私は恋雪ちゃんに言われた通り、1日璃音をこっそり観察していた。今も一緒に部活に行くことになり、隣を歩いている璃音を横目で見ていた。
「…」
やっぱりどう考えても見てるんだよな。こっち。なんで今まで気づかなかったんだろうってくらい見てる。恋雪ちゃんの言うことは正しかったのかもしれない。
いや、ちょっと待つんだ月。うぬぼれちゃいけない。もう少し璃音を観察してみよう。うん、そうしよう。
「ふふ」
「え?」
璃音が急に隣で笑った。
「なに?」
「いや、なんか月さっきから一人で百面相してるからさ。」
「え!?」
気付かぬうちに表情が変わっていたらしい
「なんか面白かった」
なんかニコニコしてる璃音が前よりかわいく見える気がするのは気のせいだろうか。
1ヶ月後
あれから毎日璃音を観察してみたけれど、やっぱりそういう思考に至ってしまう。
前向きに捉えちゃっていいのかな?
すると教室のドアが勢いよく開いた。
「よしみんな、席替えするぞー」
と、先生が告げた。
「え?」
私と璃音は正反対の位置になってしまった。
「うぅ…近かったのに…」
あれ?でも恋雪ちゃんとは席近いし、そんなに落ち込むことないか。でもやっぱり…
「寂しい…」
「何が?」
恋雪ちゃんが目をキラキラさせて見つめてくる。
「いや、璃音と離れてなんか心細いっていうか、寂しいっていうか…」
「えー!」
「シー!恋雪ちゃん声大きいよ」
「やっとここまで来た!月、それは恋!It is love!」
恋雪ちゃんは興奮しすぎてよく分からない口調になっている。
「もう随分たったよ。新しい恋を始めるには十分なんじゃない?」
さっきまでふざけていた恋雪ちゃんが急に真剣で優しい目になった。
「うん、ありがとう、恋雪ちゃん。」
「なんの話?」
「璃音!な、なんでもないよ」
「あはは…」
私と恋雪ちゃんは作り笑いをする。
「もうすぐバレンタインだねー。」
あ、もうそんな時期か。
「璃音、欲しいの?」
「そりゃあ俺だって欲しいよ。出来れば好きな子から。」
ギクッ…。
そこでチャイムが鳴り、璃音は席に戻って行った。