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日曜日の朝。
目覚めた真理亜は、まだどこか夢の中にいるような心地だった。
昨日、6人の大切な人たちに“ありがとう”と“ごめんなさい”を伝えた。
そのすべてが終わった時、ようやく自分の心の奥にある「本当の気持ち」と静かに向き合うことができた。
そして今日。
真理亜は、大吾と2人きりで出かける約束をしていた。
――付き合うって、どういうことなんやろ。
――“好き”って伝え合ったあと、私たちはどう変わるんやろ。
そんな不安と期待が入り混じったまま、真理亜は駅前で大吾を待っていた。
大吾:「……おまたせ、真理亜ちゃん」
声に振り向けば、制服ではない大吾がそこにいた。
少し照れたように笑って、頭をかく姿がかわいくて――
でも、どこか頼もしく見えた。
真理亜:「……似合ってるよ、大吾くん」
大吾:「ほんま? 真理亜こそ、めっちゃかわいい」
そう言われた瞬間、頬が熱くなる。
真理亜:(今まで、何度もこの人にドキドキしてきたけど……“恋人”として見る大吾くんは、また違って見える)
2人は、近くの水族館に向かった。
静かな水の中を泳ぐ魚たち。
暗がりに灯るライト。
沈黙すら心地いい時間。
クラゲの水槽の前で、真理亜がそっとつぶやいた。
真理亜:「ねぇ、大吾くん」
大吾:「ん?」
真理亜:「私……この数ヶ月でいっぱい悩んで、いっぱい泣いて、いっぱい迷った。でも、全部あったから、今ここにおるんやと思う。私、大吾くんを好きになって、ほんまによかった」
その言葉に、大吾は小さく目を伏せて、笑った。
大吾:「俺こそ……守られた子供やったのに、今は守りたいって思える人ができて、ほんまに幸せやと思ってる。真理亜ちゃん、俺と一緒にいてくれてありがとう」
2人の指が、そっと重なった。
それは手を繋ぐでもなく、抱きしめるでもなく――
ただ、隣にいるという実感を分かち合う優しい触れ方だった。
夕暮れ、家に帰ると、リビングには丈一郎・和也・流星・謙杜・恭平・駿佑が揃っていた。
真理亜と大吾が並んで部屋に入ると、皆が一瞬静かになった。
けれど、丈一郎がふっと立ち上がり、
丈一郎:「おかえり、大吾。……真理亜ちゃんも」
と、いつもの笑顔で声をかけてくれた。
和也が「ちゃんとリードしたんか〜?」と茶化し、
流星が「もうちょっと堂々と手でも繋げばええのに〜」とニヤけて、
恭平が「俺のカッコよさで不意打ち告白とかしたら勝ってたかもな」などと笑いを誘う。
謙杜はそっぽを向いたまま「……まぁ、ちょっとだけ羨ましいだけやし」と小さく言い、
駿佑は「次、もし誰かに恋する時は、もっと自分の気持ちに素直になれるように頑張るわ」と言った。
真理亜は、涙をこらえながら笑った。
真理亜:(私は今、このシェアハウスで――こんなにも優しくて、温かい人たちに囲まれて、世界で一番幸せかもしれへん)
そして、大吾が真理亜の肩にそっと手を置いて言った。
大吾:「俺たち、これからよろしくお願いします」
皆が拍手し、ちょっとした乾杯が始まった。
その夜、リビングには笑い声が絶えなかった。
七角関係――それは切ない時間だったけれど、
それぞれの“好き”があったからこそ、
本当の恋に辿り着くことができた。
そして真理亜は、心から思った。
「君を好きになって、よかった」