TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

プロローグ

視界いっぱいに広がる白。

空も地面も境目がなく、まるで世界が塗りつぶされたキャンバスの上に立っているようだった。

体は軽く、息も整っている。けれど、どこか現実感がない。


「……あー、これ、もしかして」

「はい、死にました」


唐突に声が響いた。振り返ると、純白のローブをまとった青年が立っていた。金色の瞳に銀髪、背後には柔らかな光が差している。


「私は神です。あなたは、勤務先での過労により心臓が停止しました」

「あー……やっぱりか」

「お仕事は……ええと、週に何時間ほど?」

「百ぐらい」

「……人間は壊れますよ、それ」


神はため息をつき、少し申し訳なさそうに続けた。

「本来なら、あなたには十数年の寿命が残っていました。しかし我々の“魂管理システム”の不具合で、寿命を調整しきれず……」

「魂にもバグあるんだな」

「……はい。そこでお詫びとして、異世界への転生をご提案します」


「異世界ねぇ……」

「はい。能力は自由に設定できます。戦士でも魔法使いでも、望むままに」


俺は少し考えてから、即答した。

「じゃあ、働かずに暮らせる力」

「……はい?」

「冒険とか戦争とか、そういうのは勘弁。日向ぼっこして、うまい飯食って、昼寝するだけの人生」

「……つまり、戦う力は不要ということで?」

「いや、面倒事はごめんだから、一撃で片づけられるくらいの力は欲しい」

「……随分と贅沢ですね」


神は苦笑し、手元に金色の本を開いた。ページから光の粒が舞い上がり、俺の身体に吸い込まれていく。

「全能力MAX、無限成長、寿命無限、病気無効……どうぞお好きにお使いください」

「お、サービスいいな」

「ええ。ただし――」


神は意味深に微笑んだ。

「世界があなたを放っておくとは限りません」


光が強まり、視界が真っ白に塗りつぶされていく。

最後に聞こえた神の声は、どこか愉快そうだった。


「のんびりできるといいですね……」


『世界最強だけど昼寝がしたい』

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

6

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚