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「あら、騒がしいと思ったら……。またあなたたちなの、霊夢、魔理沙」
廊下の奥からゆっくりと姿を現したのは、この巨大な館の主、レミリア・スカーレットでした。背中には蝙蝠を思わせる悪魔の翼を広げ、その瞳は夜の闇よりも深い紅色に輝いています。
咲夜は即座にナイフを収め、深く頭を下げました。 「申し訳ありません、お嬢様。お騒がせいたしました」
レミリアは咲夜を軽く手で制すと、不敵な笑みを浮かべて俺たちの前で足を止めます。
「霧の完成を邪魔しに来たのかしら? 相変わらずせっかちな巫女ね」 「当たり前でしょ。おかげで障子が真っ赤になって、張り替えるのが大変だったんだから」
霊夢が不機嫌そうに言い返すと、レミリアの視線がふと、霊夢の影に隠れてガタガタ震えている俺の方へ向きました。
「……ところで、そこにいるのは誰? 霊夢。……いえ、魔理沙の隠し子かしら?」
「誰が隠し子だ! 失礼なこと言うんじゃねーよ!」 魔理沙が即座にツッコミを入れますが、レミリアは興味深げに俺をじっと見つめます。
「……人間よね。それも、見たこともない妙な格好をして。……それに、その手に持っている『茶色い瓶』は何? 咲夜のナイフを、それで防ごうとしていたわね」
俺は、頬を掠めたナイフの傷を押さえながら、必死に声を振り絞りました。
「こ、これは……武器じゃありません! 『究極の白だし』……つまり、料理のベースになる魔法の汁です!」
「……だし?」 レミリアは首を傾げました。五百年を生きる吸血鬼の王にとって、それは聞いたこともない異世界の単語のようでした。
「そうよ、レミリア。こいつ、変な外の世界の人間だけど、料理の腕だけは確かよ」 霊夢が珍しく俺を庇うように言いました。
「ふぅん……。ちょうどいいわ、咲夜。この男、面白そうだから地下へ連れて行って。……霧が完成するまでの暇つぶしに、その『だし』とやらが私の喉を潤せるか、試してあげましょう」
「え……? 地下……?」 俺の頭に、拷問部屋や牢屋のイメージがよぎります。
「お嬢様のご命令です。来なさい、料理人。……ナイフより鋭い味を期待していますよ」
咲夜の冷たい視線に促され、俺は絶望と少しの希望を抱えたまま、紅魔館の深部へと連行されることになりました。