ランス胃痙攣 ドット看病
⚠嘔吐胃痛
ドットSide
始まりはシスコン野郎に対して、オレが怒りを
覚えたところから、──か。
「やっといてくれって言ったのオメェだろ!!」
「は、何のことだか」
何のことだか、とはどういうことだ?
アイツ自身が頼んできたことだ。
それを本人が忘れるだなんて、どうかしている。
本当にわからない、と言っているようだったものだから、一抹の不安を覚えた…否、覚えるべきだった。
その時は腹を立てていて、違和に気付けなかった。
✩ ✩ ✩
結局、夜になっても
アイツは無視を決め込んでいた。
あのスカシピアスが。
オレが注いだ紅茶もいらなかったようだ。
冷めたティーカップがただ1つ、テーブルの上。
そろそろ仲直りしてくれても良いのではないか。
所詮普段通りの口喧嘩に過ぎなかったのだから。
そもそもオレは悪くねぇ。
今回ばかりは、本当に。
癪だがこっちから謝るしかねぇのか、はぁ…。
「…さっきはすまねぇ」
「…」
しかし、アイツはといえば、返事も動きもしなかった。
無視というのも合わず、彼以外そこに居ないのだとでもいうように、ただ青髪がそっぽを向いていた。
何だ?新手の嫌がらせか──?
それしか考えられなかった。
しかし、次の瞬間この考えは一蹴されていた。
アイツはベッドの上で身体をくの字に折り曲げ、腹部を押さえて苦しそうに呻く。
「…ッ、んう゛、ぃ゛」
「!?どうしたんだ!?」
「い゛ッフ───、フ───、
何、でもない。 ッ
さっさと寝ていろ…!!」
震えている声。ギュッと強く手で押さえられた腹。
「はァ!?」
✬ ✬ ✬
ランスSide
今日はずっと胃が痛かった。
それに、視界や背筋が 少し
ふわりふわりとしていた。
胃痛くらい誰もが経験するものだろう。
そのため1日中、1人で耐えた。
不調など人に言うことでもないし、第一、誰かに話したところで何も解決しないのだ。
別に大したことでもない。
当然だが、会話に集中できる筈もなかった。
ドットは机上を片付けてくれたようだった。
しかし、書類や書庫から借り入れた本がどこにあるか分からなくなったのだから、本当に困る。
「何をしてくれているんだ、困るだろう。
コレだから貴様はいつも…」
「やっといてくれって言ったのオメェだろ!」
何故かドットを怒らせてしまった。
だが机を片付けてくれと頼んだ覚えはない。
「は、何のことだか」
「…何でそうなるんだよぉ!」
もしかすると、否、もしかしなくともオレ自身が、頼んだことを忘れたのだろう。ドットは素直に実行してくれたのだ。
それなのにこの言いよう。
悪いのはオレの方であることは間違いなかった。
アイツは意外にも繊細で、紅茶が好きで、仲間想いなヤツだ。非道いことをしたものだ、と自身でも思う。
気付いた時には後の祭り。
だがしかし。
謝るのも何だか癪で、そして胃や腹も痛くて、…
倦怠感も酷くて、考えるのも億劫で。
────だから、何もしたくなかった。
窓から見える暗闇に、
粉状の魔法薬と紅茶に入れるミルクを零したような景色がうつる。それは星屑で、きらきらと瞬き始める。
間もなく就寝時刻だ。
オレたちは各々自身のベッドに寝転がる。
痛みは更に激しくなる。
ぎゅう、と捻り潰されるような腹痛。
冷や汗が伝う。
背筋がぶわぁと寒気に襲われる。
顔は熱いのに、他が寒い。
内側からの痛みにはあまり慣れていないものだから余計に不安になる…
痛い、痛い痛い痛い────!!
胃も腹も全部ぎゅっと痛みに飲まれていた。
「…ッ、んう゛、ぃ゛」
「!?どうしたんだ!!」
「い゛ッフ───、フ───、
何、でもない。 ッ
さっさと寝ていろ…!!」
「はァ!?」
これ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。
自身に言い聞かせる。
そう、何でもないのである。
何でもない?そんな訳が無いだろう。
怖い。痛い。苦しい。辛い。
「何でも、ない…か、らッは、」
しかしアイツは、「ったく…」と呟いたのち、こちらに来て、痛む腹を擦ってくれた。
「は、ぅ、っふ、、
すま、ない…、ん゙ .い゛ッ」
気が付けば、「いたい」だの「たすけて」だの、オレは頭の悪いうわ言を並べながら呻いていた。
「大丈夫、大丈夫」
優しく擦ってくれるドットの手。
身体が温まるようで、不思議と安心する。
「い゙たい、痛ぃ゛、っは. ふ、
えく、ん、ひゅっ、ふ」
「ほら、息詰めんな。苦しいだろ」
─────!
途端、痛みに吐き気が加わる。
「ん゙っ、ぇ、おぇ゛、ふは」
「!!戻しそうか?起き上がるのは無理か、
既に横向いてるし、詰まることもないな。
ここで吐くか?」
しかし、気持ち悪さからえずくばかりで、吐くことはできない。アレ、どうやって吐くんだったか…?分からない、できない…気持ちが悪い、どうする…!!?
「ゔ、っく、げほっんぇ…〰〰〰い゙ッ」
「腹、痛いよなぁ。悪ぃが少しだけ耐えろ」
そう言ってドットは、オレの腹を─────
「悪ぃな、許せ」
「ッぐ、お゛ぇぇ゛、は 、 え゙゛ぇ゙ッ!!!」
────オレの腹を、グッと力いっぱい押した。
「う゛ぇ、ふ、い゙たぃ゙、ぅ゙ッ、グ .ん゙ぇ゙、」
びたびたとベッドに吐瀉物が広がる。
先程食べた夕食だけでなく、昼食までも吐き戻してしまった。
「すまねぇ、ごめん、ごめんな。
これしか方法が無かったんだ」
部屋には饐えたにおいが立ち込め、頬には生理的とも感情的ともつかない涙が伝う。吐いたという事実。罪悪感に駆られた。
「え゛ぇ゙ッ 、は、ふ、ごめ…ん゙ぇ゛ぇッ」
「解った、解ったから喋るな」
そう言ってまたオレの背と腹を優しく撫で擦ってくれる。
気持ちが悪い。どうにもしようがない。
そうこうしているうちに、そろそろ吐くものも無くなって、胃液や唾液ばかりが口内を苦く染めている。
「ぅぶ、、ふ、は、おぇ゛…ん゙ぇ゛」
吐きたいのに吐けなくなって、気持ちが悪い。
だからオレは、自身の口に深く指を突っ込むことで全て吐き戻そうとした。
「ん゙っ!!、ぐ、げほげほっ、お゛ぇぇ」
しかしそれは気分の悪さを助長するだけで、
実際何も吐き出すことは出来なかった。
空嘔吐は苦しい。
刹那。
「!?何してんだよっ!!!!!」
突然の大声に驚き、身体をびく、と震わせる。
「…!!!、ごめ、なさ、ぃ」
「あ、いや、怖がらせるもりはなかったんだ…
体調悪ぃのにごめんな 」
オレだって、分かっていたら
やっていなかったと思う。
「すまな、いッう゛ぅ──、ふ、は、」
「そろそろ吐き気も落ち着いたか?」
「ッは、…あぁ、」
「そっか、水でも飲むか?」
そう言ってアイツは立ち上がった。
遠ざかっていくその背中に不安を覚えた。
「ッ、ぃ゙、〰〰〰」
声を殺して耐える。戻したことでマシになったとはいえ、胃はまだチクチクと刺すように痛んでいた。
「常温でいいかー?」
遠くからくぐもった声が聞こえる、気がする。
じょう、おん…と言ったか?
って、何だ…? あぁ、常温、か。…
「…ッあ゛…げほ、げほっ」
吐いたばかりで掠れる声。
返事のかわりに、くぐもった咳が出る。
それすらドットに届くことも許されず、
部屋の何処かにでも吸収されるかのようで…
部屋の中は吐瀉物の匂いと、
オレの呼吸音で埋められていた。
にしても胃が痛い。 吐いたことで喉が胃酸に焼かれたようだな。 熱いし、寒い。視界はぼやけ、ぐらぐらと夏の日の陽炎のように揺らぐ。
吐いたことによる体力の消耗。
オ レ は 意 識 を 手 放 し た 。
つづく
コメント
20件
体調不良系は神だぁァァァァァァァ ドットくんかっこよ!! 弱ってるのもいいですねぇ……
コメントと見るの遅れた〜!! ほうほうこれがノベルか〜 やはりランスとドットのペアは良いなぁ〜
( ̄┓ ̄)ゲフッ 最高すぎて言葉が出ない、、 いつもランスと喧嘩してるのに優しいとか神すぎて○んじゃう、、 チ───(´-ω-`)───ン