1人で充分でしょ!」
「だから2人ともうるさいってば」
やっと買うものが決まったのか店員たちが離れていった。
その時、カシャッとシャッター音が数回 近くで鳴った。
音のなった方を見ると顔は見えないが男子高校生らしき人物がいた。
カメラを向けた先にいるのは…赤葦だった。
「クロ、あれ!」
「おうよ!」
すぐさま立ち去ろうとしたストーカーを黒尾が追いかけた。
あっという間にストーカーは黒尾に捕まえられたがショッピングモール内では目立つので近くの公園に移動した。
ストーカーは黒尾に取り押さえられたまま、孤爪と月島の前に立っていた。
そのストーカーは黒尾が言っていた例の3年生だった。
「さっき何を撮ってたの?」
「別に、なにも」
「じゃあ見せてもらっていいですか?その端末の中。」
「えと…それは」
明らかに怪しい彼が犯人で間違いないと踏んだ孤爪はスマホを奪いあげるといとも簡単にロックを解除した。
「おかしいね。何もとってないって言ったのに、京治の写真がたくさん。」
「それは、その…」
「孤爪さん、それ消す前に僕に送って貰えません?証拠は残しとかないと」
「いいよ。俺のスマホにも送っといて。…みてこの写真、かわいい」
淡々と作業を進める孤爪は写真フォルダを全消去した。
「バックアップとかとってない?印刷は?」
「…..」
黙り込むストーカーの目の前で月島が彼のスマホを持ちながら言った。
「教えてくれないならコレ、修復出来ないようにするしかないですね。…水没とか」
「いっそ木っ端微塵にしてやろーぜ」
黒尾のヤジも飛んできた。
「で、どうしたい?」
孤爪が追い討ちをかけるように言うと
「バックアップは…とった、かも。印刷はまだしてない…」
と吐いた。
それを聞いた孤爪は再びスマホを操作しだした。
「教えてくれてありがとう。次赤葦に何かしたらこれじゃ済まさないから。」
言い終わる前に孤爪はストーカーのスマホを公園の中央にある噴水に投げ入れた。
「あぁ!俺のスマホ…」
「おれもう疲れたから帰るね。あとは2人で好きにして」
孤爪が帰ったあと黒尾と月島もストーカーにこれ以上赤葦に近づくなと釘を刺し帰宅した。
これで一件落着…かと思いきや
赤葦がストーカーされてることもストーカーのことも気づいていた木兎の殺人級のサーブやらアタックやらを受けて彼は再び幽霊部員となったそうだ。
コメント
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木兎さん....w ストーカーを?ぶっころ〜す☆ 研)....何かあそこに変な人いるんだけど。 黒)え? -==͟͟͞͞( ♡◁♡) -==͟͟͞͞┏( ᐛ)┛ニゲロッ
初コメ失礼します! いやぁ...やっぱり主さんの投稿好きだわぁ いつも見させてもらってます!これからも頑張って下さい!