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✧≡≡ FILE_017: キルシュ・ワイミー≡≡✧
1979年 5月 29日
世界は、もうすぐ変わる。
この指先で組み上げた金属が、従来の常識をひっくり返した。
人はよく私に言う。「天才だ」と。
だが私は、それが褒め言葉だと思ったことはほとんどない。
そもそも──天才なんてものは、存在しない。
そう呼ばれる者は、生まれながらに特別なのではない。
ただ、他者がたどりつけなかった場所に、先に到達したという“結果”を持っているだけだ。
努力で積み上げる者もいれば、偶然が導く者もいる。
だが最終的に人が貼るラベルは、いつだって「出来たか、出来なかったか」──その一点だけだ。
成果を出した者を人は天才と呼び、出せなかった者を凡人と呼ぶ。
それだけの話だ。
──最近、奇妙な確信がある。
世界は、私のような天才をもっと必要としている。
いや、必要とする時代がくる。
才能とは、平等ではない。
むしろ不公平であっていいのだ。
凡人の数がいくら増えても、世界は前へ進まない。
だが、天才がもう一人増えるだけで、時代は十年早くなる。
もし、私と同じ水準の脳を持つ者があと五人いれば──世界は今より百年、進んでいたはずだ。
だから私は、研究に資金を惜しまない。
たとえ理解されなくとも、未来を見抜くのは少数の特権だ。
天才とは、時代の片隅で世界を決める人間である。
未来を変えるには、天才を創るしかない。