「華紅羅〜。起きなさ〜い!」
ベッドからのそのそと起きた華紅羅は、時計を見て目を見開いた。
「えっ、、あ”ぁあっ?!!遅刻すんじゃんっ!!!!」
華紅羅は飛び起き、2階を降りた。
「お母さん、お父さん、おはようっ!!ご飯はっ?!」
食器を洗っていた華紅羅の母 守が台を指差す。
「そこにあるわよ。早く食べてね〜。」
「おはようさん。良く寝れたようだなぁ?華紅羅。」
父の豪爾が笑いながら、軽く嫌味を言う。
「ごめんって〜。」
すると、外から華紅羅を呼ぶ声が聞こえた。
「華紅羅さ〜んっ!!!はーやーくー!!!!」
「はっ?!やばい、早くしないと!いただきます!!」
華紅羅は急いで朝ご飯を食い、カバンを持つ。
「じゃあ、行ってきまーすっ!!!!」
「『行ってらっしゃ〜い!!』」
華紅羅が外に出ると策の向こうから同じ中学の同級生 山神 炎仁と、その弟 冷仁が居た。炎仁が目付きの悪い顔でこちらを睨む。冷仁は満面の笑みでこちらに手を振っていた。
「おはよう、2人共!!待っててくれてありがとねっ!!」
「何で待たなきゃなんねぇんだよ、、。遅刻するっての、。」
頭を掻きながら、炎仁は学校へ向かった。
「もう!!兄さぁんったらぁ〜!せっかく近所なんだし、いいじゃんかぁ!ねぇ〜!!」
「ねぇ〜!!」
2人が笑い合っていると前を歩く炎仁から舌打ちが聞こえる。本当に、兄弟と思えないような性格の違いだ、華紅羅はそう思った。
「うわぁ、。体育、今日からサッカーだぁ、、。」
「良かったなぁ?得意分野で。」
「真逆なんだけど、、。得意なの兄さんじゃんかぁ!」
「私らって何だっけ?」
「バレー。」
「バスケ、やりたーい。」
「文句言うな。」
「炎仁は、運動何でも出来るから良いな〜。」
「その代わり頭が、、。」
「黙れ、冷仁。」
3人は学校の校門を潜りながら体育の話で盛り上がった。
華紅羅と炎仁は同じクラス。2人が教室に入ると殆どが既に来ていてガヤガヤと騒いでいた。
「うるせぇなぁ。」
「いつもの事じゃん?ああっ!弥瑠希ちゃん、おはようっ!!!」
華紅羅は自分の席の隣に居た芦ケ谷 弥瑠希に話し掛ける。
「おはようっ!!珍しいねぇ〜、この時間帯に来るなんて〜!」
「あはは、。」と苦笑いし、自分の席に座る。すると、廊下から担任の山橋 緑が入って来る。
「はーい、おはよう。電気は付けようなぁ?」
教室の電気を付けつつ、教壇に資料を置いた。
「山ティー!朝、何食べたぁ?」
「んー?パンと牛乳。」
「俺今日、ピザ食った。」
「ふっ、うぜぇ〜!」
緑はノリが良い。そして朝のホームを始めようとした時、早くも寝ている奴が居た。
「…おいっ!!炎仁っ!!!!寝るのが早いぞっ?!!!」
「……帰りてぇー、、。」
「だが断る。」
そして、この学校は変わった奴が多い。
そうして、あっという間に下校の時間帯になり、皆がゾロゾロと帰り始めた。
「ふわぁ〜、、ねっむ、。」
背伸びをしながら華紅羅は、友達と歩いて行く。
「今日のさ、炎仁の見たー?!」
話し掛けて来たのは、同級生の轟鬼 光輝は体育の話題を持ち掛けた。隣に居た炎仁は鼻に絆創膏を貼られている顔を顰める。
「あ〜、あれねぇ〜!やばくない?哀れだったわぁ〜。」
「1ミリも思ってねぇくせに。」
炎仁は鼻を抑えながら華紅羅を睨み、冷仁がどーどーと宥めた。
「だって、wwあれはっ、アッハッハッハッハッwww」
「思い出し笑いすんじゃねぇよっ!!!!」
それは5時間目の体育をしていた時の話、チームに別れバレーをしていた。その時のチーム戦で弥瑠希がサーブを打つ事になった。しかし、打ちどころが悪かったのか有らぬ方向に飛んで行き、それは見事、味方側である筈の炎仁の顔面に直撃した(しかも、豪速球)。
「しかも弥瑠希ちゃん、バレー部だから力強いしww」
「これで弥瑠希には6回目だなww」
「お前らなぁっ!!めっちゃ痛てぇんだぞっ?!!!」
「まあまあ。」
いつも通りの話をしながら4人が帰っていると、山に続く脇道から1人の女の子が走って来る。
「おーねぇーちゃーんっ?!!!!」
女の子の呼ぶ声に気付いた4人が振り返った。
「あっ!!蘭ちゃんっ?!」
「おぉ。クソガキ、何の用だゴラァ?」
「コラッ!!!!」
小さな子供にまでガンを飛ばす炎仁を華紅羅が小突く。女の子こと未神 蘭華は泣きそうな顔をして華紅羅に抱き着いた。
「白が、彼処の中に入っちゃったぁあっ!!!」
「彼処って、、、まさか、、?!」
華紅羅と光輝、冷仁が顔を見合わせた。
「もしかして、山ん中にある屋敷?!」
冷仁が焦り、蘭華に聞くと蘭華は泣きながら頷いた。
「……うん、、白がね外に出てたから一緒に遊んでたんだけど、。急に白が山の中に入ってって、あの家の中に入ってちゃったの、、。」
炎仁は蘭華を横目に舌打ちをし、屋敷がある山に歩いてった。
「えっ!ちょっと、炎仁ぃ?!!」
「要するに、見つけて捕まえろって事だろう?さっさと、行こうぜぇ。」
すると、蘭華は急いで炎仁の制服の袖を引っ張った。
「ち、違うのぉっ!!白が入った時、私も入ろうとしたの、1階のところまでは行けたんだけど、2階から、、大きな音がして!そしたら、変な声が聞こえて来て、、怖くなって、!」
声が震え、怯えきった蘭華の背中を光輝が摩る。
「結局、行けって事じゃねぇかよ。」
「もう?!あんたほんと、サイテーっ!!!!!!デリカシーゼロ、分からず屋っ!!!!」
「うるせぇなぁ、。」
「動物とかじゃ、無いの?どんな声だった?」
「多分、違う、、。人っぽい感じだった、。」
「んなら、ぶっ飛ばせば良くね?行くか。」
屋敷の方に歩みを進めながら、指を鳴らす。
「人間とは限らないよ?兄さん。」
「熊ぐらいなら、行けるぞ。」
「結局、行くんだ、、。あ、蘭ちゃん?」
華紅羅は蘭華に近寄り、身を屈める。
「うちらの親には伝えないでね?多分、めっちゃ、怒ると思うから、、。それに直ぐ、戻るしね!」
「でも、、。」
「俺の兄貴には、言っていいぞぉ?」
足を止め、振り返る炎仁。
「……でも私、ケータイ持ってない、、。」
「咲奈先輩に聞いたら良いよ。絶対、知ってるから。」
すると、蘭華は頷いて、
「分かった!…白の事、宜しくね、、。」
蘭華は住宅街へ走って行った。
「さて、、、炎仁は何処?」
「もう、行ってるよ?」
「はっやっ?!!!!」
屋敷に辿り着いた炎仁は屋敷全体を見渡す。その時、屋敷の2階から蘭華が言ったように物音がした。
「やっぱ、動物じゃね?」
2階の窓に何かが通った。炎仁は目を見開く。辺りが暗くなっていたのもあるが、黒いしかも結構デカい何かが窓を横切った。
「おーい!炎仁ぃーっ?!!!」
華紅羅の呼ぶ声に炎仁は振り向く。
「炎仁、どうしたよ?そんなおっかない顔してぇ。」
光輝が問い掛ける。炎仁は、少し考えたが先程の事を正直に話した。
「………じゃぁ、ここの中に、でっかい何かが居るって事?やっぱり、熊なん?!」
「かもな、、。」
「取り敢えず、中に入って白ちゃん、探そう?」
4人は塀を越え敷地内に入った。
「兄さん?僕多分、走れないからその時は宜しくね。」
「任せろ。」
光輝が扉に手をかけるが、扉は開かなかった。
「あれ?蘭華って、こっから中に入ったじゃないん?開かねぇよ?」
「退け。」
炎仁が割り込み、ドアノブに手をかけた。
「蘭ちゃん、どうやって入ったのかなぁ?」
「どっか、穴があるとか?」
3人が悩んでいるとその時、ガコンッと音を立ててその方向を見ると、炎仁がドアをぶち破っていた。
「あ”ぁあ”ぁぁ”ぁっ?!!!!!兄さぁあんっ?!!何、やってるのぉおぉぉーっ?!!!!!!!」
「あのバカっ!!!!!!!!」
「アッハッハッハッハッwww!!!!!!」
「うるせぇぞっ!!!いいから、入れってのっ!!!!!」
炎仁はズカズカと屋敷内に入り、3人もそれに続く。
中はボロボロで崩れかかったところもあった。
「ケホッケホッ、、!ホコリ塗れじゃん?」
「クッソ、、白猫、何処だ!」
「そんな顔じゃあ、出てこないでしょ。」
4人が扉から入って直ぐに広間があった。真ん中には高そうなテーブルに囲むように置かれたソファ。その奥には暖炉が置かれ、古びた時計もある。しかし、殆どホコリを被っていた。
「……これは、兄さんに怒られるな、。」
「だろうな、。」
2人が顔を顰めた。
「英仁君、怒ったら怖いよね〜。」
「あの人って、何年生だっけ?」
「兄貴は、高校2年生。」
「咲奈先輩とはLINE繋がってるよね?」
「おお。兄貴が入学した瞬間にライン、交換したってさ。………どうするよ?」
広間の両端に扉がある。それを見比べて、炎仁は光輝に聞いた。
「手分けして、白を探すか?」
「うん、そうだね!」
「僕、今日命日になるかもしんない。」
「じゃあ、俺と行くか?」
「行くー!」
「じゃあ、うちらはこっちか。」
「おk。」
炎仁と冷仁は左側の扉へ、華紅羅と光輝は右側の扉に向かった。
「何かあったら、ラインか電話なっ!!」
「『了解。』」
「もし、スマホが使えなくなったら、叫べ。」
「わかった。」
「よし、俺の美声を響かせてやるか。」
「お前は死ね。」
「えっ、酷っ。」
炎仁と冷仁はドアを開け、奥へ進む。所々、床が抜けそうな場所を避けつつ、歩いて行った。
「ここは、2階に続いてるが、、。」
すると、2階から物音がする。2人は顔を見合わせ、上へ向かう。
「やっぱり、誰かか何かが居るね。」
「おぉ、そうだな。」
炎仁は2階にそっと顔を上げる。
何かが見えた。
あれは、布?いや重そうな感じだった。それに黒い。
「どうしたの、兄さん?」
「今さっき、変なの通ったな。」
その言葉に「えっ?!」と声を上げる冷仁の口をすかさず覆う。
「バカっ!静かにしろっ?!(小声)」
「ご、ごめん、、。(小声)」
ゆっくり2人は角に消えて行った何かを追い掛けた。炎仁は直ぐに壁に張り付いて角の向こう側を見る。冷仁もそっと覗き込んだ。
「ひっ、、。」
冷仁が短い悲鳴を上げる。
そこには、開いたドアの中へ引き摺るように消える黒い何か。そして、ドアは独りでに閉められた。
「バケモンみてーだな、、。」
「ちょ、兄さん?!」
炎仁は閉められたドアに近付き、ドアノブに手をかける。しかし、ドアには鍵が掛かっており開ける事は出来なかった。
「チッ、、マジかよ、、。」
「兄さん、、やめて、怖いから、、。」
冷仁は度胸のある兄を宥めつつ、近くの扉に手をかけた。
「あっ、こっち開くよ。」
「ん?」
2人は部屋に入り、扉を閉める。そこには、ベッドとクローゼットの質素な狭い部屋があるだけだった。しかし異様に違うのがベッドの上に染み付いた黒い染み?のようなもの。炎仁が近付き、直ぐに離れた。
「に、兄さん?どうしたの?」
冷仁の目を手で隠し、部屋から出る。
「見なくていいもんだ。分かんだろ。」
「……あぁね、、。」
そう、ベッドの上にあったのは所々の部位が無くなった人の死骸。
「ここの家主さんかな?さっきのがやったの?」
「そう言う事に、なるな?」
2人が廊下で話し合っているとベトッと床に水が滴った。
「ん?……今日って雨だっけ、。」
炎仁は屈み、床に落ちた水を摩る。
しかし、それは水と言うよりはベトベトの液体のようなものだった。
「おかしいよ?今日はは、れ、、、。」
冷仁の言葉が止まったのに炎仁は冷仁の見る天井を見上げた。
そこには居た
一部だけ黒く染まり、中央に笑顔の仮面が炎仁を見詰めている
仮面のそれは無数の腕を伸ばし、炎仁と冷仁に近付けていく。震える手で炎仁の袖を掴む冷仁。炎仁は冷仁の腕を強く握った瞬間、
「避けろっ!!!!」
仮面のそれは炎仁と冷仁目掛け、真っ逆さまに落ちて来た。2人は急いで避け、炎仁は冷仁を背負う。
「兄さん!急いで急いでっ?!!!!!」
「分かってらぁっ!!!!!!」
全速力で1階に向かう2人。しかし、黒い物体が無数の腕を伸ばし身体を引き摺りながら追い掛けて来る。
「え”っ?!兄さん、速く、速くっ?!!!!」
その物体の身体中に笑顔の仮面だけでなく沢山の表情の面が張り付いていた。
あと少しで黒い物体の腕が冷仁に当たりそうになった時、
「捕まってろっ!!!!!!」
「えっ?!ちょっ、ちょちょちょちょっ?!!」
その瞬間、炎仁は床を蹴り上げ壁キックで黒い物体の間を飛び越えた。
黒い物体が振り返る前に階段へ向かった。
「あっ!階段!!」
「よしっ!このまm、、ばっ?!!!」
階段まであと一歩の所で耐えきれなくなった床が抜け、炎仁と冷仁が落ちた。落ちた場所は、1階の小さな部屋だった。
ドォンっ!!!!!!!
炎仁は腰を擦りながら急いで立ち上がり、ドアノブを回す。しかし、ドアには鍵が掛かっており開く事はなかった。
「いってぇー、、くそっ!」
「兄さ、ん”っ!!」
胸ぐらを引っ張られクローゼットに押し込まれる。炎仁は自分も入ると直ぐドアを閉め、隙間から外を覗く。すると、抜けた天井からあの黒い物体が顔を出し、降りて来た。
ズルズルと滑り落ちる形でドスンと床に立つ。
炎仁は隙間から黒い物体を覗く。しかし次の瞬間、黒い物体は急にクローゼットの方へ向く。
「っ?!!!!」
冷仁は両手で口を抑え、炎仁は額から汗が流れる。案の定、黒い物体は乱暴にクローゼットの扉を開けようとする。何とか開けさせまいと内側から炎仁と冷仁はドアノブを引っ張る。
「兄さんっ?!!!これ、まずくないっ!!!」
「あぁっ!!!まずいなぁっ!!!!」
懸命に抑えるもメキメキと扉が崩れていき、もうダメかと炎仁は冷仁の前へ出たその時、後ろから鈴の音がする。その音に反応した黒い物体は身体を廊下へ向ける。炎仁と冷仁は「あっ」と同時に呟いた。ドアの向こうに居たのは廊下を横切る白い猫の姿。正しく蘭の白だった。白が涼を鳴らしながら廊下を横切り、!それを黒い物体が勢い良く追い掛けた。
「あっ!!あの猫っ!!!!」
「あぁっ!!!兄さんっ、待ってってぇっ?!!!」
炎仁が黒い物体を追い掛けようとしたのを腰にしがみついた冷仁が必死に止める。
「兄さんっ!取り敢えず、華紅羅さんや光輝さんと合流しよう!ねっ!!」
「チッ、、。」
炎仁は黒い物体と白が消えて行った方向を睨み、華紅羅たちが居るであろう玄関へ戻った。
その頃、華紅羅と光輝は、、
「なんか、すんごい音しなかった?」
「やべぇー、炎仁がメガシンカしたんじゃないか?」
「ちょっ、やめてよ。あいつがメガシンカしたら、ここ消し炭になるじゃない!」
「ほんまや。」
なんて冗談を言い合い、前へ進む。しかし、何処も鍵が掛かっており、入る事が出来ない。
「ここもハズレだわ、。」
「マジで?最悪ね、。」
光輝はスマホのライトを頼りに前へ進みある物を見つける。
「あ。」
「あ?」
「ほら、これ。」
床にはヒビが入り、バラバラになった皿があった。しかも所々に赤黒いものが染み付いている。
「……………え?何これ?血?」
「手形だな、。」
華紅羅は割れた皿の1部を手に取り、裏返す。それには血で『4』と途切れだが2と書かれているのが分かる。
「………よくよく見ると、、。」
光輝は辺りを照らす。窓にはヒビが入り、床が抜けている所や壁中に引っ掻いたような後がある。
「ここの人か、な、?」
「これら全部持って行こうぜ。冷仁なら分かるだろ。」
「だね!」
すると、また大きな音が鳴り振動が伝わる。
「早く、、戻るか、?」
「で、すね、。」
「と言う事があった。」
いつもより一層に険しい顔をした炎仁が事の経緯を話し終える。華紅羅と光輝は口を開けて聞いている。そりゃあ現実的には信じ難い話だ。
「えっと、、こっちじゃぁ、これ見つけた。」
華紅羅は拾って来た皿を一枚一枚綺麗に置いていく。
「『4274』か、、、冷仁、分かるか?」
「うん、番号だね。」
3人が?を浮かべる。
「こういうのは大体、何かのパスコードなんだ。」
「つまり、どっかにこのパスコードを打つ場所があるって事か?」
「ああっ!!!」
冷仁が何かに気付き、立ち上がる。
「どうした?」
「兄さんっ!!あの部屋の先、何があった?!!」
「えぇ、、あぁっ!!あそこかっ?!」
「そうだよっ!!」
「あの、。」
「2人で解決すな、、。」
「あっ、ごめん、。」
2人が隠れたクローゼットのある部屋を出て奥の部屋には厳重にロックされた扉があったのだ。しかし、その下には小さな通気口があり、もしかしたら白が扉の奥に行っている可能性がある事を冷仁が話した。
「でも多分、あの仮面の怪物も居るよね、。」
「おお、居るだろうな、。」
「……マジかぁ、、。」
「なんか、弱点とかって無いの?」
「ある訳ねえだろ。」
「ここかぁ、、。」
「うっわ、。」
「パスコードを打ち込むようなところねぇな。」
「こっちは鍵なんじゃね?」
すると光輝は前に出て厳重そうな鍵穴の前に膝まづいた。
「何?ピッキング?」
「YES。」
光輝はそこら辺で見つけて来た針金を取り出し、鍵穴に差し込んだ。
「そんな都合良く開くかよ。」
ガチャッ
「開いたね、。」
「何でだよっ?!!」
光輝はへへっと笑いながら扉を開ける。
「俺、こういうの好きだからよ。」
「ハッキングも好きだしね。」
ギィキィと音が鳴り響き、下に続く階段がある。
「おうふ、。」
「いかにも、なんか居そうな雰囲気。」
「居るんだよ!」
炎仁はズカズカと下へ降りる。慌てて3人も降りて行った。
「炎仁ぃ!!危ないから、1人で行くなってぇ!!!」
炎仁は華紅羅の愚痴にはお構い無しに前へ進む。次第に広い場所へ辿り着いた。
全体がコンクリートに囲まれ、巨大な牢屋が真ん中にある。
「ん、あ。」
冷仁が前へ進み、ある物を広い上げた。その物に炎仁はゲッと顔を引き攣らせた。
「これ、怪物の仮面だ!」
「おいおい!持ってくんなよっ?!!」
「何で、そんな簡単に出来るのっ、?!」
この兄弟は異常だと再認識する華紅羅と光輝。しかも、冷仁はその仮面を大事そうに抱える。
「それが黒い物体の仮面?」
「そう。」
「捨てろよ、そんなもん。」
「ヤダよ!せっかくの証拠品なんだから!!」
その時、地面が揺れる。
「うぉっ、!」
「あ”っ?!あれっ!!」
華紅羅が牢屋の中を指さした。3人も目線を牢屋へ向けると奥の方に白い毛玉が丸まっていた。
「あぁ〜っ!!!白ちゃんっ!!!!!」
すると耳をピクリと動かし、白が起き上がった。
「あそこから入って来たのか。」
光輝が牢屋の中の通気口を見る。しかし、牢屋の扉は機械が取り付けられており、開ける事が出来ない。
「あっ、ここのパスコードかっ!!」
「早く打ち込めっ!」
「分かってる!」
華紅羅は『4274』を打ち込む。すると、ピロンと音が鳴り、機械が外れた。しかし、その時だった。冷仁が牢屋に入り、華紅羅らも牢屋に入ろうとした時、扉が勢い良く閉ざされてしまった。
「えっ?!ちょっ、ちょっ?!」
それと同時に天井から黒いシミ、そしてあの怪物が姿を現した。
「なっ、何だこれっ?!クソっ!!!」
炎仁が力一杯引っ張っても扉はビクともしない。
「パスコードは?!パスコード打てっ!!」
光輝が声を荒らげた。
「な、何度も試してるっ!!けど、開かないっ!!!」
「クソッ!!!!!冷仁っ!逃げろっ!!!!!」
「む、むむむ、無理だよっ!!!!!僕、運動神経悪いしっ!!!」
黒い物体は地面にベチャリと堕ち、冷仁を無数の仮面で見詰めた。そして勢い良く冷仁に飛び掛る。
「冷仁っ!!!避けろっ!!!!!」
「うわっ!!!!!」
間一髪で冷仁は怪物の飛び付きを躱し、白の元へかけた。炎仁は急いで1階に向かう。
「あいつ、何取りに行ったんだ!!」
「多分、ヤバいの!!」
「冷仁っ!!!出来るだけ逃げろっ!!!!!」
「わっ、分かってるっ!!!!!!」
冷仁は白を抱えようと近付くと白のお腹の下に紙切れを見付ける。
「あっ、!!!華紅羅さんっ!!!!!『4771』!!!!!!」
「えっ?!!!」
「『4771』って打ち込んでっ!!!!!!!」
「分かった!!!!!早くこっち来てっ!!!」
冷仁が白を抱えよ、出口に向かおうとした時、怪物が行く手を阻み、進む事が出来ない。
「ちょっ!!!」
「開いたっ!!!!!冷仁っ!!!」
見事開いた扉を開け、華紅羅と光輝が冷仁を呼ぶ。しかし、冷仁は怪物のせいで前へ進めない。
「退けぇーーっ!!!!!!!!」
そこに現れたのは木の柱を持って走って来る炎仁の姿。
「はっ?!!炎仁?!!!」
炎仁は一目散に牢屋の中へ入る。
「俺の弟に手ぇ出すなぁーっ!!!!!!!」
勢い良く木の柱を怪物へ投げ付けた。その木は見事怪物の顔面部分を貫き、怪物はこの世のものとは思えない断末魔を上げ顔を左右に振った。
「冷仁っ!!!!来いっ!!!!!」
「うんっ!!!」
「2人、こっちっ!!!!!」
炎仁は冷仁を先に行かせ、階段前で立ち止まる。
「光輝!!ライターっ!!!!!」
「え”っ!!」
光輝は嫌そうにしつつもポケットからライターを取り出し炎仁へ投げ渡す。ライターをキャッチした炎仁はライターに火を付け、暴れる怪物へ投げ捨てた。
「Just Die(ここで死ね).」
ライターは怪物に突き刺さった木に引火し、辺りも燃やして行く。
「炎仁っ!!!何してんのっ!!!!!」
「おいおいっ!!まじで捕まるぞっ!!!」
「けっ!知るかっ!!!」
4人が外へ出た時には煙が立ち込め、館の半分が燃えていた。
「見つからなきゃ、良いんだよ。」
「マジか、こいつ、、。」
炎仁の度胸に引き気味の華紅羅と光輝。
「兄さん、ありがとね。」
「ん?ああ、どうって事ねぇ。」
「早く離れようぜ?警察が来ちまうし。」
「だね!私、絶対お父さんに怒られるな、。」
「言わなかったら良いだけだろ?」
「僕らも兄さんに見つかったら不味いね、。」
「それは不味い、、。」
4人はその場を離れ、館は轟々と燃えていた。
全員帰宅、、、山神家にて、
「…………………。」
「…………………。」
「…………………。」
冷仁と炎仁は正座で座り、2人の兄 英仁は仁王立ちで腕を組み2人を見下ろしている。顔が炎仁と瓜二つなため、物凄く怖い。
「で?こんな時間まで、猫を探してた、と?」
「『はい、、。』」
すると、英仁はテレビを付ける。そこにはニュースで先程炎仁らが居た館の火災事件が流れていた。
「たった今ここの近くの家の火災事故が起きた。それと同時にお前らも帰ってきた、、。」
「う”っ、、。」
2人共、苦虫を噛んだような顔になる。英仁は冷仁のように頭が良い上、察しも良い。英仁は冷たい視線を2人に浴びせる。
「正直に言った方がいいんじゃねぇか、、?」
「で、でもぉ、、。」
「やっぱり、あの家を燃やしたのはお前らか?」
英仁の顔がより一層険しくなる。
「ごめん、兄さん。」
「多分、信用してもらえないと思って、、。」
2人は白を探すために入った館での事を全て話した。英仁は疑う訳でもなく、ただただ無言で聞いていた。
2人が話し終えると、英仁が立ち上がる。ビクリと肩を跳ねらせた2人を放っておいて冷蔵庫から晩御飯を出し始めた。
「に、兄さん、?」
「ほら、食え。腹減ってるだろ?疲れたあとはちゃんと栄養も摂る事だ。」
「兄さんっ、、!」
なんとか、英仁は信じてくれるようだった。炎仁と冷仁はホッとしてテーブルにつく。多分これは華紅羅家や轟鬼家も同じな筈だ。
これで黒い物体は館と共に消えて無くなった
筈だった、
END