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皆が疲れて寝静まったころ、少し開けた場所で、月明かりの下、メイは剣の練習をしていた。
疲れているはずだが、眠れない。明日からどれぐらいの魔獣を倒すのだろう。
まだ呪いを解く方法がわからない。メイの心は複雑だった。
その様子を蓮が遠くから見ていた。病院でメイが言った言葉を思い出す。
「強くなりたい…」と蓮の胸で泣いていたメイは、その時のメイとは違うと感じていた。
「メイ!!」と声をかけながら、蓮は木刀でメイの足を狙った。瞬時に防御するメイ。
メイは驚いて「隊長」と声を上げた。「ほぉ~成長したな」と蓮は苦笑いする。
メイは照れくさそうに「えへへ隊長にほめられちゃった」と言った。
そのメイの顔を見て、蓮はドキっとした。
「も、もう寝ろ。明日に備えるのも仕事だ」と蓮は口ごもりながら言った。
「はい、でももう少しだけ」とメイは言って、再び剣を振り続けた。
「そうか」と蓮もメイの剣術の練習に付き合った
どれくらいたったのか、さすがにメイも疲れた顔をしてその場にへたり込んだ。
「はぁ~もう無理です」
「はは、」
メイは空を見上げて、「綺麗な月…」とつぶやいた。静かな夜だった。
魔獣が暴れているという信国だったが、信じられないほど静寂で、川の流れの音と、
虫の音だけが聞こえていた。
その静寂の中で、蓮はメイの隣に座り、月明かりを見上げた。
「本当に綺麗だな」
メイは蓮の横顔を見つめ、
「隊長、今日はありがとうございました」と囁いた。
蓮はメイの視線に気づき、顔を向けると、その瞬間、二人の間に流れる時間が止まったかのようだった。
蓮はゆっくりと手を伸ばし、メイの頬に触れた。メイの心臓が早鐘を打つ。
「ど、どうしよう…」心の内で叫ぶ声が響く。蓮の深い瞳に吸い込まれそうで、
目を逸らすことができない。その視線は温かく、やさしく、
しかし同時にどこか切ないものがあった。メイは自分自身の感情をどう整理していいか分からず、
ただ蓮を見つめるだけだった「メイ…」蓮はその名前を呟くように言った。
蓮の手がメイの頬を優しく撫でた。その手の温もりに、
メイの心は安らぎを感じた。二人の顔が徐々に近づき、やがてその距離は消えた。
月明かりの下、連とメイは静かに唇を重ねた。月の光が薄く差し込む森の中、
蓮はそっとメイを抱きしめ、ゆっくりと地面に倒れ込んだ。
蓮は深呼吸をし、言葉を紡ごうとした。「オレはお前が……」しかし、その言葉は
彼の心の中で葛藤を引き起こしていた。
(ちょ、ちょっと待て、俺は一体何を言おうとしているんだ?
こんなことを言ったら、メイを困らせるだけじゃないか。)
彼の心は不安と期待が交錯し、どうしようもない感情に揺れていた。それでも、
メイの瞳を見つめると、愛おしさが溢れ出てくるのを感じた。
その瞬間、思わずメイの唇に自分の唇を重ねる
メイは暖かくたくましい腕に包まれて、
自分が男であることなどどうでもよくなっていた。
蓮の心臓の鼓動が耳に響き、彼の息遣いがメイの耳元をかすめると、
メイはアイとの時とは全く違う感覚に包まれた。男性の力強さを全身で感じていた。
「蓮…隊長…」と思わずつぶやいたその瞬間、蓮の動きがピタリと止まった。
蓮はくすっと笑い声を漏らしながら
「お前見てたの?趣味わるいな」
「隊長?」とメイが不思議そうに聞いたその時、蓮の背後に不気味な影が立っていた。
メイの声が震え、「ま、魔獣!」蓮は魔獣に向き直り、冷静な声で命じた。
「メイ、逃げろ」彼は一瞬の躊躇もなく魔獣に向かって走り出し、
魔獣もまた蓮を追いかけて林の中へと消えていった。
メイは立ち上がり、焦燥感に駆られて叫んだ。
「待って!すぐに副官に知らせなきゃ!」そう言うと、メイは全力で駆け出した。
しかし、その時、心臓がドックンドックンと激しく打ち始めた。
それは次第に大きくなり、呼吸が乱れ、まるで息ができなくなるような感覚に襲われた。
あの時と同じだ。メイは苦しそうに、「今は…蓮隊長が…」意識が遠のき、
その場に倒れ込んだ。森の中には、ただ月光と静寂だけが残された。