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翌日、緊迫した空気が漂う中、帝都軍は出発前の整列を終えていた。
その時、和真に連れられたアイがメイの前に現れ
「霜月くん、この前はごめんね。」アイの声は少し緊張していた。
メイは微笑みを浮かべながら、「アイちゃん、もう大丈夫だよ。ボクのほうこそ、
驚かせてしまってごめんね」と優しく答えた。
アイはメイに抱きつき、「よかったぁ」と言って、メイのほほにキスをした。
和真が言った。「メイちゃん、気をつけて行ってきてね。」
メイは元気よく「ハイ、行ってきます!」と答えた。その声に、
和真は以前の弱々しい声とは違う成長を感じ取った
去り際に手を振るアイを見て、隊員たちはその様子を嫉妬の目で見ていた。
タケルがメイを捕まえ、「おい!メイ、どういうことだ!アイちゃんと何があったんだ!!」と詰め寄った。
メイは戸惑いながらも、「な、何もないって」とじゃれ合うように答えた。
その時、蓮の号令がかかった。
「全員、聞け!我々は今、信国からの援軍要請に応えるため、この地を発つ。
我が国の誇りを示す時。強き心と鋼の意志を持ち、魔獣を討伐するぞ。」蓮の声は力強く、
隊員たちの心を一つに結びつけた。メイとタケルも、その言葉に背筋を伸ばし、
新たな決意を胸に、出発の時を迎えた。 信国への進軍は、
厳しい空気を纏う一行によって進められていた。その先頭に立つのは、
一際目立つ存在感を放つ蓮。彼のすぐ後ろには、常に冷静沈着な副官の凌がついていた。
蓮は不満げに肩をすくめながら言った。
「まーったく、ついてこなくても、オレだけで十分だろう。」それに対し凌は、
冷静に反論した。「噂では相当の魔獣が暴れているらしい。人手は必要だろう。」
「あんたがいると部隊が緊張していつもの動きが鈍るんだよ。」蓮は不満たらたらに言い放つ。
凌は静かに言い返した。「緊張感を持つことのどこが悪い?皆、命をかけているんだぞ。」
「そうゆうとこなんだよね…」と言いながら、蓮は先を急いだ。
凌の心の中には、メイに関する違和感が渦巻いていた。魔獣が霜月を守ったという報告、
メイの夢に出てきた魔狼の話。
それを確かめたかったのだ。彼の心の中で疑問が渦巻いていた。
(霜月メイ、いったい何者なんだ…)
信国は、四方を山々に囲まれた自然豊かな国だった。肥沃な大地が広がり、
農業が盛んで、山間には小さな集落が点在していた。しかし、今はその美しい風景が一変している。
村の人々は魔獣の恐怖に駆られ、次々と避難を余儀なくされた。かつて賑やかだった村は、
人影が消え、静寂が支配する場所となった。
村や広大な農地には、信国の軍隊が厳重に警備を敷いている。その異様な光景は、
まるで時間が止まったかのようだ
そして、山の奥深くからは、グルグルと何かが唸りを上げるような声が響いてくる。
その音は、風に乗って村全体に広がり、兵士たちの不安をさらに掻き立てた。
誰もいない村の中、かつての生活の名残を感じさせる家々や、手入れが行き届かなくなった畑が広がっている
夕刻、信国の本部に到着すると、皆は移動の疲れを感じていた。
夕食の席で、メイは静かにリディアのことを思い出していた。
テーブルに並ぶ料理の香りは、どこか無機質に感じられた。
翔太はそんなメイの様子に気づき、優しく声をかけた。
「メイ、どうした?」
メイは少し間を置いてから答えた。
「うん。リディアちゃんの住んでいた村も、魔獣に襲われたんだって。」
「そうなのか。」翔太は眉をひそめた。
メイの心には、リディアの眼帯に隠された秘密が重くのしかかっていた。
自分の母親が作り出した呪いのせいで魔獣に襲われリディアの目は奪われ、呪われてしまった。
そして魔獣もまたその呪いに苦しんでいる
魔獣の呪いを解いて解放しなければならないという使命感が
心の奥底でずっしりと響いていた。思わず手が震える。
翔太はその震える手をそっと握りしめた。「大丈夫、必ず俺たちの手で魔獣を倒そう。」
その言葉に、メイははっと我に返った。「翔太…」
彼の確かな声と温もりに、少しだけ安心感が広がった。
「ありがとう。」メイは微笑み、翔太の手を握り返した。
二人の心は、共に立ち向かう決意で満たされていた。
夜が深まっていく中
蓮と凌は信国の司令官と状況について遅くまで会議を行っていた。