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海人side
そして遂にクリスマス。
俺はいつになくハイテンションで家族に冷ややかな目で見られていた。
「海人、アンタ大丈夫?」とお母さんに何度聞かれたことか。
課題を秒で終わらせ、SNSでクリスマスデートやらかんやらしている写真を眺める。
俺もいつか、紫耀とこういう風にできたらなぁ。そう思い、先日買ったプレゼントをチラリと見る。店員さんの手によって丁寧にラッピングされたそれは遂に出番が来たというように光り輝いていた。
俺の耳にも紫耀とお揃いのピアスが付いている。気に入ってくれるといいなぁ。
適当に過ごしているとあっという間に四時四十五分になった。
変ではないとは思うけど一応身だしなみを整えて、コートを着て、マフラーを巻く。鞄にスマホをぶち込み、プレゼントは丁寧すぎるほど丁寧に入れた。公園までは五分ほどで着く。五分前にはついていたいからもうそろそろ出ようと玄関まで行く。
家族に一応、一言行って家を出ると、冷たい空気が俺の体に当たってくる。マフラーをつけてきて良かったかもしれない。俺は公園まで歩いた。
公園に着いたが、まだ紫耀の姿はなかった。五分前だから当たり前か。と俺は近くのベンチに座る。
寒さで冷て氷のように冷たかった。しばらく紫耀の家がある方向をボーっと見つめる。
何度かここで遊ぶ約束をした時があった。その時もこうやって待っていたなぁ。
そうして待っているうちに紫耀が来た。首には赤いストーンがついたネックレスをつけている。昨日のこともあって、寂しそうな顔をしている。
「ごめん。待った?」
作り笑いをし、俺の隣に座る紫耀。よく見ると目の下にうっすらとクマができている。
「ううん。大丈夫。ていうか顔大丈夫?寝不足なんじゃない??」
俺は心配して聞いてみる。
紫耀は少し考えて「今まであんまりちゃんと寝れなかったから……」と答えた。
姫花さんにずっと拘束されていたのかもしれない……。ここはちゃんと元気を出してもらおう。
「こんな状況で悪いんだけどさ。これ。クリスマスプレゼント。」
俺は例のプレゼントを紫耀に渡す。紫耀は驚いて言った。
「いつの間に…!?だって、別れてなかったらあげられなかったじゃん……」
「俺、信じてたんだよ?いつか紫耀がちゃんと戻ってきてくれるって。」
告白だって気づいてくれるかな…あーダメだ。プレゼントに集中しちゃってる。俺、遠回しに言い過ぎなのかなぁ。
「俺も…姫花さんにナイショで海人の分、買ってたんだ。」
そう言って紫耀はゴソゴソとカバンの中を探す。すぐに丁寧にラッピングされた箱が出てきた。
「はい、これ。似合うかわかんないけど……」
俺はそれを受け取る。黄色と赤とオレンジのチェック柄の包装紙に包まれた横長の箱。少なくとも、指輪ではない。
「開けていい……?」
中が気になったので聞いてみる。
「いいよ。じゃあ、俺も開けちゃおうかな。」
包装紙を丁寧に剥がす。俺、こういうのは丁寧にいくタイプなんだよね。箱を開けると、黄色のストーンがついた紫耀が今つけているものと同じものだ。でもどこかで……あ!
「これ、あそこの!」
「そうそう、あのショッピングモールで買ったやつなんだ…ってこれ海人が今つけてるやつの色違い!?」
「被らなくて良かったね〜。」
しばらくの間、二人でいろんな話をした。
昔のこととか、紫耀が姫花さんと付き合ってた時のこととか。
まだ…紫耀は俺の気持ちには気づいてくれなさそうだけど。
廉side
俺と岸さんはと市内の中心部でクリスマスデートをしていた。
ここまで遠出するのは初めて。朝からずっといたからいい加減疲れたと今は近くのベンチで休憩中だった。……ていうか楽しすぎてプレゼントの存在を忘れてしまっていたっていうのもあるんだけどね。
「はい、これプレゼント。」
俺は袋状のプレゼントを渡す。岸さんも袋状のプレゼントをもらった。
「じゃあ、いっせーのせで開けようや〜」
「おお!いいな!」
「「いっせーのせっ!」」
二人は同時に袋についているリボンを引っ張る。俺の方には小さいショルダーバックが入っていた。しかもこれ、俺の好きなブランドのやつ!
「えー!可愛い!ありがと〜!」
倹約家なのによく買ったなぁと思って岸さんを見ると岸さんも「え!廉めっちゃセンスいい!いい加減新しいの買おうかなって思ってたんだよね!」と大喜び。良かった、マフラーにして。
「新しい方、巻いてあげるで。」
岸さんはありがとう!と言って古いマフラーを外す。俺はそこから新しいマフラーを首まで巻いて…マフラーで口元を隠す感じで岸さんにキスした。真っ赤になる岸さん。いい加減、なれてくれや〜。
「分かった、分かった、ちゃんとやるって!」
そう言って俺はちゃんとマフラーを巻いてあげる。マフラーを巻き終わった後も茹で蛸のように顔を真っ赤にして俺から目を逸らす岸さん。
「そんな照れんでええよ?」
俺はカラカラと笑いながら言う。
「いや、だって……」
なにかを言いたげな岸さん。
「なんしたん?」
岸さんは少し考えてから……俺に驚くことを言った。
勇太side
玄樹とデートの日。
俺は市内で一番大きい駅の駅前で玄樹を待っていた。
玄樹は急遽、バイトが入ってしまったらしく、七時からの約束に間に合うか間に合わないかとのことだった。
今は六時五十分過ぎ。七時着の電車がくるまではまだ時間がある。俺はなんとなくスマホのロックを解除し、SNSを眺める。すると玄樹からメールが来た。
『今出れたよ。十五分には着けそう!』
デートの場所として七時半に予約しているレストランは駅から徒歩十分。全然間に合いそうだ。改めて俺はSNSに戻り、なんとなく画面をスクロールしていく。
北海道の方だろうか、雪山の写真を載せている人や、彼氏とのデートの写真を痛々しく載せてるパリピ。SNSはいつもと変わらない風景だった。見飽きた俺は次に周りを見渡す。イルミネーションが光り輝く夜の街。数週間前からこの風景だ。イベントと言っても大きく変わる事なんて無い。
もう一度時計をみる。七時を少しすぎたぐらい。玄樹が来るまで後十五分弱ある。何をしていようか。そう思っていると、
「よっ!」
と誰かに話しかけられた。
声のする方を見ると、廉と岸くんだった。
「あれ?二人もデート?」
「そーやで!ジンは玄樹待ち?」
「うん。後十五分ぐらいで来る。」
ジン、来るの早すぎやろと廉がケラケラ笑う。岸くんはそれを見て苦笑い。
「ジンは玄樹になんかあげるの?」
岸くんが興味津々に聞いてくる。もちろん、用意してますよ!
俺が選んだのは細めのゴールドピンクのブレスレット。もちろん俺とお揃い。俺のは普通のゴールドだけど。
「わーいいなぁ。俺もそう言うのが良かったなぁ」と廉は隣にいる岸くんをチラッと見る。
岸くんは慌てて「いや、だって、廉こういうのたくさん持ってるし……」と言う。
仲良いなぁ。ホント。
「そういえば、二人とももう帰り?」
夜ご飯の時間なので2人でどこかで外食でもするかもしれないけど。
「いやー。これからめっちゃいいレストラン行くねん!な、岸さん!」
「そうそう、廉が命削って予約してくれたとこ!……高いけどね……」
どうやら高いところを予約したらしい。俺らと行くところは違うようだ。
「いいねん!今日ぐらい!」
んじゃあ、と二人はお目当てのレストランまで行ってしまった。十分時間は潰せたようであまり待たないうちに玄樹と合流できた。
「ごめん!待ったしょ!」
パタパタと走ってくる玄樹。
「ううん。大丈夫。」
「じゃあ、行こっか。」
優太side
「実はさ、岸さんに相談したいことがあんねん。」
コース料理の前菜を食べ終わったところで廉が話を変えた。
「うん、なに?」
「俺、来年から徐々に仕事復帰していこうかと思って…」
…え!?
「でも大学卒業するまではって!」
「俺、親に言われるがまま大学入ったやん?だからさ、いい加減好きなことしたいなーと思ってさぁ。単位取れるぐらいの仕事量にしてもらうようにもう事務所と交渉はしとるんやよ。まあ、前仕事に行った時に『戻ってこれないか』って言われてから考えてたんやけどね。」
廉が前言ったのは確か先月の頭。そこからずーっと調整をかけてたってことか……全然気づかなかった。
「まあ、来年はまだ三年生やからそこまでの大役はできへんけど。四年生から主演とか引き受けるつもり〜」
廉がテレビでセリフを言っているところを想像する。いつもよりもっともっとかっこいいんだろうなぁ。
「分かった、楽しみにしてる!」
廉が良かったとにっこり笑った。
紫耀side
その頃。俺は自室のベッドに寝っ転がってスマホをいじっていた。
なんとなくSNSを見ると仲良くデートしているカップルの写真がスクロールするたびに出てくる。
それを見るたび、なぜか海人の顔がちらつく。なんでだろう。まあ、いっか。
………やっぱり気になる。
俺は今までのことを思い出せるだけ思い出す。あれ、なんでだろう。海人とのことしか覚えてない……。
もっと他に友達がいたはず……。
いや、違う。俺が自分から海人に近づいてそのままくっついてるんだ。
俺は……海人のことが好きなんだ。
友情じゃなくて、恋愛の方で。
でも、自分の気持ちを誤魔化すためにいろんな女の子をわざと好きになってたんだ。姫花さんもその一人。
なんで今まで気づかなかったんだろう。
ホント馬鹿だ。
こうやって束縛から逃れられたんだから、ちゃんと自分の気持ちを海人に伝えなくちゃ。
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