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春が近づいていた。
朝晩の寒さはまだ残るけれど、
シェアハウスの窓から見える桜並木のつぼみが、
少しずつ膨らんでいるのに気づいたのは、真理亜だった。
真理亜:(もうすぐ、みんな2年生・3年生になるんや……私も、変わった。恋をして、誰かを選んで、前に進んだ)
リビングではいつも通りの風景。
丈一郎が料理を作りながら鼻歌を歌い、
恭平がその後ろで筋トレを始め、
和也がのんびりお茶をいれていた。
「真理亜ちゃん〜! 今日も朝からかわいいなぁ!」と流星がはしゃぎ、
「うるさいっつーの。俺は真理亜の隣座るからな」と謙杜が茶碗を持って駆けてくる。
「……ん、席空いてる?」と駿佑が眠そうに顔を出す。
その真ん中に、大吾がいて――
いつもの穏やかな笑みで、真理亜の隣に座る。
それだけで、真理亜の一日はきちんと始まるような気がしていた。
ふと、大吾が耳元でささやく。
大吾:「今日、放課後ちょっとだけ、校舎裏来てくれへん?」
真理亜:「……うん。なんかあるの?」
大吾:「ちょっとだけ、言いたいことあるねん」
ドキドキが止まらないまま、学校を終えて、指定された場所に向かう。
春の陽射しに照らされる大吾の横顔は、どこか柔らかくて、
少し照れくさそうにポケットから何かを取り出した。
小さな、桜のチャームがついたペアのキーホルダーだった。
大吾:「なあ、真理亜ちゃん。“恋人”って呼ばれるの、最初は正直まだ慣れへんかった。でも、君の隣で笑って、怒って、迷って……それを一緒に乗り越えてくれる“恋人”が真理亜ちゃんで、ほんまによかった。これ、俺たちの“新しい春”のしるしにしようや」
そっと手渡されたそれを、真理亜は胸にぎゅっと抱きしめた。
真理亜:「ありがとう、大吾くん……私も、君でよかった」
二人の影が、春の陽に並んで伸びていく。
――数日後。
和也は、同じクラスの後輩に呼び出されて告白されていた。
その女の子は、噂になった“彼女”ではなかったけれど、
「それでも私、本気なんです」と涙ぐんだ。
和也は困った顔で笑いながらも、和也:「もう少し、俺のこと知ってからでもええかな」と、優しく言った。
丈一郎は生徒会に立候補した。
丈一郎:「今の俺、支える側の人間としてもっと力つけたくてさ」
駿佑は演劇部に入部し、自分の“表現”を見つけ始めた。
謙杜は学園のバスケチームに再び挑戦し、
恭平はモデルのスカウトを受けて初めての撮影に緊張していた。
流星は、SNSで自分の絵を発信するようになり、
恭平:「好きって、恋だけじゃないんやな」って気づいたらしい。
皆が、それぞれの未来へ歩き出していた。
シェアハウスの屋上。
満開の桜の下で、真理亜と大吾は並んで座っていた。
大吾:「なあ、真理亜ちゃん。……将来の夢とか、ある?」
真理亜:「あるよ」
大吾:「えっ、なに?」
真理亜:「……“大吾くんと一緒に未来を作ること”」
大吾は一瞬沈黙して、それから少し照れくさそうに微笑んだ。
大吾:「……最高やん、それ」
彼の手が、真理亜の手に重なる。
七人の少年たちと過ごした日々。
誰かを好きになって、傷ついて、立ち上がって、選んで、選ばれて。
そうして始まった、ひとつの恋と、
それぞれの“生き方”が、ここにあった。
そして――物語は、春風のように、静かに幕を下ろす。