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サイド トキ
社会的にあいつを殺す。キリさんはそう言った。
「っ……そんなこと、出来る訳ない…!」
僕は無理矢理体を起こす。
体格差もあるのに、あいつの隙をつくなんて無理だ。
逆にこっちがやられてしまう。
もし、僕を助けてくれたこの人たちに何かあったら、どんなお詫びをすればいいか……。
止めないと。
「カギが……大人様に何したかわかってんのかぁ?」
背筋が凍る。
「っあ……」
助けなきゃ、いけないのに。
怖い。体が、動かない。僕が、しっかりしないといけないのに。
「おじさんこそ、自分が何したのかわかってる?」
ルネさんが一歩、前に出る。その顔には人を馬鹿にしている笑みが浮かんでいた。
「おいおい、お前たちもあいつと同じ目に遭いたいのかぁ?」
それに負けじとあいつも醜悪な笑みを浮かべる。
ぞっとした。
『なんで捕まってねぇんだよォ?』
「?!」
突如、あいつがさっき僕に言った言葉が近くで響いた。
見ると、キリさんのスマホからあいつが動く映像が流れていた。
「ごめんね、これ撮ってたから助けるの遅くなって」
撮影されていた?全然気づかなかった……。
「あ、そうそう」
ルネさんがにこやかにとんでもないことを口にする。
「一部始終、全部生配信してたから。早く逃げたほうがいいんじゃない?」
「んなっ…………!」
「ほらほら、早くしないと捕まっちゃうよ〜」
ルネさんは一歩、また一歩とあいつに近づいていく。
それが、かなり不気味だった。
「───────♪」
「………………!!」
彼があいつの耳元で何か囁くと、あいつは今まで見たことのない顔をして慌てて逃げていった。
「あとは大人に任せよーぜ!」
キノさんが笑顔でそう言えば、二人とも返事をして頷いた。
「ほら、トキもおいで?」
「あ……は、い…………」
あいつはこのまま捕まるのも時間の問題だろう。
僕は、どうやら二度も助けられたらしい。
だけど、なぜか喜ぶ気持ちにはなれなかった。
なぜなら、ルネさんがあいつに囁いた言葉は、
「なんで捕まってねぇんだよ?」
「なんで捕まってねぇんだよ?」
あいつが、僕に言った言葉だったから。